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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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珈琲の美味しさ

「うーん、お茶会に行ってもローティア嬢以外の女性も来ますから、大きな効果は得られないと思います」


 私は腕を組みながら、ローティア嬢でも出来そうなアプローチの方法を考える。


「一対一でいい具合に喫茶店でお茶をするとか、今、この状況みたいにするのが理想だと思いますけど」

「はぁ、これだから芋娘は。わたくしにそんなことができると思いますの?」

「レオン王子なら誘えば乗ってくれると思いますよ」

「そうかしら……。でも、わたくしはレオン王子を踏み倒した女ですわよ。そう簡単に応じてくれると思いませんわ」


 ローティア嬢はフルーファをこれでもかと抱きしめていた。


「あの時は許してくれたように見えましたけれど、内心、ものすごく嫌っていたに違いありませんわ……」

「まあ、相手の心境はわかりませんけど、誘ってみる価値はありますよ。断られたらその時に考えましょう」


 私はフェンリルの体を抱きしめながら、珈琲を飲む。


「そ、そうですわね。今更、なにをしても結果は簡単に変わらないのだから、普通とは違う方法で頑張らないといけませんわよね……」


 ローティア嬢はフルーファが窒息死しそうになるくらい、抱きしめながら呟く。


「はぁ~、美味かった~。ん? うぉ、ものすごく美味そうな珈琲のにおいがするっ!」

「本当だ……。まるで、故郷に帰って来たみたいなにおいがする……」

「プルウィウス連邦は珈琲好きが多いのかい?」

「当たり前だろ。ルークス王国は紅茶の方が人気かもしれないが、プルウィウス連邦じゃ、珈琲の方が人気なんだぜ」


 教室に戻って来たのはライアンとパーズ、レオン王子だった。三名ともお腹を膨らまし、満足して帰って来たと思われる。


「れ、レオン王子、こ、こんにちは、ですわ……」


 ローティア嬢は昨日の件があったからか、喉を震わせ、ブリキのおもちゃのような動きになっていた。


「あ、ああ、ローティア、こんにちは。ローティアも珈琲を飲んでいたのかい?」

「は、はい。ものすごく美味しい珈琲を飲んでいましたの。レオン王子もいかがしら……」


 ローティア嬢はレオン王子にコーヒーカップを差し出す。


「えっと……」

「あ、す、すみませんわ。飲みかけをお渡しするなんて、わ、わたくし、なんて失敬な……」


 ローティア嬢は一度テンパると、とことんドジを踏むのか、することなすこと失敗する。


「ローティア、疲れているのかい? 昨日は沢山踊らせてしまったから、その影響で」

「ち、違いますわ! あの時は夢のようで……。って、そうじゃありませんわ。えっと、その、こ、このお菓子、皆さんでお食べになって。わたくしは次の講義に行かないといけませんから、この辺で」


 ローティア嬢は逃げるように教室を出て行った。


「なんか、菓子がいっぱい置いてあるぞ。本当に食っていいのかな」

「そ、そうだね。食べていいのかな……」


 ライアンとパーズは食べていいのか考えている間に、手を伸ばし、パクリと口にしていた。


「あ、あめえ~っ! なんだこれ、こんな甘い菓子があるのかよ!」

「す、すごい、甘すぎて美味しい。コーヒーが飲みたくなってきた!」


 ライアンとパーズの視線が私に向けられる。仕方がないので、珈琲を入れて飲ませてあげた。


「んんんんんんんっま!」


 ライアンとパーズは息を溜めながら大きな声ではっきりと言う。


「キララ、この珈琲ならプルウィウス連邦で店を出しても流行るぞ!」

「うん! 絶対に流行る。焦げ臭くないし、渋みも少ない。口当たり滑らかな飲み心地で、苦味も果実のように爽やかだ。甘いお菓子がるとなお美味しいし、特に白い泡が良い味を出しているよっ!」


