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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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服装に見合った相手

 ベスパはレクーとファニーの後を追った。

 多くの部活動紹介が行われ、運動部の紹介が終わった。

 文化部の紹介が始まり魔法研究部や薬物研究部、錬金術部など、あぁー、なんか高度な部活ばかりだなぁと思う文化部ばかりで私が望んでいた部活は一つとしてなかった。


 ――ちょ、か、家庭科部とかないの?


 まあ、皆貴族だし、料理なんて作る気ないか。家庭科部なんて需要がないんだろうな。だって、皆執事やメイドにやらせるんでしょ。ほんと最近の若い子達は。私も最近の若い子だけど。


「うーん、どうしよう。モクル先輩がいる武術部も楽しそうだし、パット先輩がいる剣術部も楽しそう。運動のどれもこれも楽しそう過ぎて困っちゃう」


 ミーナは運動が大得意だ。なんなら、どの部活に入っても一定の活躍ができる。スキルで身体能力を八倍に出来るのだから、他の者の追随を許さない勢いで勝てると思われる。

 相手の方が心配になるくらい力の差が離れていると逆に面白くない気もするけどな。


「はぁ~、全部兼部しちゃおうかな~」


 ミーナは頭を抱えながらウンウンと唸って部活を考えていた。


「えー、各部活の部長さん、ありがとうございました。では、文化部の吹奏楽部より演奏会をお楽しみください。この最中でも会話や食事を止める必要はありませんから、好きにお過ごしください」


 進行役はパーティーの演目を進め、吹奏楽部の演奏が始まる。やはり音楽はどこの世界も共通して持っている文化なのか、どこか地球と近しい気がする。落ち着くクラシック系の音楽でパーティー感がグッと増した。


「じゃあ、ミーナ。私達も他の人と話に行こうか。目標は友達一人を作ること。出来なくても仕方がないし、努力することに意味があるからね」

「うん! 頑張って友達を作ろう!」


 ミーナの眠気は軽く飛んでいた。美味しい料理を食べまくってやる気も上がっている。

 私も友達を作る気満々で、近くにいた女子に話し掛けて行った。


 結果……、


「ざ、惨敗……」


 私は長テーブルに手の平を当て、目の前にある美味しそうな肉を眺める。


「キララ様、やはり田舎者は王都だと浮くようですね」


 ベスパは細かく切られたゴンリが乗ったパイを食しており、自分だけ楽しんでいた。


「うぅ、同じ田舎者のミーナは普通に話せているのに、なぜ私は」

「キララ様は営業のような話し方で行くから相手が警戒するのではありませんか?」

「そう言われても私に普通の会話なんて出来ないのだけど。初対面の相手は職業柄相手を立てるような話し方しかできないよ」

「まあ、もっと肩の力を抜いて。こんばんは、今日は良い思い出を作りましょうね。くらいでいいんじゃありませんかね?」


 ベスパは乙女のような声を出し、翅を鳴らしながらいう。


「そ、そんなんでいいの? こんばんは~。初めまして、私の名前はキララといいます。お時間よろしいでしょうか。とかじゃ駄目?」

「もう、そんなの街で行われている詐欺紛いな売りつけと同じじゃありませんか」

「う……、そうかもしれない」


 私は今まで詐欺師だと思われていたのだろうか。とりあえず、ベスパにいわれた通り、女子に話しかけてみるか。


 私はまだ話しかけていない女子に声を掛けることにした。


「こんばんは~」


 私は満面の笑みを浮かべ、周りの豪華な衣装を見た後では少々見劣りするドレスを着ている少女に話しかける。


「こ、こんばんは……。えっと、その、すみませんっ!」


 私に話しかけられた少女は私に頭を下げて全力で離れて行った。


「わ、私、普通に挨拶しただけなのに」


 私は溜息をつき、いったん水を飲んで休憩する。すると、声が聞こえてきた。


「見て、あの芋女。自分は芋の癖に、衣装は大貴族並に良い服を着ているわ。何、いい気になっているのかしら。ちょっと可愛いからってあぁー、憎たらしい」

「ほんとよ。私の方が、位が上なのに、なんで芋女があんないい服を着ているのかしら。何か裏があるに決まっているわ。きっと盗んだ品なのよ」

「まあー、盗みをするなど泥棒がすることですわ。あんな子がドラグニティ魔法学園に入れるなんておかしいじゃない。絶対顏が良いから入れたんだわ。学園側が裏口入学を許したのよ。私でさえちゃんとお勉強して合格したのに」


 私より服の質が落ちている者達は三から四人で集まってヒソヒソ話していた。もしかすると、私が貰った服の質が良すぎるから話し相手にされていないとかある?

