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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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部活動紹介

「まず、生徒会長からの挨拶から始まり、各部活の話、楽器による演奏会、食事の最中にダンス大会などもございますからぜひ参加してください。では、ドラグニティ魔法学園現生徒会長、リーファ・クウォータさん。よろしくお願いします」


 進行役はリーファさんに魔道具を渡した。リーファさんは緑色のドレスを身に纏い、とても美しかった。やはり、スタイルが良いとドレスもよく似合う。黄色の髪がつやつやでどれだけ手入れしているのか想像もつかない。


「皆さん、こんばんは。初めての登園はどうでしたか? ドラグニティ魔法学園で初めて会った生徒と友達になれましたか? まあ、初等部から上がった者同士で友達の者は多いかもしれませんが、ぜひ、新しい友達を作ってください。それだけで知見が広がります。知らない人と話すのは難しいかもしれません。でも、そこに意味があると私は思います」


 リーファさんは魔道具に声を出し、会場に声を届ける。


「今日はささやかなパーティーですが、ぜひ、楽しんでください。そしてこのパーティーで友達を一人は作ってください。それだけで学園の生活はより一層楽しく豊かになります。今日、この瞬間を頑張れば残りの三年間は心配せずとも問題ありません。今日頑張れる者は明日も頑張れる。その次の日も、また次の日も。逆もしかり。ですから、今日、頑張ってください。私も新しい友達を探そうと思います」


 リーファさんは上手いことを言い、頭を下げて魔道具をトッチさんに渡す。


「生徒会長、ありがとうございました。私も二年前、このパーティーで生徒会長と知り合い、お友達になったからここまで頑張ってこられました。皆さんもたった一人で構わないので、友達を作ってくださいね。では、続いて各部活の紹介に移ります」


 進行役は垂れ幕の方に視線を送る。赤い垂れ幕は他の生徒によって上げられ、各部活の部長と思われる先輩たちが立っていた。


「えー、私達はドラグニティ魔法学園を背負って立つ者です。多くの者が初めは戸惑うと思いますが、どの部活に入っても損はしません。私達と一緒に熱い三年間にしましょう。今から各部活の紹介に入ります」


 進行役以外の生徒会の者が部活の部長たちに話を振っていく。ほんと、部活動紹介そのものだ。


「新入生の皆さん、初めまして。武術部部長のモクルと言います。武術部は三年、二年の男女合わせて一八名ほどが所属しており、各自の体を鍛え、武術を極めていく部活です。体が弱い方、勉強しかしてこなかった方、実技でもいい成績が取りたい方はぜひ武術部の方に足を運んでください」


 冒険者女子寮三年のモクルさんは部長だった。まあ、豪快ながら、案外他の者を気づかえる良い先輩なので部長に抜擢されるのも無理はないか。


「えっと、一年生の皆さん、はじめまして。剣術部部長のパットといいます。私達、剣術部はドラグニティ魔法学園が建てられた当初からある長い伝統を持ち、部活の中で二番目に多い、五八名の生徒がいます。主に剣の神髄に達することを目的とし、剣術の高みを目指す者達が集まっていますから剣に自信のある者、また剣術が苦手で上手くなりたい方はぜひ部活を見に来てください」


 パットさんも部長だった。寮長と部長の掛け持ちは大変だろうな。押し付けられたのかもしれないけど。


 ドラグニティ魔法学園の部活は運動部が多かった。槍術部、弓術部はもちろん、盾術部とか、魔法術部とか様々な部活があり、その多くが優秀な成績を納め、他の学園の追随を許さない状況だという。まあ、優秀な者達が集まれば部活も必然と優秀になるか。


「えっと、乗バートン部の部長が体調不良のため、代わりに副部長の私が話します」


 乗バートン部である、リーファさんは魔道具を持ち、指笛を吹いた。

 すると、手入れされて美しい白いバートンが上段を走り、リーファさんの元に向かう。

 リーファさんはファニーの上にドレス姿で容易く飛び乗り、高い位置で話し始める。


「えー、皆さん。改めましてリーファです。私は乗バートン部に所属しており、国際大会で優秀な成績を納めました。この子は私の相棒のファニーです。とても大人しい子で、争いごとは好みません。ですが、ものすごく優雅に走ります。この子と二年間充実した日々を送ってきました」