 パーズの早い解説のおかげで、どれだけ喜んでいるのか何となく察した。


「ありがとう。二人共、そんなに珈琲が好きだったんだね」

「まあ、珈琲は騎士の嗜みなくらいだからな。親父たちを真似して飲んでいた。そうしたら、いつの間にか癖になっちまって……」

「この飲み物のおかげでドラグニティ魔法学園に受かったと言ってもおかしくないよね」


 ライアンとパーズは珈琲の力で学力を伸ばしたようだ。カフェインは覚醒効果がある。パーズならどれだけ飲んでも完全睡眠のおかげで、カフェインの効果を打ち消せるだろうから、眠気が来るまでずっと珈琲が飲めちゃうわけか。まあ、飲み過ぎも体に悪いけど。


「えっと、キララ、この容器は……」


 レオン王子は机の上に置いてある牛乳瓶を見つけた。中身がまだ入っており、においや色を知られる。なんなら、そのまま、飲み干された。


「ま、間違いない。牛乳だ。なんで、キララが牛乳を……」


 レオン王子は牛乳瓶と私を見まわしてくる。


「えっと、知り合いに牛乳を売っている方がいて、良い値段で売ってもらったんです」

「キララの知り合いにマドロフ商会の者がいるのか」

「あ、あはは。そうですねー。マドロフ商会って言っていたような……」


 私は笑ってごまかした。別に知られても何ともないが、情報がどこからどのようにして漏れるかわからない。少しでも、漏洩は防がないと最悪、村の方に迷惑が掛かる。

 レオン王子にも珈琲を淹れた。


「すみません、牛乳は今ので最後でして……」


 私はただのブラックコーヒーを出した。


「構わない」


 レオン王子は大人っぽくブラックコーヒーを口にした。苦い品が大丈夫な男性なのだろうか。


「ん。飲める……」

「飲める? 変わった感想ですね」

「あぁ、私は珈琲が苦手で、紅茶の方が好みなんだ。興味本位で飲んでみたら、飲めて自分でも驚いている」


 レオン王子は珈琲を飲み、苦味と風味を楽しんでいた。紅茶とまた違った飲み心地なので、ケーキを口にすると珈琲を飲む手が止まらない。


「珈琲が美味しいとは、こういうことか。なるほど」


 レオン王子は何か納得した表情を浮かべ、珈琲を飲み切った。


「はぁ~、キララ、珈琲もう一杯」


 ライアンは珈琲を全て飲み切り、空のカップを私に向ける。


「珈琲の飲み過ぎは体に悪いから、一日三杯までだよ」

「えぇー、じゃあ、これで二杯目ってことで」


 ライアンはお替りを飲み、体を震わせて元気を滲みだしていた。ブラックコーヒーがすきな一二歳児とか、ませているな。

 パーズの方ももう一杯飲みたいと言うので、淹れてあげた。


「はぁー、ごちそうさま。美味い珈琲だった。満足だぜ……」

「ほんとだね……。明日もまた飲みたいよ」

「えー、ライアン珈琲二杯、パーズ珈琲二杯。珈琲一杯銀貨八枚で、金貨一枚と銀貨六枚のお支払です」


 私は店員のように笑いかけながら、目を丸くしているライアンに向って言う。


「た、ただなんじゃ……?」

「ただ? 一言もただなんて言っていませんけど。この珈琲は物凄く高い豆を使っているので、この値段で提供しています。もしかして、飲み逃げをするつもりですか~」

「う、うぐぐ……」

「なんてね。仕方がないから今日はただでいいよ。また飲みたくなったら、お金を払うか、それに見合った何かをして。この世はただと言う言葉が一番怖いんだよ」


 私は魔法で珈琲の後片付け。教室が広く、人数が少ないとこのような楽しみ方ができてしまうようだ。


「おーい、お前ら、さっさと着替えて学園の第一闘技場に集合しろよー。男子は廊下で、女子は教室の中で服を着替えろ」


 フェニル先生が教室に入って来て、私達に話しかけてきた。


