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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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剣術基礎

「ローティア、話しに来てくれてありがとう。また、いつでも来てくれ。私は歓迎するよ」

「も、もちろんですわ」


 ローティア嬢はレオン王子と恋仲になりたいのに、友達の状態で停滞した。やはり一筋縄ではいかないらしい。


 昼食を終え、私達は闘技場で体を動かす。ほんと午後に体を動かす講義があると最後の講義が死ぬからやめてもらいたい。ただでさえ、長い九〇分講義なのに。

 私達は準備運動した後、剣術の講義を受けた。


「はぁあああっ!」

「おらあああっ!」


 ライアンとパーズは木剣を激しく打ち付け合わせ、他の者達よりも剣術に秀でていた。

 騎士は剣術が得意らしい。加えてプルウィウス連邦独自の剣術を扱う。


「プルウィウス流剣術、マゼンタ撃斬っ!」

「プルウィウス流剣術、シアン流斬っ!」


 木剣なのに剣身から火が出たり、水が流れていたり見える。何とも凄い剣術だ。

 魔法の類ではなく、剣術なので魔力はほとんど消費されていない。


 ライアンとパーズの打ち込みは剣術基礎の教師であるゲンナイ先生も目を見張るほどいい腕らしく、私達もしっかりと見せられた。


「レオン王子、ルークス王国にプルウィウス流みたいな剣術はないんですか?」

「えっと、あんまり聞かないかな……」

「そうなんですか。逆にレオン王子がプルウィウス流剣術を使ってもいいんですか?」

「構わないよ。自分の体に合うかどうかはわからないけどね」


 剣の指導者であるゲンナイ先生は元近衛騎士で凄い方だ。レオン王子と知り合いらしい。でも、騎士か。


「ゲンナイ先生、どうでしたか?」


 ライアンはゲンナイ先生のもとに駆ける。


「ああ、凄くよかった。体が成長したらもっと強くなれるぞ」

「ありがとうございますっ!」


 ライアンは剣を褒められて普通に気分を良くしていた。他国の剣士だろうと、褒められるのはやはり気持ちがいいらしい。


 私達は剣の素振りをゲンナイ先生の前でおこなう。

 ゲンナイ先生は四〇代くらいのおじさんで、若くはない。顔に深い傷が何本も入っている厳つい男性だ。もう、ヤクザですかと言いたくなる。だが、威圧感はない。

 白髪交じりの茶髪で筋骨隆々な体。服装は騎士の名残なのか、鉄製の防具を身に着けている。身長は一八〇センチメートルと高めだ。

 以前、アレス第一王子がカロネさんのお店に来ていた時、店の前に立っていた近衛騎士の男性と雰囲気がとても似ていた。やはり、歴戦の猛者になると雰囲気が似るのかな。


「はい、一本目っ!」

「はいっ!」


 私達は剣を振るう。戦い合うためじゃないので、自分が持ってきた剣を振った。

 私は黒い木剣、名を鎖剣。何とも簡単な名前だが、周りが持っている真剣よりは軽い。


「ん……、君、なぜ木剣なんだ?」


 ゲンナイ先生は私が木剣を振っている姿を見て訊いてきた。


「力が弱いので真剣だと重すぎて上手く振れないんです。私に剣を教えてくれた人が、力よりも形を意識した方が良いと言っていたので」

「なるほど……。確かに力が弱いなら、その方が良いかもしれないな。体を鍛えていればいずれ真剣も振れるようになるだろう」


 ゲンナイ先生は私の話を聞き入れてくれた。おじさんの先生だと自分通りにしたい方が多めなので安心した。

 剣術基礎の講義は必修なので、頑張らなければならない。


「一歩、二歩、三歩、前に出て斜めに切る」


 ゲンナイ先生は頭上に剣を構え、軽く移動して木偶人形に切り掛かった。ものすごく綺麗な流れで、さすが元近衛騎士。


「地に両足を付け、剣を振るように。そうしないと力が抜ける。また相手に足を取られる可能性もある。対人ならなおさら型を意識して剣を振るように」


 私達は大きな声を出し返事した。素振り、型、実践の流れで講義が進む。準備運動、指導、本番みたいなものだ。


「相手をよく見て体の流れを意識しろ。剣ばかりに気を取られるとからめ手が飛んでくる。恐怖は飲み込み、自分から攻める姿勢を持つように。では、三分間の打ち合いを始め」


 ゲンナイ先生は懐中時計を持ち、私達に指示を出した。


 私達は一対一の形を取り、向き合っている。女子は女子、男子は男子が相手だ。私の相手はサキア嬢。剣を持つのも初めて~、と言いそうな令嬢なのに背筋が良い構えだ。


「キララさん、どこからでもかかって来てください」

「え、良いんですか?」

「はい。私、剣が案外得意なんですよ。まあ、魔法の方が得意なので普段は使いませんけどね」


 サキア嬢は黒い髪を靡かせ、侍のような落ち着いた雰囲気を放っていた。やはり黒髪と木剣の相性がいいのかな。

 服装が体操服に軽い防具を付けた姿なので、体育の授業っぽいけど。


「じゃあ、遠慮なく」


 私は鎖剣ではなく、講義で使う木剣を頭上に構える。

 元剣神のバレルさんから教えてもらった、一撃で相手を仕留める剣。それが私の剣術だ。

 腕力や体力がなく剣を振れる回数が少ないため、一撃一撃を大切にした型。

 女性相手に放っていい代物じゃないが、その攻撃以外は下手くそなので、簡単に負けてしまうだろう。


「そんな、剣を持ち上げたら、体が無防備ですよ……。ん、え?」


 サキア嬢は口を開けた。すでに私の木剣はサキア嬢の鼻を掠るように振り下ろされている。

 長い綺麗な黒髪が突風により後方に靡き、髪飾り替わりにされているバタフライが木の葉のように勢いよく飛んで行った。


「移動がちょっと短かったみたいです……」


 私はざっと八メートル移動して木剣を振っていた。魔力操作で足裏から勢いよく魔力を射出し、加速からの振り下げ攻撃。簡単に言えばこれだけだ。ただ、普段使わないから八センチメートルくらい短かった。