 でも、服の見た目は似ていると思うけどなぁ。カイリさんだってわかっているはずなのに。


「キララ様、どうやら、衣装がキララ様の汗を吸って質が良い生地になっているようです。魔力がふんだんに含まれた生地ですから、高級品と言っても差し支えありません」

「な、なるほど。私の魔力のせいか……」


 私の着ていたドレスは周りの小級貴族や中級貴族が着ているような質素で綺麗なドレスだ。

 だが、私のキラキラ輝く魔力のせいで、布地が大変煌びやかになっている。もう、大貴族が着ているドレスのようで周りから痛い奴認定されていた。


「こ、こりゃ、服を着替えた方が良いかもしれん。ベスパ、ドレスってすぐに作れる?」

「作れますが、同じ結果になると思いますよ。結局魔力を吸って質が上がるので、また毛嫌いされてしまうかと思われます」

「そうか。じゃあ、どうしたら……」

「キララ様がその衣装を着るにふさわしい人物であると周りに知らしめたらどうですか?」

「私がこの衣装を着るにふさわしい人物。どうやって?」

「それはですね……」


 ベスパは私にごにょごにょと頭の中に話しかけてきた。


「なるほど。でも、失敗したらもっと嫌われるんじゃ……」

「今でも嫌われているのですから、気にする必要ありませんよ」


 ベスパは酷いことを笑いながら言う。こいつの性格は私と似ているので、こんな悪い奴なのかと誤認する羽目になった。


「はぁ……、まあ、やらないよりはマシか」


 私はまたもや水をグイッと飲みほして、一息入れる。

 その後、ブラウン色の長めの髪を手櫛で解し、魔力を纏わせて色艶をさらにあげる。

 逆張りの煌びやかな私になり、村娘なのにキラキラし過ぎじゃないかという作戦に出る。


 ――ここはドラグニティ魔法学園の中。つまり、貴族の位による上下関係は無い。まあ、暗黙の了解ではあるのかもしれないけど、私は村娘だし、他の貴族から何を言われようが関係ないね。


 私が狙いを定めたのは一人で優雅に食事しているローティア嬢だった。まだ友達になれていないので、彼女と友達になれればこのパーティーでの目的は達成されたも同然だ。


「な、なんだ、あの女子。大貴族にあんな子いたか?」

「い、いや、見た覚えがない。というか、あんなに可愛い子、貴族のパーティーでも見た覚えがないぞ」

「な……、じゃあ、平民ってことかよ。たく、可愛いと思って損したぜ」

「あぁ、だ、だが、なんと神々しい」

「うぅ、まぁ、確かにいわれて見れば神々しいかもな」


 男子の二名がヒソヒソ話していたので、そちら側に顔を向け、にっこりと笑顔をうかべ、軽くお辞儀する。


「ぐふっ!」


 男子二名は長テーブルに背中をもたれさせ、腰を抜かしていた。

 キラキラオーラ全開で、周りの者に文句を言わせるまでもなく、ただただ食事をとっているローティア嬢のもとに向かう。

 なんせ、彼女の周りにも誰もいなかったのだ。

 そもそも、ローティア嬢が友達を作る気ゼロなので、周りの中貴族と小貴族の者達は話し掛けられてすらいない。

 まあ、何か機嫌を損ねれば、家を潰されかねないのだろう。残念ながら、私の潰される家はおんぼろな家だ。潰されたらまた建てればいい。こちとら、木材さえあれば、いくらでも家が建てられるんでね。


「こんばんは、ローティアさん」

「あら、芋娘。私に何か用かしら?」


 ローティア嬢は自慢のたてがみロールを右手で弄りながら、私に鋭い視線を見せてくる。

 彼女の衣装はさすが大貴族というべきか、宝石がちりばめられ、悪趣味なドリミア教会のバートン車並みに煌びやかだ。

 でも、悪趣味ではなく計算された宝石のちりばめ方。光りを反射し白や黄色、赤色の光る宝石が藍色っぽい暗い色の布地に星空のようにちりばめられた超高級ドレスを着ている。

 彼女の雰囲気は後光が差しているように明るい。まあ、上を見れば光が強いシャンデリアのような照明があったので、光を上手いこと利用している。だから、この場に座っていたのだろう。


「いえ、特に用はありませんが、私と友達になってくれないかなと思いまして」

「へぇー、芋娘は本当に恐れしらずなのね。わたくしはあなたがどれだけ頑張ろうと絶対にたどりつけない地位にいますわ。よく話しかけられたわね」


 ローティア嬢は体を横にして長い脚を組み、ドレスと同じ藍色のつやつや靴を見せてくる。


「この靴、いくらかわかる?」

「そうですねー。ざっと、金貨八〇〇枚ということろでしょうか」

「あら、見る目はあるのね。舐めてもいいわよ。まあ、そうしたら、捨てるけど」


 ローティア嬢のお家は大変お金持ちのようだ。まあ、相手は大貴族。広い土地を持ち、多くの者から税金をがっぽがっぽもらえるだろう。生活しているだけで収入が入ってくるのか。それなりに苦労はあるだろうけど。


「そんな冗談いわないでくださいよ。でも、磨けばもっと綺麗になりますよ」


 私はアラーネアのネアちゃんが作ったハンカチを取り出し、魔力を塗り手繰るように靴を擦る。すると、自ら光を発するくらい輝いている藍色の靴が現れた。


「……何をしたの」


 ローティア嬢は元から強い眼力をさらに強めてくる。超可愛い顏なのに、目力がある表情の差がすごい。


「靴の上に私の魔力を塗りました。先ほどよりも光っていてローティアさんの雰囲気に合っていますよ」

「ふん、ただの芋娘にいわれても特に嬉しくないわ。でも、靴を金貨一〇〇〇枚ほどの価値に上げてくれたから、一緒に食事することを特別に許してあげる」


 ローティア嬢は脚を元に戻し、長テーブルの方を向いて完璧な作法で肉料理を食べていた。


「ありがとうございます」


 私はどうやらローティア嬢に軽く気に入られたようだ。


「ほんと、キララ様は位が上の方にへつらうのが上手ですよね。女王様なのに……」


 ベスパは少々不貞腐れていた。ベスパにとって私はこの世で最も位が高い人間なのだ。まあ、虫達に取って私が女王ということ。他の人間にとってそんなことどうでもいい。

 だって、ライオンが動物界の王様だから、人間界で同じように王様気どりでいられる訳じゃない。奴らだって人間に媚を売って動物園でまったり暮らしている。


「失礼します」


 私は左側から椅子に座り、緊張から味がしない肉料理を食す。ただの栄養補給に過ぎない。もったいないが、今は友達を作ることを優先しなくては。

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