「ほら、男どもはさっさと出て行った。女の着替えを覗いていいのは結婚した後だけだぞー」


 フェニル先生は教卓に腕を置き、笑いながら反対の手を振る。


「別に、見たくねえよーだ」


 ライアンは体操服を手に持ち、廊下に向かう。


「嘘つけ」


 パーズはライアンの後を追って教室の外に出た。


「着替えを覗くのは紳士じゃなさすぎる……」


 レオン王子も体操服を持って教室の外に出ていく。

 丁度、ミーナとメロア、スージア、サキア嬢が戻って来たので男女に分かれて体操服に着替えた。


「うぅ……、この中で、一番おっぱいが大きいのがフェニル先生なの、うざい」


 ミーナは胸に手を当てて、貧弱な姿を自覚する。


「はははっ、そんなのデカくても結婚出来なければ何の意味もないぞ! うぅ……」


 フェニル先生は自分の言葉に攻撃され、ダメージを負っていた。


「どれだけ胸が大きくても結婚しなかったら、ただの胸でしかありません。赤子のために使うのですから、大きかろうと小さかろうと、どちらでもいいと思いますよ」


 サキア嬢は普通にデカい乳を曝しながら私達ぺちゃんこ組に向って呟く。


「じゃあ、交換してよっ!」


 メロアは自分の貧弱な胸に手を当て、サキア嬢の豊満な胸を見ながら叫んだ。私だって交換してほしい。出来るのならな。


「こ、交換はできないかな……」


 サキア嬢も実際は大きな胸の方が良いと思っているに決まっている。小さな胸が三名に対し、大きな胸が二名。

 数的にはこちらが有利だが、多くの男が大きな胸を選ぶのは間違いない。貧乳派二割、巨乳派八割くらいの割合になるのではないだろうか。もっとひどい結果になるかもしれないが。


「はぁ……、今、胸が大きいとか小さいとか、言っている場合じゃない。あと少しで午後の講義が始まるから第一闘技場に向かおう」

「はぁーい……」


 メロアとミーナは気分を落ち込ませ、とぼとぼと歩く。


「もう、皆、元気出してくださいよ。今から楽しい運動の時間ですよ」


 サキア嬢は体操服を着ると胸がもっこりと膨らみ、お尻と括れのS字ラインが物凄く強調されていた。

 脚が長いのに健康的なむっちり感で、顔を太ももに挟みたいと思う者が続出しそうだ。


「あぁ~っ! もう、絶対走る!」


 メロアは真っ赤な髪を束ねてポニーテールにした後、廊下を早歩きで移動し、第一闘技場に向かった。

 男子はすでに着替え終わっており、見当たらなかった。全員、目的地に向かったのだろう。


 私達も生徒玄関を出て第一闘技場に移動する。

 コロッセオのような見た目の闘技場で午後の講義を受ける。


 ☆☆☆☆


「えー、皆、よく来たな。今から、戦闘訓練基礎の講義を始める。欠席者はいないようだな。結構結構」


 フェニル先生は私達の前に立ち、腕を組んで頷いていた。


「今日の講義は戦闘で最も大切な力を着けてもらう」

「戦闘で最も大切な力?」


 レオン王子は首をかしげながら呟いていた。


「才能でもなく、技術でもない。体力だ!」


 フェニル先生は脳筋みたいに発言。


「今日はとことん体力をつけてもらう。最初に全力で八分間走ってもらう。次の回の最初にも同じように八分間走ってもらう。その記録を確実に超えるように。越えなかったら減点とする。一八回ある講義をうければ今日の自分より結果的に一八倍強くなれるということだ!」


 フェニル先生は笑いながら滅茶苦茶な指導を叫ぶ。

 まあ、全力を超える訓練ならば、確かに合理的だが、毎回このような訓練を受けていたら身が持たない気がする。

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