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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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自然委員の仕事

「ミーナ、掃除に行くよー」

「えぇー、ちょっと待って~。今、文字書いているから」

「寮で部屋が同じなんだから、部屋で書けばいいでしょ」

「部屋に行って勉強する気が起きるわけないもん。今の内に終わらせておくの」

「じゃあ、私は学園長室に行っているからね」

「うん。一人で終わらせておいてもいいよ」

「もう、サボろうとしないの」


 私は掃除が得意なので、ミーナがいてもいなくても問題ない。そのため、一人で学園長室に向かった。

 学園長室の中を掃除してもいいのかと思ったが、危険な品を生徒が出入りする可能性がある場所に置いておくわけがないので問題ないはずだ。


「失礼します。掃除に来ました」

「ああ、キララ。よく来たな」


 キースさんは魔導士の服装ではなく、用務員のおじさんの衣装を着ていた。あまりにも似合っており、ほんとうに掃除を仕事にしている人のようだ。


「わしは掃除している者達を見にいく。机の上に置かれている品や本棚の中に入っている品に触れないように、掃除してくれ」

「わかりました」


 私はキースさんがいなくなった後、ブラットディアたちを呼び、部屋の中のゴミや塵、髪の毛などを全て綺麗にする。

 魔法で綺麗にすればいいのにと思うが、大量の資料がある場合や荷物があると、上手くいかない場合が多い。

 大切な品がどこに行ったのかわからなくなってしまう可能性があるので、手作業で掃除する必要がある。


 私は棚の整理や資料を纏め、倉庫のような部屋を綺麗に仕上げた。埃など一切落ちていない。


「ディア、お疲れ」

「いえいえ、キララ女王様の命令とあれば、どんなものでも食べますよ!」


 ディアは手の平の上で超高速回転した。相当、気分が高い。

 今、私は制服を着ていないので、白い体操服にディアは目立ってしまう。そのため、ポケットの中に突っ込み、着替え終わった後、ブローチとして付け直すことにした。


「あれー、なんかすごく綺麗になってるー」


 ミーナは私が掃除を終えた頃に戻って来た。


「もう、掃除が終わっちゃったよ」

「えへへ、ごめんごめん。じゃあ、私も掃除っぽいことしておこうかな~」


 ミーナは掃除を始めた……が、


「いでっ、うわっ、どわぁあ~っ!」


 ミーナが動けば動くほど、部屋がグチャグチャになっていく。

 私は顔がぴくぴくと震え、仕事が増えて大きなため息が出た。


「う、うぅん。ん? 見て、キララ。スージアとサキアの名前が書いてあるよ」


 ミーナはお尻を突き出しながら、書類の山に埋もれていたが、二枚の紙を持ち上げる。


「ちょっと、ミーナ。部屋の中に置いてある資料を見たら駄目なんだよ」

「でも、見えるようなところに置いてあったのが悪いよ」


 ――ミーナが掃除紛いなことして散らかしただけでしょ……。


「もう、ミーナは落ちた書類を机の上に置いておいて」

「は~い」


 ミーナは渋々返事して、床に落ちていた資料を机の上に乗せる。

 私はミーナが持っていた二枚の紙を受け取り、軽く目を通す。


「スージアとサキアの情報が書かれた紙だ。私も試験中にフェニル先生に書かれていたな。あれと同じか……」


 スージアとサキアも一人で試験を受けていたのだろう。まあ、他国の留学生だし、そういう対処を取る可能性もあるよな。


 スージアとサキア嬢の紙をじっくりと見るわけにはいかず、机の上に戻す。

 どちらも、びっしりと文章が書かれており、脳内に軽く残っていたのをベスパが勝手に分析した。


「なるほど、なるほど」

「ん? ベスパ、どうしたの」

「いえ、先ほどの文章をキララ様の代わりに読んでいました。結論から言うとスージアとサキア嬢は他国の諜報員の可能性が浮上しました」

「えぇ。ちょ、諜報員……。何のために?」

「そこまで詳しく書かれていませんでしたが、疑わしい点は多いようです」

「そうなんだ。確かに、よくつるんでいるもんね」


 でも、諜報員同士でつるむって、あるのか。


「どちらもルークス王国の同盟国でしょ。なのに、諜報員が来るなんて……」

「悪さしていなければ諜報員だとしても問題ないと思います。まあ、気にする必要はあるかもしれませんけど……」


 ベスパは腕を組み、翅をブンブン鳴らしていた。


「城塞都市アクアテルムとシーミウ国がルークス王国の学園に諜報員を送るなんて。でも、年齢は同じ一二歳だし、何か、裏があるのかな」

「力関係があるとすれば、断然、ルークス王国の方が上です。どちらも正教会の信者が多いという特徴はあるかもしれませんね……」

「はぁ、やだやだ、そんな話。もう、なんで、同じ教室に二人も諜報員がいるのやら」

「なんの話をしているの?」


 後方からサキア嬢の声が聞こえた。廊下を掃除し終えたのだろうか。


「ん、あぁ、いやぁ、何でもないよー」


 私は苦笑いを浮かべながら、サキア嬢の姿を見る。


「廊下の掃除が終わったから手助けに来ました。なんか、散らかっていますね。一緒に片付けましょう」


 サキア嬢は学園長室の中で普通に歩きだした。諜報員かもしれないと考えるだけで、ものすごく怪しいように見えてしまう。


「あぁー、大丈夫大丈夫。私とミーナで仕事をするから、サキアさんは先に教室に戻っていて」

