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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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部活見学

「ふぅ、楽しかった」

「はい、気分爽快です~」


 私達の走っている姿を、他の生徒とカーレット先生が見ており、目を丸くしていた。


「キララさん、ぜひとも乗バートン部に来てくれ! 君なら武神祭で優勝を掻っ攫えるっ!」


 カーレット先生は柵の向こうから大きな声を出し、私に話しかけてくる。


「え、ええっと、別に乗バートンに興味はなくて」


 私はカーレット先生の申し出を軽く断った。乗バートンほど貴族が多い部活はない。そんなところに入って目立ったら、目の敵にされる。

 出来る限り、穏便に学園生活を過ごしたいので、人数が一番多い乗バートン部は遠慮したい。


 初めの乗バートンの講義は終了した。その後、外国語の講義があり、普通に眠りそうになったが気合いで起きる。

 まあ、軽く眠っている場面があるかもしれないが、ベスパが代わりに板書してくれていたので問題ない。


「今日も終わった~」


 午後五時五〇分ごろ、五限目の講義が終わり、一〇分程度の掃除の時間がやってくる。

 私とミーナは学園長室の掃除。昨日掃除したばかりなのだから、すぐに汚くなるわけがない。でも、一応綺麗にしておく。


「よし、今日も完璧」

「はぁ~、もう、疲れた~」


 ミーナはキースさんの高級革椅子に座り込み、学園長先生になった気分を味わっているように見えた。


「ミーナ、その椅子、ものすごく高そうだから、傷を付けたらいくら請求されるかわからないよ」

「えぇ、ど、どうしよう。み、身動きが取れなくなっちゃった……」


 ミーナは緊張してか、体が固まっていた。


「もう、手を貸して」


 私はミーナの手を持ち、ゆっくりと引く。


「はぁ~、立てた~。良かった良かった~」


 ミーナは尻尾を振りながら悦び、私の横を通って学園長室を出ていく。すれ違い際、スージアがやって来た。


「あれ、キース先生は?」

「今は他の掃除場所を見に行っているよ。何か用?」

「いや、別に大した用じゃないんだけど……」


 スージアは黒ぶち眼鏡を掛け直し、紫色の髪を撫でる。そのまま、身をひるがえして部屋を出て行った。


「大した用じゃないなら、なにしに来たんだ」


 私はサキア嬢だけではなく、スージアも疑っていた。

 同級生を疑うのも酷だが、何もできない年齢ではない。

 少なからず、中学一年生が出来ることは想定しておかなければ。

 中学一年生であれば拳銃を持ち、人を殺せる。超が付くほど頭がいい子なら大学に入ることだってできる。

 もし、スージアがライトみたいな天才級の頭を持っていたら、なにを考えているかなど凡人の私が考えられる訳もない。


「ベスパ。スージアとサキア嬢に何か危険な点は見つかった?」

「普段見ている感じだと、特に危険な点は見つかっていません。寮の中にまで入って調べているわけではないので、どうかわかりませんが」

「人の生活を覗くするのは犯罪だから、あまりしたくない。でも、寮の中だけで何か犯行出来るわけがない。外でぼろを出すまで監視するしかないか」

「そうですね。もし、諜報員なら何かしら情報を盗むはずですし、注意しなければなりませんね」

「ドラグニティ魔法学園から何の情報を盗むのか謎だけど。そもそも、二人が諜報員だとすら決まったわけじゃないし」

「危険を考えておくのは悪い判断じゃありませんから、尻尾を地道に探りましょう」


 私とベスパは頷き合い、平然を装って部屋を出た。そのまま、教室に戻る。


「部活見学に行く人~っ!」


 ミーナは手を上げて元気よく発言していた。


「僕は一人で行くよ……」


 スージアはミーナの隣をスタスタと歩いて部屋を出ていく。


「あぁ~、スージアさん、私も行きます」


 サキア嬢はスージアの背中を追って教室を出ていく。


「うーん、俺は入る部活をもう決めてるから、ごめんな」

「僕も、入る部活を決めているから、もう行くよ」


 ライアンとパーズはミーナの肩を叩き、教室を出て行った。


「じゃあ、私と行きましょう。レオンはどうする?」


 メロアはミーナの手を握り、嫌々振り向いて訊いているように見えた。


「も、もちろん行く!」


 レオン王子はメロアに声をかけてもらった瞬間に大きく頷く。


「キララは?」


 ミーナは私の方に視線を送ってきた。


「うーん、私が入りたいと思った部活がなくてさ。今はいいかな……」


「もう、そんなこといってたら、部活に入る機会を失っちゃうわよ。見て回っていたら案外楽しいかもしれないじゃない」


 メロアは私の手を握り、引っ張り始めた。強引な女だ。


 教室を四名で出る。そのまま、昇降機を使って一階におり、各部活が活動している場所を見て回る。

 運動部から回り始めるようだ。


 ――もう、午後六時だし、部活動の時間って一時間くらいしかないのかな。でも、こんなにヘトヘトなのに、部活も始めたら勉強どころじゃない気がする。


 私は体力のなさに自信があるので、すでにいっぱいいっぱいだった。ここから、運動するなど考えられない。


 第一闘技場に向かい、観覧席に移動した。中央付近でパットさんらしき人物がゲンナイ先生と剣を打ち合っており、火花を散らしている。


