ネ―ド村の朝
私は、話し出すおじさんの戯言を耳で聞き流すようにしていると。
「村長! 朝の配給が終わりました!」
「おう、ありがとうなデイジー。ホントよく働いてくれる、何かご褒美でもあげたいところだが…ご褒美とよべるいい物が無いのでな…」
「いえ、大丈夫ですよ。私が勝手にやっているだけなので…って! キララさん、起きてたんですか。なら今すぐ朝食持ってきますね」
「え…あ! ちょっと…デイジーちゃん…私の話を…聞かずに行ってしまった」
――朝食はオリーザさんから貰ったパンがあるから別に要らないって言おうと思ったのに。
「お嬢さん、デイジーと知り合いだったのか」
「はい、色々と手伝ってもらいました。ホントによく働いてくれますよね。いったいどこにあんな体力があるのか…」
「昔からあんな感じだ。小さいころからよく大人たちをクタクタにさせておったからな…」
おじさんは私の方を見ていきなり眉をひそめた。
「今気づいたが、お嬢さん…ネード村の人ではないな…」
「そうですけど…」
――いや…今更気づいたんだ。
「もしかして…ネード村を救ってくださった方だったりするのか…」
「え…どうなんでしょう…別に救ったわけじゃないと思いますよ」
――私はただ報告しただけだし…。
「この村は昔から豊かな村でした。川があり、山があり…穀物の育つ豊かな土壌もあり…何不自由ない生活をしてきました。ですが…今回の件ですべてを失い…私の軽率な判断で村の皆を危険にさらしてしまった。私は私自身を許せない。こんな私が村長をやっていていいのかといつも自問自答する日々だ…。ネード村も少しずつ、復興し始めている。これも村以外の人々が我々の生活を思い行動してくれた結果に他ならない…。私達は、一生をかけて恩を返していかなければならないのです」
――村長さんって大変なんですね…。一応ネード村のリーダー的存在だから影響力も大きくなるし、重要な判断をするのはいつも決まって村長などのリーダー的ポジションの人…。そんな重圧がかかるなら私はやりたくないな、村長わ。
「キララさん! 朝食です、お水とパンをお持ちしました」
――せっかく持ってきてくれたし、ありがたくいただこうかな。
「ありがとうデイジーちゃん、今日も朝早くから動いてるの?」
「はい! なんだか朝早く起きるのが習慣になってしまったみたいです。シャインちゃんの朝練メニューを頑張ってこなせるようになりたいので!」
――デイジーちゃん…シャインに思いっきり影響されちゃってるよな…きっと。無理もないか、7日間も一緒に生活していたんだもんね…。今のデイジーちゃんなら『木剣を振りたい』って言い出すのも時間の問題かもしれない。
私は朝食を平らげ、今一番重要なものを取りに行こうと思う。
「では村長さん私は川に行かなければならないのでここら辺で、お暇させてもらいますね」
「川へ何しに行くんだい? 川の流れが速いから近づいたら危険だ…」
「えっと、川に入るわけじゃないので大丈夫です。私はレモネを取りに行くだけですから。あ…もしかして勝手にとったらダメでしたか…」
「レモネ? いったいあんな酸っぱい実を何に使うんだい。あれは人の食い物じゃないぞ…」
「いえいえ、レモネは私の夢に必要なんですよ。何なら木ごと持って行きたいくらいなんですけど…」
「持って行ってくれるならこっちもありがたい。食えない実のなる木が生えすぎていても意味ないからな」
「え…持って行ってもいいんですか…」
「ああ、好きなだけ持って帰ってくれ」
――やったぁ…なんかよく分かんないけど村長さんからの許しが出たよ。これでネード村までわざわざま来なくても少量なら私たちの村でレモネを収穫できる。ホントにいっぱいレモネが必要になったら、ネード村から多くのレモネを収穫して使えばいいし。そうだ…何ならレモネを使って作った商品の売り上げを少しネード村に回してもいい。そうすれば少しくらいネード村復興の足しになるだろう。
「よ~し! 頑張ってレモネを運ぶぞ!」
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