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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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キャンミール

「本職の方がほとんどやってくれているけど、自然委員の者も手助けできる部分はしないといけない」

「じゃあ、私達でしっかり手伝いましょう! 私は村で酪農していましたから、少しは手伝えます」

「ほどほどにした方が良いよ。数が多いし、休日は疲れを癒さないと学園で生活していけない」


 モクルさんは腰に手を当て、体の力を抜きながら話す。


「部活動も入ってくると毎日大変だ。この後に部活に行かないといけないから、話し終わったし、もう教室を出るね」


 モクルさんは教室を出て部活に向かった。彼女は部長もしているはずなので、ほんとうに大変だ。でも、それだけ信頼されているのか。

 はたまた、良いように使わているだけなのか。どちらにせよ、モクルさんの手助けになるよう頑張ろう。


「ベスパ、毒虫と毒草の位置は把握した?」

「すでに終えました。北側に多く生息しているようですね。キララ様に忠誠を使っていますので、襲われる心配はありません」

「早いね。雑草の方は」

「すぐ終わるでしょう」


 ベスパは翅をブンブンと鳴らしながら、呟いた。ほんと数の暴力。


「じゃあ、私達は動物達の方を見に行こうか」

「そうですね。軽く挨拶しておくのも悪くないかもしれません」


 私達は教室を出て、ベスパの案内で動物達の厩舎にやって来た。

 ほとんどがバートンで、メークルが数頭いるくらいだ。まあ、国の礎を築いたバートンを育てているのは納得かな。


 バートン達の大きさはポニーより大きいくらい。生徒達が乗りやすいように小さめな個体が多いのかもしれない。

 レクーを連れてきたら怖がられてしまうくらい大きさが違う。

 皆、生徒達の練習用だと思われるため、ちゃんと大人しかった。

 少なく見積もっても八〇頭以上いるため、餌や水やりだけで大変だな。


「衛生管理はちょっと疎かかな……」

「バートンの力を全開に出させないようにするための措置でしょう。彼らが本気を出したら人間なんて吹っ飛びますからね。まあ、人手不足の可能性もありますが」


 ベスパはバートンたちの頭上をブンブンと飛びながら、話しかけてくる。


「衛生管理が悪いのはいただけないな。最悪、全滅しちゃう」


 私はディアを地面に放つ。


「汚い物質はとことん食べて綺麗にしてきて」

「わかりました!」


 ディアは嫌や面倒など一言も言わず、うおおおっと叫びながら、バートンの汚物を食べていく。ほんと、凄い精神力の持ち主だよ。


「よし、下見は終わったし、帰ろうか」

「そうですね。寮でモクルさんに話を聴けば問題なさそうです」


 私達はフルーファの背中に乗り、寮に帰った。時刻は午後七時。

 もう、夕食が開始されている。皆そろって食べるわけじゃないので構わないが、一人で食べるのも寂しい。

 出来るだけ大勢で料理を食べたい。


 周りを見て見ると、ミーナとメロア、ローティア嬢が帰ってきていた。

 ミーナとメロアは委員会に入っているがローティア嬢は何かの委員会に入ったのだろうか。

 でも、今は話し掛けてくるなと言うオーラが強すぎて近寄りがたい。

 逆にこういう雰囲気を放っている時でも来てくれるのが友達でしょみたいな感覚も伝わってくる。


 私は突っぱねられるのを覚悟の上、ローティア嬢のもとに向かった。


「お隣いいですか?」

「ふ、ふん……。好きにすれば」


 ローティア嬢は金髪ロールをクルクルと指先で弄りながら許してくれた。案外、優しいんだよな。


「あの、デカい人形。木だけじゃ硬いわ」

「ああ、そうですか。じゃあ、ふわふわの綿も入れておきますね」


 私はベスパにお願してフルーファ抱き枕の中にネアちゃんとメークルの糸を詰め込んでもらった。


「部屋に帰ったら、モフモフ柔らかな抱き枕が待っていますから楽しみにしておいてください」

「あ、あっそう。別に、嬉しくないけど。これ、あげるわ」


 ローティア嬢は紙に包まれた四角い何かを手渡してきた。


「どうも最近、シーミウ国で売られているお菓子らしいんだけど。まあ、ちょっと感想でも言ってみなさい」


 ローティア嬢は私に渡してきたお菓子の感想が聞きたいらしい。何とも遠まわしなお礼の仕方。可愛いじゃん。


「ありがとうございます」


 私はローティア嬢から四角いお菓子を貰った。キャンディーのように包まれた紙袋を開くと、少々ねっちょりした四角い物体が目の間に現れた。


「こ、これはキャラメル」

「キャラメル? キャンミールって言うお菓子よ。どうも、試行錯誤して作られたお菓子らしいんだけど」

「ローティアさんは食べないんですか?」

「食べたわ。でも、何と言うか、うーん、売れるのかしら? 会社を経営する者として意見が聴きたいわ」

「なるほど。私、こういうの大得意なので任せてください!」


 ――ベスパ、紙を舐めて魔造ウトサの可能性を調べて。


「了解しました」


 ベスパは紙をべろ~っと舐める。なんて行儀が悪い奴だ。まあ、私が命令したので許そう。


「問題ありません。普通のウトサです」

「じゃあ、いただきます」


 私は茶色っぽいキャラメルにそっくりなキャンミールを口にする。食事の後でもよかったが、ローティア嬢を待たせるわけにはいかない。

 口に入れた瞬間に広がるのは苦い味。お菓子なのに焦げの味がした。ただの焦げではなく、カラメルに似た苦い味だ。

 プリンの上に乗っていたら丁度いい苦さなのだが、そのまま口にしたら、あぁーにがぃ、ってなっちゃう味。

 噛めば噛むほど苦味が出てきて甘味が薄い。きっとウトサを溶かしながら煮詰めて四角く切ったような品だろう。でも、ただのウトサを溶かして固めたら飴になるはずなので、何かしら他の手が加えられていそうだ。


