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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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魔法学基礎演習

 私は走って倒れたら体を直してもらい、剣を振って腕が持ち上がらなくなったら治してもらう。魔法は大量の魔力体を生み出して無理やり減らし、また走る。その繰り返し。

 私の頑張りは周りに伝染し、ライアンとパーズ、メロア、ミーナ、レオン王子の五名は必死に努力する。逆にスージアとサキア嬢は講義の疲れを癒していた。

 三限目が終わった合図の鐘がなる。


「よし、今日の講義はここまで。今日は五限目が終了したら、各委員会の集まりがあるから、教室に貼られた委員会が集まる教室に向かうように」


 フェニル先生は大きな声を出し、一枚の紙をローブから出した。


「はい! ありがとうございました!」


 レオン王子は頭を下げ、挨拶する。私達も併せて挨拶をした。そのまま、次の講義もこの場所なので、待つ。なにをするかと思えば、魔法学基礎演習という講義だ。つまり……。


「はははっ、こってこてに絞られたか。結構結構。若者はそうでなくてはな」


 黒いローブを纏ったキースさんが箒に乗って飛んできた。


「箒で飛んでる……。凄いっ!」


 先ほどまで死んだ目をしていたスージアは紫色の瞳を輝かせ、キースさんを見つめた。どうやら、箒移動はやはりすごい技術らしい。


「皆、箒で飛びたいか?」

「はいっ!」


 私以外の者は大きな声で返事をした。箒移動はカッコいいが、普通に怖すぎる。だって、命綱無しで地上八〇メートル付近を飛ぶんだよ。怖すぎるでしょ……。


「よし、じゃあ、順番に箒に乗せてやろう」


 キースさんは一番興奮していたスージアを箒の持ち手に座らせ、空中に浮かびあがり、空を飛んだ。


「うわぁあ~っ、すっごいいっ! 僕も、箒で空を飛べるようになりますか!」

「ああ、飛べるようになるとも。実際に、魔法学基礎演習の目的に箒に乗る項目もある。他にも項目があるからあとで話そうか」


 キースさんとスージアが飛んだあと、レオン王子、メロア、ミーナ、パーズ、ライアン、サキア嬢、私の順番で箒に乗る。空の旅はとても心地よかったが、汗をぐっしょりとすっている体操服が風にあおられて少々寒かった。


「よし、皆は箒に乗る体験をした。これがこの講義の目標になる」

「箒に乗ることが魔法学基礎演習の目標ですか?」


 レオン王子は手を上げて訊いた。


「あくまで一つの目標だ」


 箒に乗るためには空中に浮き、移動する高度な魔力操作が必要になってくる。

 ミーナなど、魔力を持たない者が使うのは物凄く難しい技術だ。


「魔法学基礎演習の一番の目的は『魔力を操作する』ことが理解できているかに限る。箒に乗る、魔法を使わずにものを浮かばせる、相手の位置を探る、魔力で造形する。などが出来ればそれでいい」

「なるほど。だから、箒に乗ることが目標の一つになるわけですね」

「魔法が苦手な者が箒に乗ったら危険だからな、自分が出来るかもしれないと思ったことをできるようになれば、次の講義に進んでも問題ない。今日から半年の間、魔力操作を体にしっかりと理解させるように精進しなさい」

「はいっ!」


 私達はフェニル先生と全く違う教育方法のキースさんの話を聴き、盛大にやる気を出していた。やはり、新人教師とベテラン教師の違いがはっきりとわかってしまうな。


「よし、以前の講義で魔法の得意不得意を見せてもらった。得意な者はすでに魔力操作を理解しているのだろう。逆に、得意ではない者は上手く理解できない場合が多い。わしは得意ではない者に付くから、得意な者は己で考え、実行してみなさい。危険な行動はわしがいる時のみ。いいか?」

