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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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ローティア嬢の命令

「ローティアさんにとってはメロアがいなくなってくれた方が、都合がいいと思うんですけど」

「そんなの、メロアさんが逃げたから、わたくしが不戦勝になったようなものじゃない。そんな、勝ち方、美しくありませんわ。メロアさんに勝ってこそ、レオン王子の心を射止められると思いますの」

「えぇ、何というか、凄い勝気ですね。ローティアさんなら、勝てればなんでもいいっていうかと思いました」

「わたくしがそんな小物だと思いまして?」


 ローティア嬢は金髪ロールを左手で靡かせる。


「これだから、芋娘は見る目がありませんわね。わたくしは、大貴族の令嬢ですのよ。他の女に負けるほど軟弱者ではありませんわ!」


 ローティア嬢は胸に手を置き、ぐっと背筋を反らせながら言い放った。


「まあ、普通の女性じゃローティアさんに手も足も出ませんね。でも同じ位にいるメロアさんが戦う意志すらないと」

「あの、情けない女はわたくしに負けるのが嫌なのよ。こんなの、わたくしが勝ったも同然ですわね。だからって油断も手抜きもいたしません。淑女たるもの、相手がだれであろうと勝ちにいくのですわ!」


 ――淑女、関係ないと思うけど。


「あ、あと、その、えっと……。ふわふわの抱き枕、最高でしたわ」


 ローティア嬢は私の耳元でぼそっと呟いた。どうやら、お気に召してくれたようだ。


「き、キララ、あなたに命令するわ。学園であなたはメロアさんとレオン王子に近づいてできるだけ沢山の情報を取って来なさい。どんな情報でもいいですわ。あと、昼、また教室におじゃまいたしますから、必ずいるように!」


 ローティア嬢は私に大きな声で命令してきた。何とも強引な方だが、袋をトランクから取り出し、私に押し付けてくる。


「これは……」

「ちょ、ちょっとした報酬よ。それじゃ、わたくしは、もう教室に向かいますわ」


 ローティア嬢はまだ授業が始まるまで時間があるのにトランクを持って、寮をさっさとあとにした。


 ローティア嬢から貰った袋の中を見ると、珈琲豆が入っている。報酬って、珈琲豆……。かと思ったら、金貨が混じっていた。


 ――賄賂じゃないだから。というか、珈琲豆が汚れちゃうじゃん。金貨の量も多いし、お金使い人使いが荒いなぁもぅ。


 私は言い返す暇すら与えてもらえず、ローティア嬢の命令を素直に受けることにした。お金は後で返せばいいし、もとから手伝う予定だったし。

 朝食を得て、お腹を満たしたあとミーナが未だに眠っていると気づき、部屋まで起こしにいった。


「うぅーん、今何時」

「午前八時四八分」

「う、嘘……」


 ミーナは目を丸くして、口をあけていた。


「嘘、午前八時三〇分だよ」

「で、でも、料理を食べている時間がほとんどないっ~!」


 ミーナは寝間着のまま、食堂に向かった。彼女にとって、服装よりも食事の方が大切なようだ。周りからどう思われようと、食事だけは確実に取る気合いがすごい。


「荷物も何もかも、置いていく気なのか」


 私はミーナの分の荷物をベスパに持たせ、着替えは教室でさせることにした。

 午前八時四八分に教室に到着し、一限目が始まるまで残り二分しかない。


「ちょ、ミーナさん。なに、その恰好」


 サキア嬢はミーナの寝間着姿を見て、引いていた。周りの者も、寝間着で登園してきたミーナの気が知れないようだ。


「いやぁ~、寝坊しちゃって、朝食の時間がなくなっちゃうから、着替えずに来ちゃった」

「もう、ミーナ、さっさと着替えて。私が隠してあげるから」

「は~い。男子の皆、覗いちゃ駄目だよ~」


 ミーナはレオン王子やパーズ、ライアン、スージアに向って笑いながらいう。皆、ミーナの体に興味がないのか、はーいと子供っぽく返事して承諾した。


 ミーナは服を着替えた頃、一限目の鐘が鳴った。

 一限が終わった後、一〇分の休憩がある。その間に、ちょっと話を。


「メロアさん、今日は朝から凄い大声だったね」

「あぁ、聞いていたの? まあ、あの金髪ロールがうざかったから、大きな声を出しちゃった。でも、食べ方に色々といわれるの面倒臭いし、ここは家じゃないし、指図されたくない」

「ま、まあ、メロアさんの考えもわかります。ただ、ローティアさんの考えも理解できますよね? 大貴族なら、きちんと食事するのが普通って皆が思っているはずですよ」

「はぁー、ほんと貴族って面倒臭いよね。だから、早く成人になって家を出たいの。勝手に婚約させてきた親父なんて大っ嫌い。小貴族や中貴族なら、まだ断れただろうけどよりにもよって、あの男とか」