「次はサキアさんの番ですね」


 私は距離をとり、剣を構える。


「は、はい。じゃあ、いきます」


 サキア嬢は木剣の柄を握りしめ、低い姿勢で走り出す。そのまま授業で習った三歩先で剣を振る行動を繰り返し、私を追い詰める。

 軽い連打を放った後、横に振り、私の体を弾いた。踊っているかのような剣術で流れが速い。


「凄く綺麗な剣術ですね。シーミウ国の剣術ですか?」

「まあ、近いですね。剣の形が違うので、完全に再現できているわけじゃありませんけど」


 サキア嬢は木剣の柄を持ち、剣先を喉元に突き刺すような殺意が高い一撃を放ってきた。


「こら、まだ教えていない剣術を使うのは危険だ。知っていても使用は許可しない」


 ゲンナイ先生は私の前に飛び出し、サキア嬢の剣先を剣身で受け止めていた。


「す、すみません、つい……。えっと、キララさんもすみません」


 サキア嬢は頭を下げ、しっかりと謝ってきた。まるで今まで何人もの人に同じ技を放ってきたかのような切れがあり、適当に放ったわけではないとわかる。


「い、いえ、気にしないでください。これから気を付けてくださいね」


 ――さっき、私が剣を振った時、挑発されたと思ったのかな。なんか、嫌な感覚だ。


 私はサキア嬢が他国の諜報員なのではないかと勝手に疑っているため、被害妄想が起こっていた。彼女は何も悪くないと思いたいが、もし本当に諜報員だったら困る。だからこそ、疑っていた。


「皆も攻撃を本当に当ててはならいぞ。本番ではあり得ないが、寸止めするように」


 私達以外の者が大きな声で返事する。


「えっと、茶髪の方がキララで黒髪の方がサキアであっているかな?」

「は、はい……」


 私達はゲンナイ先生に訊かれ、小さく頷いた。


「どちらもいい剣筋だった。素人とは思えないくらい努力しているようだな。これからも努力するように」

「はい。ありがとうございます」


 私達は頭を深く下げる。その後も剣の打ち合いは続いた。

 ミーナやメロアとも打ち合いする。男子とも軽く打ち合いする羽目になった。

 ライアンとパーズ、レオン王子はさすがに強かった。ただ、スージアは剣の素人らしく、線も細いので女子と同じ位の強さしかなかった。なんなら、サキア嬢やメロアに負けている。


「はぁ、剣なんて魔法より使い勝手が悪いんだから、学ぶ必要ないでしょ……」


 スージアは女子に負けたのが悔しかったのか、何とも情けない発言。出来ないことはやる必要がないことではない。


「スージア、剣が魔法より使い勝手が悪いなど間違いだぞ」


 ゲンナイ先生はスージアの背後に立つ。いきなり現れたので、スージアも驚いていた。


「ちょ、え、いきなり……」

「今、剣を振ったらスージアの体は二つに分かれる。その時点で魔法の負けだ」

「いきなり攻撃してくるのは反則でしょ……」

「戦場に反則はない。なんなら、不意打ちも立派な作戦の一つだ」

「そ、そうかもしれませんけど……」

「魔法は相手を認識していないと放てない。攻撃を当てるのが難しいからな。剣は感覚で触れる。手足を振るうように剣が使えれば魔法を放たれる前に相手を倒すことだってできる。それが強みだ」

「キース先生にもそんなことを言われました……」

「そうだろう。水の外なら水属性魔法は大きな影響を得るが、水の中で水属性魔法が使いにくい。火の中で火属性魔法を使うのも案外難しい。魔法は己と回りの環境に影響する場面が多いが、剣はどこでも使える。ほんと長所と短所が逆と言ってもいいな」

「ゲンナイ先生は何で剣を選んだんですか?」

「そりゃあ、俺に剣の才能があったのと、騎士の方がカッコいいって思ったからだ!」


 ゲンナイ先生は両手を組み、胸を張る。とても子供っぽい考えだが、今でも生き残っているのだから、それだけ優秀な方。腕前は本物だろう。


「スージアももしかしたら魔法の才能だけじゃなくて、剣の才能もあるかもしれないぞ」

「ふっ、そんなの万に一つもあり得ませんよ」


 スージアは木剣の先を地面に向け、不貞腐れた。


 ――ああいう考えが自分の才能を殺しているというのだろうか。


「ん~、俺、メロアに負けそうになっちゃった……」

「ライアンが鍛錬を怠っているからでしょ。もし、負けたらどうするつもりだったの?」

「別にどうするつもりもねえよ。俺は楽しいから剣を振っているだけだし、勝ちたい気持ちはあまりないからなー。剣が弾かれたらおおースゲーってなる」

「はぁ、騎士団長の息子とは思えない……」


 パーズはライアンの気楽さに頭を抱えていた。パーズの剣術はこのクラスの中で一番上手く、完璧に近い。

 ゲンナイ先生と渡り合えるくらいの強さがある。まあ、ゲンナイ先生は手加減していると思うけど。


「パーズっ! もう一度勝負よっ! あんたから一本取るまで打ち込み勝負ねっ!」


 メロアは独自の構えを披露し、パーズの前に立つ。

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