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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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カプチーノ

 一年八組教室の生徒が全員そろったのは午前八時五〇分。

 一限目の算術の講義が始まる。

 私は得意な方なのでパパっと解けてしまうが、ミーナはぽけーっとしていた。

 基礎的な部分は出来ているのでもう少し考えさせれば自力で解けるはずだ。

 数学は理解しないとその後全然解けなくなる。だからこそ、初めは苦しんでもらった。暗記に頼らせず、理解するまで努力させると今日の講義の問題はすらすらと解けるようになっていた。


「あぁ、一限目から頭が疲れすぎたぁあ……」


 ミーナは机に額を当て、しおれた野菜のようになっていた。


「あの程度の問題でひいひい言っていたら今後がどうなるか見ものだね」


 スージアは眼鏡をぐっと上げ、ミーナに少々厳しいことを言う。まあ、確かにそうだな。


 二限目に魔法学基礎がまたもや入っていた。

キースさんが教室にやって来て、私達に魔法のことに付いて教えてくれる学問だ。

 ものすごく熱く語ってくれるが、魔法に興味がない者が聴くと眠たくなるような授業だった。生憎、皆魔法に興味があったので眠る者はいなかった。


「いやったぁ~っ、昼休みっ!」


 ミーナは特段元気になって体を大きく伸ばす。そのまま、食堂に向って走っていく。だが、彼女はお金を持っていない。


「あはは、張り切り過ぎて飛び出しちゃった」


 自分でお金を持っていないことを気が付いたのか、教室に戻ってくる。


「じゃあ、今日こそ食堂で料理を食べよう!」


 メロアはミーナの手を取って走っていく。どうやら、ミーナの食事代を奢ってあげるようだ。


 私はすぐに動き出す子供ではないため、大人ぶって教室で少し待っていた。


「なあ、レオン王子も一緒に食堂に行くか?」

「いいの!」


 レオン王子は椅子から勢いよく立ち上がった。


「な、なんだ、凄い食い付きだな。別に一緒に食事に行ってもいいだろ。王子は一人だけで食事しなければならないわけじゃあるまいし」

「あ、ああ。もちろんだ! 行こう!」


 ライアンとレオン王子はパーズと共に、男三人で食堂に向かった。


「じゃあ、僕も何か食べ物を買ってくるとするか」


 スージアは椅子からゆっくりと立ち上がる。


「じゃあ、私も何か食べ物を買ってこようかな」


 サキア嬢も立ち上がり、スージアに付いていく。あの二人は物凄く仲良しなので、お昼も一緒に過ごすようだ。


「はぁー、まあ、わかっていたけどさ、私は独りぼっち」


 教室で一人取り残された。自分から誘わなければこのような形になってしまう。行動を起こさなかった自分が悪い。仕方がないので、一人で食事にするとしよう。


「ベスパ、購買でパンを買ってきて」

「了解です。普通のパンでいいですか?」

「うん。ぺちゃんこのパンじゃなければ何でもいいよ」


 以前、レオン王子とイチャイチャしているうざい女と思われてしまったので、購買に顔を出しづらかった。そのため、ベスパに買ってきてもらう。

 ざっと八〇秒が経ち、教室にパンを持ったベスパがやってくる。


「お待たせいたしました。ぺちゃんこパンです」


 ベスパが持ってきたパンはぺちゃんこになったパンだった。なぜ、ぺちゃんこになったかと思えば、ベスパが私の姿になってパンを買ったからだそうだ。

 そういうところは頭が回らない。逆に、私をおちょくっている可能性すらある。


「まあ、いいや……。お腹に入れば全部一緒だし」


 私はぺちゃんこになったパンを頬張り、特に美味しいともまずいとも思わないパンをお腹の中に入れたら食事を終える。

 パン一個でお腹が満たされるなんて物凄く燃費がいい体だ。


「じゃあ、午後の戦闘学基礎の準備でもしようかな」


 私は体育のような授業があるので、体操服に着替えることにした。こんな広い場所で衣装を着替えるなんて物凄く偉い人になった気分だが、ただの学生、なんなら田舎の芋娘でしかない。

 誰かが入って来たら恥ずかしいので、ブラットディアたちに壁になってもらい、体を隠しながらさっさと着替える。

 着替えた姿は黒い短パンに白い半そでだ。パンダ、シマウマ、そこら辺の白黒に分かれた衣装で、特段変ではない。


「……ぺったんこだな」


 私は制服ならぎりぎり隠せていた平坦な胸が体操服を着ることによってより一層際立っていた。もう、髪を短くしたら男の子でも十分生活できてしまう。

 なにか上に羽織る品でも持ってこればよかった。まあ、身体で恥ずかしがっていたらこれからの生活はおくっていけないし、我慢しよう。


「えっと、戦闘学基礎はフェニル先生か。なにをさせられるんだろうなぁ。面倒臭いことはしたくないなぁ」


 私は昼休みが終わるまで、教室で昼寝することにした。

 教室はとても静か。窓を開けていると春風が吹いてくるため、ものすごく居心地がいい。

 高い山の静かな草原にいるような気分になる。ちょこっと騒いでいる者達の声が聞こえたりして普通に雑音もあるが、逆に新鮮で心地よい。


「はぁ~。昼寝に最高な場所だ」


 私はグーッと伸びて体を解し、目を開けると視線の先に立てロールが特徴的な超絶お嬢様の姿があった。


「ほんと、無駄に広い場所ですわね」

「な、なんで、ローティア嬢がここに……」

「なんでって、ちょっと遊びに来ただけですわ。あなたが、レオン王子と三年間でなんちゃらかんちゃらっていったんじゃありませんの。もちろん、その手伝いをしてくれるからわたくしとお友達になりたいなんてほざいたんじゃありませんの?」