 メロアは右奥の机に座っているレオン王子に視線を向けた。レオン王子は予習しているのか、教科書を開きながら勉強している。


「あぁー、もう。学園にいるのに、窮屈な思いしないといけないの。担任の先生がお姉ちゃんなの。同じ教室にレオンがいるの。私は普通の学園生活が送れると思っていたのに」


 メロアは机に突っ伏し、赤い髪をヘたらせていた。気持ちが下火になっている。まあ、大貴族の窮屈具合は私にわからない。

 なんせ、私は大変自由な村娘だから。相手の気持ちになって考えられないので、思考を変えなければ。


「逆にメロアさんが考える普通の学園生活ってなんですか?」

「えぇ。そうだな、授業は普通に受けるでしょ。多くの友達と一緒に話し合ったり、部活動を頑張ったり、学園の仕事を頑張ったり、自由な感じかな」

「なるほど。今のメロアさんに自由がないと」

「だって、ずっと監視されている感じがするんだもん。お姉ちゃんとか特に私に目を光らされている感じがする。あと、レオンとか授業中にもチラチラ見てくるしキモイ」

「うぐっ!」


 レオン王子はトバッチリを受け、机に突っ伏した。気持ち悪がられるくらい、見ているんだろうな。


「確かに今のところ、自由はないかもしれませんね。でも、まだ自由な場所がありますよね」

「え……」

「部活動とか、学園の仕事ですよ。そこでならメロアさんの言う自由な学園生活が送れるかもしれません。学園は広いんですよ。メロアさんの意識しだいで気持ちは変えられます」

「……確かに」

「部活動に打ち込んで凄い成果を出したり、学校の仕事をバリバリこなして、周りの者から信頼をえたり。もっと、広い視野を持ったらどうでしょうか」


 私はメロアの気持ちを少しずつ燃え上がらせられるように話す。


「ローティアさんは今のところ、大貴族の淑女でしかありません。でも、メロアさんが学園内で凄い成績を納めたら、それはそれで勝負になりますよね」

「そうか、そうすれば、あの金髪ロールを黙らせられるかも。なんなら私の求めている学園生活になるのか。ありがとう、キララ。やっぱり、持つべきものは友達だよっ~!」


 メロアは私に抱き着き、赤い瞳を燃やしていた。やはり、まだ一二歳児。ちょっと話せば、軽く掌握できる。

 別に悪いことしているわけじゃないし、メロアを思ってやっていることなので、悪気はない。自分の逃げ込める場所を作るのも大切なのだ。


「うぅ、き、気持ち悪い……」


 一番の被害者はレオン王子だった。何もしていないのに。彼を慰める者はこの教室に誰もいない。


 私はローティア嬢にレオン王子と話してこいと言われたので、近づかざるを得ない。


「大丈夫ですか、レオン王子」

「き、キララさん。私は気持ち悪いのか」

「そうですねー、好きな女の子をどういうふうに見るかによって気持ち悪いと思われる度合が変わると思います。頻度と時間、どういう表情しているのか、自分でわかっていますか?」

「そう言われると、無意識に視線がむかっている気がする……」

「じゃあ、次の時間に私が測っておきます。出来るだけ意識しないように、普通に授業を受けてください」

「あ、ああ、わかった」


 レオン王子はメロアにどれだけ視線を向けているのか、調べることにした。ベスパにも図らせる。すると、大分気持ち悪いことがわかった。


 二限目の授業終わり、昼休憩になる。その時、レオン王子に調べた結果を知らせた。


「ち、チラ見三八回。じっと見つめる一八回。見つめて笑う八回。こ、これを無意識でやっていたのか」


 レオン王子は自分の行動を客観的に知り、青ざめていた。


「こちらが、メロアさんを見ている時のレオン王子の顔です」


 私はベスパに転写させた紙を持ち、見せる。


「な……。こ、こんな鼻の下を伸ばして。なんてひどい顔なんだ! この男はどこの誰だ! メロアをこんな卑猥な顔で見つめているなんて! まるで猿じゃないか!」

「いや、レオン王子ですけど」

「……はい」


 レオン王子は大変落ち込んでいた。まあ、自分の顔は自分じゃ見られないから仕方ない。そもそも、今はそういうお年頃だろうし、レオン王子の周りにお兄さんやお姉さんがいるのだから、色々考えることもあるだろう。


「メロアさんを見るのが癖になっているんだと思います。出来るだけ意識してください。癖を直せば、もしかするとメロアさんもレオン王子に意識が向くかもしれませんよ」

「なにっ! 本当か!」

「今まで沢山見てきた男がぱっと見るのをやめてきたら、女はふと考えてしまうんですよ。あれ、どうしたのかな。興味持たれなくなっちゃった? えぇ、なんでだろう? って、上手くいけば、メロアの頭の中はレオン王子でいっぱいになります」

「そ、そんなことが。えへ、えへへ……」


 レオン王子の顔が卑猥な猿になっていく。彼、案外そういう人なのだろうか。


「い、いかんいかん。私がメロアのことを考えないようにしなければ意味がない」


 両頬を叩き、意識を反らす。


「はぁー、仕事、勉強、鍛錬……。仕事、勉強、鍛錬……」


 レオン王子は明鏡止水のように気持ちを静めようとしていた。ブツブツと呪文のように日常の面倒なことを呟きながら、メロアから意識を反らす。


 ――これで、ローティア嬢にも意識が向きやすくなったかな。


「キララ様、策士ですね」


 ――それほどでもないよ。まあ、レオン王子が本当にメロアが好きなら、どんなことしても意味がないんだけどね。


「メロアさんと、ローティアさんの位はほぼ同じですし、レオン王子にとってはどちらも優良物件なのでしょうね」


 ベスパは翅を鳴らしながら、飛んでいた。

 部屋の中にいた私とレオン王子以外は食事をとりに食堂か購買に向かった。


 私の話を聴いた後、レオン王子も購買に向かう。私は教室でローティア嬢を待った。


「ん、んんっ、あぁー、じゃましますわよ」


 ローティア嬢は昼休みが始まって八分くらいで、教室に来た。いや、来るの早いな。

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