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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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学園生活

 目を覚ましたのは午前五時。まあまあ、早い目覚めだ。午後一二時近くに眠り、午前五時起きは少々寝不足気味だが、起きる時間は合わせた方が良いので起き上がる。服を着替えてフルーファの散歩に向かった。毎日散歩を続けていれば、朝起きる習慣が続き、その後の規則正しい生活のサイクルがしっかりと回る。つまり、早寝早起きが出来れば私の生活は安泰なのだ。計画を立てて生活してきたため、一気に寝不足になるとか、疲労困憊になる現象は滅多に起こらない。


「ふぐぐ~。いい朝だね~」

「俺は見殺しにされた主と一緒に散歩しないといけないのか……」


 フルーファは不貞腐れており、ブツブツと呟きながら私の隣を歩いていた。


「もう、ごめんって。そんなに怒らないでよ~」


 私はフルーファの顔を手で包み、笑顔を見せる。だが、体を大きく震わされ、距離を取られた。普通に嫌われてしまったかな。

 そう思っていたら、じわりじわりと近づいてくる。


「なに?」

「なんでも……。別に気にするな」


 フルーファの行動が疑問に思っても、内心まで知れるほどベスパの耳は高性能じゃないので、言葉だけしか伝わってこない。

 まあ、ものすごく嫌われているわけじゃないようだ。それだけでよかった。


 私はフルーファの散歩を終え、寮の裏庭で無詠唱魔法の練習と剣を縦に一八回振り、体を酷使する。剣を振るだけで体の筋肉を使うのだから筋トレと言っても過言じゃない。

 筋トレするのは苦手だが、何か別の目的と組み合わせたら勝手に体が出来上がってくれる。そういうふうにバレルさんから教わった。


「ふぅ……。いい感じだ」


 私は額の汗をぬぐう。懐中時計を開き、現在の時刻を確認。ざっと午前六時。起きてから一時間経っていた。周りを見ても、朝から起きている者は私一人。

 昨日はレオン王子が来ていたけれど、今日はいない。寝坊か、はたまた来ないようにしたか、どちらかだ。


「にしても、殺風景だなぁ」


 私は寮の裏庭の花壇がタダの土なのが物凄くもったいないと感じていた。この場が綺麗な草花でいっぱいになっていたら朝からもっと心休まる場所になるのに。自分で花を植えていいかもしれないが、良い種も持っていないし、今はしなくてもいいかなという気持ちになってしまい、手が付けられなかった。