 ローティア嬢は早口でまくし立ててくる。


「つまり、ローティア嬢の恋を手伝えと」

「こ、恋じゃありませんわ。愛ですわよ」

「もっと重かった……」


 私は八分程度の睡眠によりすっきりした頭で、ローティア嬢の状況を考える。とりあえず、彼女を椅子に座らせた。


「昼食は終えましたか?」

「朝に食べすぎて少量しか入らなかったわ」

「そうですか。じゃあ、珈琲でも飲みます?」

「珈琲? あんな苦い飲み物、ウトサが入っていないと飲めないわよ」

「じゃあ、牛乳が入った珈琲なら飲めますか?」

「あなた、牛乳を知っていますの? 田舎者の癖に」

「あはは、知っていると言うか、何と言うか」


 ――ベスパ、カロネさんから貰ったお茶セットと珈琲豆、牛乳を用意して。


「了解です」


 ベスパは私の部屋からお茶道具一式を持ってきた。


「では、ローティアさん。一杯、付き合っていただけますか?」

「ふん、仕方ないわね。私の舌をうならせられると思うなら、やってみなさい」


 ローティア嬢は腕を組み、大きな胸を張りながら、脚を組む。私の前だと大貴族というより、ものすごく我が強いお姉さんみたいな雰囲気になっていた。逆に、心の休息になるかもな。


 私は珈琲豆をコーヒーミルに入れ、ゴリゴリと削っていく。


「……なによ、芋娘にしては良い豆を使っているじゃない」

「わかりますか?」

「わたくしの鼻を舐めないでくださる。高級な品を嗅ぎ続けてきたこの鼻は誰にも騙されないわよ。美味しいと不味いくらいにおいでわかりますわ」

「ローティアさんが言う通り、良い豆を使っています」


 私はポットに魔法で生み出した水を入れ『ヒート』の魔法陣で沸騰させていく。その間に珈琲を抽出するためのろ紙やろうとを珈琲差しの上に組み合わせる。

 お湯が沸いたら、引いた珈琲豆をろ紙の上に乗せ、お湯を数回に分けて注いでいく。


 ――ベスパ、牛乳を細かくかき混ぜて泡立てておいて。


「了解しました」


 ベスパは牛乳瓶を開け、カップに取り出したあと、泡だて器のような小さな器具を使って牛乳の泡が立つくらい細かく撹拌してくれた。

 珈琲が抽出できたので、コーヒーカップに注ぐ。その後、珈琲の上に泡立てた牛乳を入れる。生クリームでもいいが牛乳の方が多く市販されているのでこちらを使った。


「完成しました。珈琲(カプチーノ)です」


 私はコーヒーカップをソーサーに乗せ、ローティア嬢の前に差し出した。


「ま、まあ、見た目はまあまあね」


 ローティア嬢はコーヒーカップを持ち上げ、においを嗅いだ後、口に含む。


「……な、なによ。美味しいじゃない」


 彼女は唇の上に白い髭を付けた状態で目を輝かせていた。どうやら、口に合ったようだ。


「よかったです。私の知り合いに王宮で働いていた女性がいてですね、その方が配合した珈琲豆を使っています。あと国王が好きと言っている本場の牛乳を使っているので、中々いい珈琲になっていますよ」

「あぁ、もう、泥水みたいな味がするって罵ってやろうと思っていたのに、こんな品を出されてしまっては罵れませんわ。もうっ!」


 ローティア嬢は手を叩く。すると、執事が教室に入ってきて、ケーキが沢山乗っているケーキタワーのような品が机の間に置かれた。そのまま、小皿とトング、フォークを二人分置かれる。


「し、仕方ないから、一緒に食べてもいいですわよ……」


 ローティア嬢はぼそっと呟いて珈琲を飲む。くぅ~っと顔を緩め、美味しそうに一服していた。


「こんなことをされてしまっては、私も答えないわけにはいきませんね」


 ――ベスパ、フルーファとフェンリルを連れてきて。


「りょ、了解です」


 ベスパは昼寝していたフルーファと食事を待っていたフェンリルを教室に連れてくる。


「きゃわわわわわわわわわ~っ!」


 ローティア嬢の周りにモフモフした黒いウォーウルフと白いフェンリルがチョコンと座り、撫で放題のドッグカフェ状態にしてあげた。


「こ、こんなことをしたって、わたくしは落ちたりしませんわよっ!」


 彼女はフルーファとフェンリルを舐めまわすように抱き着き、ものすごく楽しんでいた。

 私はローティア嬢が持ってきてくれたケーキを一口いただく。甘味がブワッと広がり、あまったるい。

 ものすごく高級品なのに、甘すぎてもったいないと思ってしまう。まあ、珈琲と飲んだら問題ないが、大量に摂取したら糖尿病まっしぐらだ。


「えへへへ、えへへへ~。もふもふですわ~。もふもふですわぁ~っ!」

「えっと、ローティア嬢、何かしに教室に来たんじゃありませんか?」

「……そ、そうでしたわ。あなたにレオン王子との間を取り持ってもらおうとお願いしに来たのですわ」


 ローティア嬢は冷静になり、椅子に座り直す。


「レオン王子との間を取り持つ。自分で頑張るのでは?」

「そ、そんな簡単にいきませんわ。わたくしにも大貴族の淑女という誇りがありますもの。王族が開催する茶会に行き、仲を深め結婚にたどりつきますの」

「それは普通なんですか……」


 私は普通の恋愛とローティア嬢の恋愛がかけ離れているとわかった。

 いや、こちらの世界の貴族の普通はローティア嬢の考えが正しいのかも。男尊女卑の世の中だし、女性の方からグイグイ行くのは違うのかな。

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