「うーん、これ単体じゃ無理ですね。苦いお菓子は誰も食べたいと思いませんよ」

「こんなの、ウトサの無駄遣いよね。なんで、こんな品を作ったのかしら」

「日持ちする甘いお菓子を作りたかったんじゃないですかね。ただのウトサを食べるだけじゃ、物足りないんでしょう」

「そう言う考えも出来るのね。ウトサは量がかさばる、粉状じゃ食べづらい。なんなら今のウトサの制限を突破するために考えられたのかも……」


 ――なるほど。落とし穴だった。


 ウトサを加工して販売されたら、普通の商人でも買えてしまう。ウトサを使用したお菓子の流通は日持ちしないから大丈夫と思っていたけど、キャンミールなら普通に日持ちしちゃう。

 でも、魔造ウトサを加工したら普通に瘴気があふれ出るはず。簡単に加工は出来ない。もし加工できるようになっちゃったら。


「ベスパ、中々にやばい状況なのかな……」

「なかなかにやばい状況かもしれませんね」


 シーミウ国も大量のウトサを売ることで国を維持している。そんな状況でウトサを制限されたら、どうにかして売ろうとするのが当たり前。


「キャンミールなら、ウトサを使用しているとは言え、他の商人も販売が可能になります。なんせお菓子ですから」

「シーミウ国のウトサを売りたいと言う信念が強すぎたか。まあ、何としてでも売りたいよな。ウトサを売りたい商人が五万といるし、抜け道を作られた」

「キララ、なにをウンウン、唸っているのかしら?」


 ローティア嬢は私が考えている中、話しかけてくる。


「今、ウトサの制限があるじゃないですか。その制限を上手く掻い潜ってきたなと思って……」

「国を維持するためなんだから仕方ないわね。他の国に売るより、お金を持っているルークス王国に売りたいのがシーミウ国の考えでしょう。それがどうかしたの?」

「あぁ、いえ、ローティアさんには関係のないことなので」

「わたくしに関係のないこと。そう、なら、聞きませんわ。時間の無駄ですもの」


 ローティア嬢は詮索せず、一歩引いて食事を始めた。ほんと出来たお嬢さんだ。ミーナやメロアと違って相手を深堀しようとしてこない。

 そういうところが出来る大人って感じだ。一二歳なのにしっかりしているなぁ。


 ――このまま、何も対策しなかったら、魔造ウトサが他国に流通しちゃうかも。そうなったら、もう、手が付けられなくなっちゃう。


「落ち着いてください、キララ様。今のところ、このキャンミールと言うお菓子が不味いのでそこまで大きな痛手になりません」


 キャンミールがバカみたいに美味しかったら危なかった。これだけ苦いお菓子を好むルークス王国の民はいない。


「まだ、猶予はあります」


 ベスパは紙をぺろぺろ舐めながら、私に伝えてくる。


 ――そうだね。でも、ウトサを加工しないでくださいなんて言えないし、正教会が黙って魔造ウトサを売らないようにとどまり続けるとも思えない。何かしら抜け道を使ってお金を稼ごうとするはずだ。


「何かしら手を打たないといけませんが、今の私達にそこまでの力はありません。後手に回る中、他の大人の力を信じるしかないです。私達以外にも危険視しているはずですから、対策を少しでも考えておきましょう」

「うん……。そうだね。今はお腹が減ったから、料理を食べる!」


 私は抜け道を見つけられ、少々不安な気持ちに陥ったが、お腹が減っていたら何も考えられない。肉やパン、野菜をモリモリ食べた。


「ほんと、ガサツな芋女ね。食べ方が成っていないわ。でも、無性に美味しそうに食べるのよね」


 ローティア嬢は隣で微笑みながらパンを優雅に千切って食べていた。もう、二から三センチほどしか口を開けていないのではないかと思うほど少しずつゆっくり咀嚼し、頷くように飲み込む。

 いやぁ、そんな時間をかけて食事してられる状況じゃないんですよ。


「ぷはー、美味しかった。ごちそうさまです」


 私は両手を合わせ、料理に感謝した。

 ローティア嬢は未だに食事しているが、立ち上がらせてもらう。


「では、ローティアさん。お先に失礼します」

「ええ、構わないわ」


 たてがみロールを後方に流し、花の香りをまき散らしたあと、私の失敬を許してくれた。

 皿やお盆を料理人の方に返し、お風呂場に向かう。

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ローティアさん好きだなあ魅力的
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