「ここは剣術部が使っているんだ。まあ、広い闘技場だから、そりゃそうか」


 剣術部はドラグニティ魔法学園で二番目に多い部活動だ。そのため、多くの男女が入り乱れており、剣を振るっていた。


「剣術部ってどうかな……」

「うーん、私はそんなに魅力を感じないかな」

「剣術部に入ったら、凄く強くなれそうだけど、剣が大好きという訳じゃないからな」


 ミーナとメロア、レオン王子は軽く話し合いながら剣術部の戦いを見ていた。


 私は剣術部に入る気はないので、多くの者達の実力を確認するために観察する。


「えっと、今日から剣術部を体験させてもらう、ライアンと言います、よろしくお願いしますっ!」

「同じく、剣術部を体験させてもらう、パーズと言います。よろしくお願いします!」


 ライアンとパーズは他の一年生体験者に混ざって、剣術部の二年生と三年生に挨拶していた。二名が入ろうと思っていた部活はどうやら、剣術部だったらしい。


 ――あぁ、バートン術部に入ってくれなかったか。残念。マルティさん、すみません。力になれなかったみたいです。


 私は心の中でマルティさんに謝っておいた。きっと悲しむだろうから。


「おおっ! ライアン、パーズ、よく来たな!」


 剣術を指導してくれていたゲンナイ先生は一年八組の生徒であるライアンとパーズのことを覚えていた。まあ、初っ端から目を見張る剣術を使っていたのだから覚えるのも無理はない。


「メロアさん、パーズが剣術部に入ったらもっと強くなっちゃいますけど」

「そうね。だからと言って剣術部に入って競う気はないわ。別の方法で力を付けた方が勝てる確率は上がるはずよ。悔しいけど剣術に関してはパーズの方が上だから、私の得意なことをもっと伸ばさないと。そう考えたら、向かう場所はあそこしかないわ!」


 メロアは両手を握り合わせ、何か決めていた。

 剣術部の者達を見て見ると、スキルを一切使わずに剣の素振りばかりしていた。ゲンナイ先生の指導かな?

 そもそも、剣術部って強くなる以外に目的があるのだろうか。入る気はないので気にしても仕方ないか。にしても、皆、剣を振るのが上手いなぁ。


 素人の目から見ると、多くの者達が剣術の達人くらい上手く見える。毎日剣を振っているから洗礼されているのだろう。バレルさんが見たら、荒がわかるのかな?

 私達は第一闘技場を離れ、別の闘技場に向かう。少し小さめの闘技場で大きな声が聞こえていた。


「はあああああっ! そいやっ!」


 巨大な拳を突き出し、大砲を打ったかのような炸裂音を発生されていたのは、モークル族のモクルさんだった。どうやら、武術部の練習場所らしい。


「そうそう、これこれっ~!」


 メロアは瞳を輝かせているかと誤認するくらい気分を上げ、走り出した。周りの者達の目もくれず、モクルさんに向う。


「モクル先輩っ、私に武術の指導をお願いしますっ!」

「よ、よしっ! よくわからないが、体験入部ということで、鍛錬を始めよう!」


 モクルさんはメロアのいきなりの行動に順応した。周りの者と一緒に走り始める。


「あぁ~、私も混ぜてっ!」


 モクルとメロアの姿を見ていたミーナは知り合いが走っている姿を見て、自分も走りたくなったのか、いきなり駆けだした。ダチョウかな?


「レオン王子は走らなくてもいいんですか?」

「わ、私は遠慮しておくよ……」


 レオン王子は苦笑いを浮かべ、彼女たちの行動力に少々引いている印象だった。


「じゃあ、レオン王子は何か見に行きたい部活はありますか?」

「えっと、一応貴族だから、乗バートン部に入ろうと思っているんだ。バートンに乗って多くの場所を訪問する。乗り方が下手で不格好だったら恥ずかしいからね」


 レオン王子は一応貴族ではなく、大貴族より上の王族だ。何も謙遜する必要ないのに、自分を低い身分と考えているっぽい。なんせ、私のような芋娘と一緒に話してくれるくらいなのだから。


「じゃあ、乗バートン部に行きましょう」


 私とレオン王子はブラットディアの上に乗り、乗バートン部の活動がおこなわれている第三闘技場に移動する。すでに薄暗くなってきているが、闘技場の中はドーム会場のように明るく光っており、活動が余裕で出来てしまう空間だった。


「きゃぁああ~っ! ローティア様、美しすぎますわ!」

「ほんと、もう、様になり過ぎて、王子様みたいですわっ~!」

「ローティア様、こっちを向いて~っ!」


 闘技場の中にいた女性達は一頭の赤茶色のバートンに乗っている金髪ロールが特徴的な女性に黄色い声援を送っていた。もう、特徴的過ぎて遠目から見てもわかってしまう。


「これくらいできて当然ですわ。皆さま、危ないからあまり近づいてはいけませんわよ。わたくしを見すぎると目が火傷してしまいますわ」

「きゃぁあああああ~っ!」


 ローティア嬢と貴族の女性達が和気あいあいとしている情景が闘技場の観覧席からありありと見える。まあ、乗バートン部は部員が一番多いので、ああいうマドンナ的存在がいてもおかしくないか。ただ。


「あぁ、美しい……」

「リーファ生徒会長が通った場所、森みたいな凄く良い香りがする……」

「あぁ、俺もバートンになりてぇえ~」

「ば、バカ野郎。リーファ様で変な妄想しているんじゃねえっ!」

「それはお前だろうがっ! この変態野郎!」

「バカどもめ、我々は紳士にならねばならんのだよ」

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