デイジーちゃん達を送り届ける
「はぁはぁはぁ…ありがとうございました。いやはや、まさか自分の店の商品が盗まれるなんて…」
老人は地面に落ちていた輝く石を拾い上げ、ルーペで確認する。
「うん…傷は付いていないようですな…。そこで不貞腐れている君! 次やったら必ず騎士団に突き出すからな。今回は商品が無事帰ってきただけで許してやる…。悪い行いをするんじゃなく、真っ当な形で家族を支えられるようになりなさい」
――へ~許しちゃうんだ…このお爺さんお人よしなのかな…それともさっきの話を聞いてグってきちゃったのかな。
「まぁ、死んでないだけましだと思ったらいいんじゃないですか。それよりも…」
私はすぐさま、バートンの方へと向かい様子をうかがう。
「う~ん…多分気絶してるだけだよね。出血もしてないし…体も暖かいし。骨とか折れてたら大変だったけど、直に目覚めるかな…」
――ほんとはもっと介抱してあげたいけど…3人を村に送らなきゃいけないから、ここに置いて行くね。許して。
「お嬢ちゃん、このお礼はいつか必ずさせてもらうよ。時間があったらすぐそこの店まで顔を見せてくれ」
「いえいえ、私は別に…ただ目の前を突っ込んでくる非常識な人を吹っ飛ばしただけですから」
「はっはっは、確かに、非常識な若者だったな! では、今晩はここで」
「はい、今度からもっと気を付けてくださいね」
手を振り、お店に帰って行くお爺さん。
――何ともエレガントなお爺さんだったな…。
「さてと…ウシ君。そろそろ行こうか」
「おうよ…」
やる事もなく地面に突っ伏していたウシ君は重い体を持ち上げると、グググ…と荷台を引き始めた。
街を出てどれくらい経っただろうか…。
既に真っ暗なので私は『ファイア』を使い、道を照らしながら進む。
「こんなに真っ暗だけど…ベスパたちは周りが見えてるの?」
「ええ、普通に見えてますよ。なので安心してください、万が一危険な魔物がいる場合はすぐさまキララ様にお知らせいたしますので」
「それならいいんだけど。でも…よく考えてみると…今私一人なのに、全然一人って感じがしないんだよね…だから真っ暗でも怖くないのかな」
「キララ様は夜道が怖いのですか?」
「そりゃあ…怖いでしょ。何があるか分からないし…」
――お化けとか…変質者とか…暗いっていうだけで何かと感覚が鋭くなっちゃうんだよね。
「さっさと帰ろう…」
――なんて言うんだろうか…大丈夫だと分かっていながらも暗い道を通るというのは昔体験したお化け屋敷に似ていると思った。お化け屋敷も100%安全なのだが…それでも怖くなってしまうといった心理状態と似ている。
ベスパ達のお陰か、私たちは無事にネ―ド村まで到着できた。
「キララさん、今日はもう遅いから私達の村で一泊していった方がいいと思いますよ」
「そうだね…荷台があればどこでも寝ようと思えば寝れるし」
私もすでに眠気がピークに達していた為、水で簡単に口を揺すぎ…濡れた布でさっと髪と顔を拭いて眠る。
早朝
「キララ様~、キララ様~朝ですよ~!」
「ん…んん…ああ、もう朝か…」
山と山の谷間から日差しが伸びる…。
――今日も快晴だ…。日差しで目が覚めるって、目覚まし時計で無理やり起きるより数10倍気持ちいよな…。今回はベスパに先を越されたけど。
寝起きに一杯の水を飲み干し、ひきつった顔を叩き起こすため私は冷水で顔を洗う。
「プは~! 冷た~、前まであんな酷い場所だったのに、もうこんなに綺麗な水が出るようになるなんて…」
「ええ、聖職者さんたちのお陰ですよ。以前より土地が豊かになった気分です」
井戸で水を上げるのに手間取っていた私を、丁度通りかかった髪の薄いおじさんが助けてくれた。
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