「そうですか。わかりました」


 サキア嬢はすぐに身を引き、学園長室から出て行った。


「うぅ、こわ……」

「どわぁ~っ!」


 私がサキア嬢の顔に張り付いた笑顔を見て震えていると、ミーナが大きな声を出した。


「見て見て、キララ。女の人がいっぱい乗ってる~。なにこれなにこれ~」


 ミーナは禁断の書と書かれた魔導書を開き、私に見せてきた。白黒の絵で、ものすごく上手い。どうやら、写生画だろう。

 にしても、ほぼ全裸じゃないか。禁断の書って。あのエロ爺……。


「ミーナ、勝手に開いちゃ駄目でしょ……」

「だって、禁断の書だよ。凄い魔法が乗っているかもしれないと思ったんだもん……」

「はぁ……」


 私は掃除するだけで疲れが溜まった。とりあえず、ベスパとディアに掃除を任せ、私とミーナは学園長室から出た。そのまま、教室に戻る。

 皆、掃除を終えており、教室に戻っていた。ざっと一〇分の掃除が終わり、もう、午後六時になっていた。


「午後六時一五分過ぎから委員会の集まりがあるから、皆、各教室に移動して」


 レオン王子は私達に教室を指定し、委員会活動に向かわせる。


「えっと、私は三年一組の教室か」


 自然委員の委員たちが集まる教室にやってくる。三年一組の教室は私達の教室とは違い、日本の中学、高校と同じくらいの教室くらいだった。

 机の数は二〇台ほど。三年生の数が二〇〇人もいないほどなので、妥当かな。

 教壇の上に乗っていたのは見覚えのある女性だった。


「ん~? おおー、キララちゃん。もしかして自然委員?」


 大きな乳を弾ませながら私の方に走ってくる大柄の女性は冒険者女子寮でブラジャーを渡したモクルさんだった。


「こんにちは。モクルさん。もしかして、モクルさんが自然委員の委員長ですか?」

「そう! この私が自然委員の委員長! に、なっちゃった……。上手くできるか不安……」


 モクルさんは胸を大きく張った後、すぐに肩をすぼめ、指先を突き合わせる。案外気が弱い方のようで、図体の割に可愛げがある。


「まあ、いつも通り堂々としていれば皆、話しを聴いてくれますよ」

「で、でも、皆は貴族だし、私は獣族だし……」

「確かに。もしかして、押し付けられたりしましたか?」

「そ、そんなことないよ。ただ、自然委員は自然っぽいモクルが良いっていう話しになって。やむなく……」


 モクルさんは獣族なので、自然に根深いと思われたのか、自然委員の委員長に抜擢されていた。


「自然委員ってどんなことをするかまだよくわかっていないんですけど……」

「その話は人が集まってからはするよ」


 モクルさんは教壇の上でじっと待ち、私以外の自然委員が来るのを待った。

 六時一五分ごろ、委員会が始まる時間。部屋にいたのは私とモクルさんのみ。


「な、なんで」

「はぁ。まあ、こうなるか……」


 モクルさんは腕を組みながらため息を漏らす。


「えっと、自然委員って仕事が大変なんだよね。だから、誰もしたがらないんだ。教室で一人ずつ来るはずだから、二四人くらい来る予定なんだけど、キララちゃんだけ真面な子みたいだね」

「こんなんでいいんですか?」

「本当はよくないけど、自然委員の仕事は大変なのに、しなくても支障が出ないことがほとんどだから、行かなくてもいいやって言う生徒が多いんだよ」

「しなくてもいいことなのに、委員会があるんですか……」

「今と昔じゃ考え方が違うからね」


 モクルさん曰く、生徒にやらせるんじゃなくて、高いお金を払っているんだから、清掃員を雇えばいいだろとか、すでに清掃員が仕事をしているんだから、自分達が働く必要ないじゃんって言う、者達が多いんだとか。


「まあ、ほんとうは仕事がしたくない言訳なんだけどね」

「ほんと、自己中心的な人達ですね。でも、モクルさんは委員長としてちゃんと来ているなんて偉いですね」

「まあ、私は前も自然委員だったし。私くらいしか真面に仕事していなかったし……」


 モクルさんは訴えることもなく、黙々と自然委員の仕事をしていたようだ。ガサツに見えて物凄く仕事が丁寧な方なのかも。


「でも、キララちゃんが来てくれて嬉しいよ。ありがとう」

「い、いや、委員会なんですから、来るのが当たり前だと思いますけど……」

「まあ、辛かったらキララちゃんも仕事しているふりをしてくれればいいから。とりあえず、自然委員の仕事内容を説明するよ」

「よ、よろしくお願いします」


 私は椅子に座り、モクルさんの話しを聴く。


 自然委員はこの広いドラグニティ魔法学園の自然を守るのが目的。飼育されている動物達の世話や雑草、毒草、毒虫を見つけるのが主な仕事。


「へぇー、毒草、毒虫を見つけるんですか」

「どの位置に生息しているのか把握して記録する。動物達が近づかないように軽く駆除する必要もあるけど、それは業者の方がやってくれる。大変なのが雑草の駆除かな。あと、掃除」

「まあ、これだけ広かったら大変ですよね」

「清掃員の方も少しは雑草を抜いてくれるけど、全部綺麗にしてくれるわけじゃないから、週に一度は園舎の周りや闘技場の周りの雑草を抜かないとすぐに生えてくる。大変な仕事だよ」

「よく、一人で仕事していましたね……」

「フェニル先生が冒険者女子寮の生徒を引っ張り出して手伝ってくれたこともあったから何とかね。今年もそうなるかな……」


 モクルさんは申し訳なさそうに溜息をつく。


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