 私は部屋に戻り、朝の勉強を始める。一時間集中して勉強するだけで、三時間適当にこなす勉強以上に覚えられる。

 朝の勉強は嫌いだが、この時間以外に勉強することはもっと効率が悪いと思うとやらざるを得ない。


「ふぐぐぐ~。仕事の代わりに勉強。そう思えば、ちょっとはマシかぁ……」


 懐中時計を見て一時間ピッタリに勉強を止める。運動着から制服に着替えた。


「今日は体操服でこなす講義があるんだよな。体操服を持っていかないと」


 私は動きやすい半そで短パンの服をトランクに入れておく。長袖長ズボンは少々暑い。

 髪型や講義の準備で一八分が過ぎていた。丁度いい休憩時間になっている。

 すぐに椅子に座り、もう一度一時間勉強。午前八時一八分ごろになったら、ミーナが起きて慌てて制服を着替え始めた。


「もう、キララ~、なんで、起こしてくれないの~」

「別に起こす必要がなかったからだよ。生き物は自然に眠って自然に起きるのが一番体にいいの」

「私、どれくらい眠ってた?」

「一〇時間くらいかな。これくらい眠った方がミーナにとっては体がしっかりと休まっている証拠だよ」

「なるほど。たしかに、毎回一〇時間眠ったくらいで起きるかも」

「ミーナの体は一〇時間眠らないと回復しない体なのかもしれないね。スキルの影響で普通の人の八倍眠らなくてよかったね」

「はは……、そうだね。三大欲求が全部八倍になっていたら死んじゃってたよ~」


 ミーナは笑いながら呟く。食欲旺盛なだけで、睡眠や性欲の方は普通だ。そのため、体のエネルギーとなる食べ物の枯渇だけが、スキルに大切な要素なのだろう。

 スキルは千差万別なので、一人一人しっかり把握する必要がある。そのためのドラグニティ魔法学園なわけだ。

 まあ、私のスキルは他に何がわかっていないか、わからないくらいの解像度だけれど、もっとすごい力が生まれるのだろうか。


 私はナメクジみたいに穴から出てくるベスパを見ながら、ないか……と普通にあきらめていた。今のままでも十分ありがたいスキルなので、これからも沢山使わせてもらおう。


 準備を終えたミーナと共に食堂に向かう。

朝食の料理をしっかりとお腹の中に入れて、やる気と元気を上げる。料理を食べるだけで力が沸いてくるから、人の体は不思議だ。


「うぉおお~、今日も一日頑張るぞ~っ!」


 ミーナは他の人の八倍近い量を食べ、周りを引かせている。まあ、それだけ食べても食費は変わらないので、沢山食べられるだけ食べた方がお得だ。

 案の定、メロアとローティア嬢は喧嘩しており、どちらが沢山食べられるか勝負していた。結局どちらもほぼ同じ量を食し、お腹一杯にして苦しがっている。


 フェニル先生がお腹を摩ると、両者のお腹の痛みは嘘のように消えていた。


 ――やっぱり、フェニル先生の力は便利だな。攻撃と耐久力、回復力が高すぎるでしょ。まあ、魔力をバカ食うと思うけど。


 私は一人分の食事を終え、ミーナとメロアの二人と一緒に一年八組の教室に歩いていく。


「はぁ~、ほんと最悪! なんで、朝からあんなダサい戦いしないといけないの!」


 メロアは赤い髪を燃やしているのかと思うほど魔力を毛先まで巡らせ、メラメラと浮かばせていた。


「メロアさんから誘っていた気がするけど……」


 メロアは自分で吹っ掛けておいて引き分けだったのがよっぽど悔しかったのか、頬を赤らめながら頬を膨らませ、づかづかと歩いていく。


「もう、メロア、そんな雰囲気で歩いていたら怖いよ~。笑顔笑顔~」


 ミーナは笑いながらメロアの前に立ち、尻尾を振っていた。


「はっはっはっ!」


 メロアの恐怖の笑顔が周りに向けられる。多くの生徒が引き、一部だけドーナツ化現象が起きていた。


「メロア、笑顔が下手なんだね」

「面白くもないのに笑えるわけない。と言うか、笑う必要がないし」


 メロアはツンとした表情のまま生徒玄関から園舎に入り、長い階段を走っていく。

 私は昇降機を使い、ミーナは階段で移動した。


「おはよう~! 今日も元気一杯のミーナだよっ!」


 ミーナは教室に入るや否や、両手を広げて、挨拶した。そんな元気よく挨拶できる生徒は中々いない。


「お、おはよう……」


 レオン王子もミーナの元気に押され、驚きを隠せていなかった。


「おお、元気がいいな。嫌いじゃないぜ」


 ライアンは屈託のない笑顔を浮かべ、ミーナに返事する。


「おはよう」


 パーズは何かを握りながら、ミーナに挨拶した。


「ん、パーズは何をにぎにぎしているの?」


 私と同じことを思ったのか、ミーナが近づいていく。


「これは、握力を鍛える道具だよ。この弾力のある球を力強く握って筋肉を収縮させるんだ」


 パーズが持っていたのは手の平ほどのゴムボールっぽい品だった。握力を鍛えるなら丁度良い訓練だ。


「ええ~。そのボールをにぎにぎするだけで、握力が鍛えられるの~! 私もやりたい!」

「別にいいけど、何回もしないと効果がないよ」

「わかった、何回もする」


 ミーナはボールを握り始める。だが、人間用の握力を鍛える道具なのだとしたら、ミーナが使ったら駄目だ。なんせ……。


「あ……。破裂した」


 ミーナが右手でボールを握ると、風船が割れるようなパンッという音すらせずに、ぐちゃっと千切れていた。

 中身が空洞じゃないボールだったらしく、もの凄い握力がないと形が変形しない。

 その玉を握力だけで変形させてしまったのだから、周りにいた人たちはドン引きだ。


「ご、ごめん。こ、壊しちゃった……」

「き、気にしないで。別に物凄く高い道具じゃないから。逆に壊れるんだって知れてよかったよ……」


 パーズはミーナを怒らせないように苦笑いしながら穏便に済ませる。ミーナに顔を握られたら、ぐちゃだ……。そういう恐怖の想像が容易く出来てしまう。


「おはようございます。今日も良い天気ですね」


 サキア嬢がスージアと一緒に部屋に入って来た。


「おはようございます。お二人は今日も一緒ですか? 昨日のパーティーの時も一緒に行動していましたよね。すでに仲良さそうで」


 私はサキア嬢とスージアに話し掛ける。


「ええ、もう、一番のお友達です。ねー、スージアさん」


 サキア嬢はスージアに抱き着き、微笑みを浮かべていた。可愛らしいのに結構大胆なんだな。


「あ、あんまり近づかないでください。困ります……」


 紫髪を耳に掛け、眼鏡をくいっと掛け直し、冷静さを保っているスージアはサキア嬢を手で押して離れさせる。


「もー、皆さんに仲良しだということをもっと知らせたいのに」

「訳が分からない。なぜ、俺じゃなくてスージアなんだ……」


 ライアンは両手を握り合わせ、おっぱいを押し付けられているスージアに睨みを利かせていた。


「さ、さぁ。スージア君に何かいい所があるってわかるんじゃない」


 パーズも出来るだけ笑顔でいるが、可愛らしい女の子が自分よりもカッコいい訳じゃない少年とイチャイチャしているところを見て嫉妬心が芽生えている。


「人には好みがあるから、サキアさんにしかわからないこともあるんだよ」

「そうはいってもなぁ。なんでパッとしないスージアなんだろうか……」


 ライアンはサキア嬢のもとに歩いていく。


「サキアさん、スージアのどこが良いんだ?」


 ――いや、そのままストレートに訊くの。凄い精神力だな。


「え~、どこって。この、陰湿な感じが良いじゃありませんか。なんか、落ちつきます。ライアンさんは暑苦しい感じがして苦手です」

「うぐっ!」


 ライアンはサキア嬢から普通に好かれていなかった。バッサリと切られ、戦意喪失し自分の席に戻る。まあ、ずっと渋っているより、はっきり言ってくれた方が案外親切だったりするか。


「はぁ、陰湿な感じなら、僕もちょっとは勝ち目があるかも」


 パーズは軽く陰湿な雰囲気を醸し出す。まあ、クール系イケメンみたいになっているので、ちょっと違うかも。

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