「はい!」


 私達は大きな声を出し、返事した。

 私とメロア、スージア、レオン王子の四名は魔法が得意な部類、ライアンとサキア嬢は普通な部類、ミーナとパーズは苦手な部類に分けられた。

 キースさんはミーナとパーズに魔力操作の感覚をつかんでもらうために付きっ切りで指導する。その姿をライアンとサキア嬢も見て学んでいた。

私のように魔法が得意な者は魔力操作の訓練を自分から開始する。


「スージアは何をするの?」

「僕? 僕はもちろん、箒に乗るよ! 魔法使いと言ったらこれでしょ!」


 スージアは荷物から自分の箒を組み立て始めた。箒を折り畳み自転車みたいに持ってくるの。なんか、変わっているよな、この子……。


「どう、カッコいいでしょ」


 スージアは中々高級な箒を私に見せてきた。持ち手が太く、穂先の藁前まで綺麗な波っぽい模様が掘りこまれている。


「か、カッコいいのかな……」


 ――箒にカッコ良いカッコ悪いってあるのか。まあ、造形美はあるな。無駄な部分がない感じが美しい。


「レオン王子は何しますか?」

「私は魔力で造形しようと思う。土からバートンでも模れるように努力してみる」

「なるほど、面白いですね。メロアさんは何しますか?」

「私は隠れている相手の位置を探ってみる。上手くいくかわからないけど、戦いで便利そうだし」


 メロアは戦いのことになるとやる気が増すのか、髪に魔力を流しながら意識を集中させていた。


「みんな、違うことをしているんだな。私は何をしようかな……」

「キララ様は箒で空を飛び、魔力で造形して敵の位置を探ればいいんじゃありませんか」


 ベスパは私の頭上を飛びながら、提案してくる。


「さすがに三種類同時にこなすのは無理だよ。何か一つに絞らないと」

「でも、キララ様は一種類ならある程度出来てしまうじゃありませんか。それじゃあ、講義の意味がありませんよ。何か二つ同士に出来れば、もっと技術が向上するはずです」

「そりゃ、そうだけど。まあ、一種類なら出来るし、二種類でやってみるか……」


 私は魔力操作して、地面から八センチメートル浮いて周りにいる者を探る。

 魔力で体を持ち上げ、薄く広げた魔力の網に何人の魔力の反応があるか知ると言うのが私の考えた方法だ。

 なにが正解かわからない。なんせ、まだ教えてもらっていないのだから。

 でも、キースさんはあえて教えてくれない。始めは自分で考えろ。それが彼の教育方針のようだ。

 言われたことができるのは普通。言われなくて考えることが大切だと遠まわしに教えてくれている。

 大人の私だから、理解できるけどまだ一二歳の子供に教えるのは早すぎる気もするな。

なんせ……。


「ふっ、ふっ、ふっ!」


 スージアは箒に跨りながら飛ぼうとしているのか跳躍していた。だが、全然浮かび上がらない。


「グ、ぐぐぐぐぐぐ……」


 レオン王子は地面から土を掘り起こすことすらできていなかった。


「うぅん、うぅん。すぅぴぃ……」


 メロアは何も感じなさすぎて眠りこくる。

 行動することは素晴らしいが、深く考えていなかった。まあ、見様見真似でやってみる努力も大切か。


 私は三名に考える大切さを教えるため、あえて何も言わずに自分の訓練に集中する。

 うすーく広げた魔力の膜に引っかかった者は九名。闘技場の中にいるのはこの場にいる私達だけのようだ。


 ――ベスパ、合っている?


「正解です。さすが、キララ様。素晴らしい感度ですね」


 ベスパは手を叩き、翅を大きく動かしながら褒めてきた。私が褒め上手なだけあって、ベスパも褒め上手だ。まあ、自分に褒められるなんて変な気分だな。


 私は一瞬で二種類の魔力操作が出来てしまった。今までいろいろな経験を積んできたからだろうか。

 それとも、大人の理解力のおかげだろうか。どちらにしろ出来てしまった。三種類の魔力操作に挑戦せざるを得ない。

 私は周りに気づかれないように少しだけ浮き、闘技場外の者の魔力も調べ、手の中でミツバチを作る。


「…………」


 キースさんに見られているような感覚に陥り、一瞬で集中力を切った。


「む……。なぜ、やめた?」


 キースさんは私の方を見ながら呟く。


「え……。なぜ、やめたと言われても。あまり、じろじろ見られると恥ずかしくなっちゃって」


 私はキースさんに睨まれるが苦笑いしながら、この場を切り抜ける。さすがに始めから魔力操作が複合して出来てしまうと知られたら、周りとの差がありすぎると気づかれる。

 少しでも足並みをそろえたいという日本人特有の考えが頭の中に巡っていた。


「そうか。すまなかったな」


 キースさんは私の方を見ないようにしてスージアとレオン王子、メロアに指導していく。


「はぁ。注目されるのは何か、気が引ける……」


 私は学園で目立ちたいわけではない。普通にドラグニティ魔法学園に守ってもらって学歴が欲しいだけだ。

 学歴があれば仕事にも困らないし、信頼される人間になれる。強くなるために来たのもあるが、一人だけ突き抜けていたら周りから何と言われるか。

 手の平の中で魔力を操作し、ミツバチを作る。

 ぶーんと一匹、二匹が飛んで行く。どこに向かうのかわからないが魔力体なので、誰にも気づかれないはずだ。


「すでに、このような造形が出来るとは」


 キースさんは私の魔力体を指先でつまみ、捕まえてしまった。


「えぇ……、な、なんで」

「魔力体は魔力を透かしながら見ればわかるのだよ」


 キースさんは右眼に魔力を溜めて世界を見ていた。


「あ、あはは。私のスキルがビー関連なので、ビーっぽい体なら簡単に作れるだけですよ」

「そうかもしれないが、すでに魔力を上手く扱えていることに変わりはない。やはり、キララは周りの者と実力が数段階違うようだな」


 キースさんは私の魔力体を放した。


「あ、あんまり周りに広めるのは……」

「なにをそんなに怖がっている。周りに実力者だと知られることは誉れだと思うが。情報の漏洩を気にしているのか?」

「そ、そりゃあ、まぁ……」


 情報化社会で生きてきた私にとって、強さが知られ周りに伝染していく情報の恐ろしさを知っている。

 正教会に目を付けられたり、面倒事に巻き込まれる可能性だって上がるはずだ。自分は普通だと周りが認識している方が行動を起こしやすい。

 なのに、一番すごい人にすぐに気づかれてしまった。まあ、元から知られていたといったほうがいいか。


「実力を隠して生きるのも悪くはないが、強くなるためには自分に何が足りないか知る必要がある。自分の力を自分しか見ていなければ、見つけられない欠点だってあるはずだ。自分の姿を完全に自分で把握することは不可能に近いことと似ているな」


 キースさんは何とも深い話を語る。一二歳児にするような話じゃないだろ。私が三〇歳を超えた三十路の精神を持っているから理解できるけどさ。

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