 リーファさんはファニーの背中に乗った状態で会場を優雅に移動する。ファニーの歩き姿はブレがなく、レッドカーペットを歩くハリウッドスター並の輝きを放っている。


「今後、多くの方がバートンに乗られると思います。質のいい歩き方や美しい見せ方など、貴族の必須事項となってくるでしょう。乗バートン部に入れば、皆さんの腕が上がるのは間違いありません。これからの生活に必要な力をぜひ一緒に付けていきましょう」


 リーファさんは部活の勧誘を完璧にやり遂げた。やはり優秀な人だ。

 部活で乗バートンが上手くなれば今後の生活で役に立つなんていわれたら貴族は入りたくなって仕方がないだろう。


 リーファさんはファニーから降りる。そのまま、ファニーの手綱を持ち、魔道具を緊張しきっているマルティさんに渡した。


「は、は、初めまして。えっと、バートン術部の部長を勝手にしていますマルティです。バートン術部は現在、僕と兼部してくれているリーファさんしかいません。ですから、はっきり言うと部活じゃありません。あと二名で部活として正式に活動できるようになります。他の部活との兼部でも構いません。ぜひ、僕達と一緒に武神祭バートン術の部門で優勝しましょう」


 マルティさんは顏を赤くしながら全力で声を出す。そんな姿を見ているリーファさんの顔はどこか微笑んでいた。幼馴染が頑張っている姿をみて心が熱くなっているのかもしれない。


「えっと、この会場は直線が長いので、ぜひ、バートン術の激しさと熱さを見てもらいたいと思います」


 マルティさんは指笛を吹き、バートンを呼ぶ。だが、バートンが来ない。


「ちょ、イカロス、なにしているの!」


 ファニーは幕の奥にいるであろう黒いバートンの名前を呼んだ。

 マルティさんはもう一度指笛を吹くが恥ずかしがりというか、上がり症のイカロスは来ない。


「もうっ!」


 ファニーは左の幕に走り、イカロスの尻尾を咥えて引っ張りだしてきた。


「む、無理無理、人が多すぎる」


 イカロスはいつもならおらおらしているのに、多くの人がいると上がってしまって本来の実力を出せない可哀そうな子だ。


「うるさい。そんな、尻を引っ込めるような面持ちだから情けなく見えるのよ!」


 ファニーはイカロスの尻尾を無理引っ張り、マルティさんの前に持って来た。そんな姿を見て、多くの者達は笑っていた。まあ、漫才みたいなもんだから、面白く見えても仕方がない。


「イカロス、落ちついて。ただ真っ直ぐ走ればいいだけだよ。それならできるでしょ」

「む、無理、無理だって。こんなに人がいたら、走れないって」


 イカロスはマルティさんの後ろに隠れてしまう。空気が重くなり、進行が滞る。部活動紹介で長い時間を使う訳にはいかないのだ。


 ――仕方ない、助け船を出すか。ベスパ、会場の後ろ扉を開けてくれる。


「了解です」


 ベスパは前方と反対側の扉の鍵を開ける。

 私は後ろ扉の前に立ち、お爺ちゃんから貰ったバートン笛を吹いた。ベスパの誘導で建物を壊さずに後ろ扉に真っ白なバートンが姿を現す。


「きゃぁああ~っ! レクー様っ!」


 ファニーの瞳はレクーを見て一瞬でハートになり、リーファさんの手を離れて真ん中の通路を駆けながらレクーに擦りつく。


「キララさん、僕はなぜ呼ばれたんでしょう……」


 レクーは困惑しながら私に訊いてきた。


「まあ、そこに立って、ファニーとイチャイチャしていればそれでいいよ」

「えぇ……。じゃあ、えっと、ファニーさん、今日はとても綺麗ですね」


 レクーはファニーに首を擦りつけ、口説き出した。


「あぁ、レクー様ぁ~」


 ファニーは完全に落ちており、このままではレクーとくっ付いてしまう。


「あ、あの野郎……。俺のファニーをよくも」


 イカロスは怒りによって恐怖心を消した。そのまま、私達の方に睨みを利かせてくる。


「イカロス、走れる?」

「ああ、あいつにファニーをとられるのだけは絶対に嫌だぜ!」


 イカロスは真っ黒な体を堂々と周りの生徒に見せる。彼の瞳に映るのは最愛のファニーと恋敵のレクーだけ。周りの生徒は眼中に入っていない。そのため、羞恥心をかき消せたのだろう。

 マルティさんはイカロスの背中に乗り、手綱と杖を持つ。


「はっ!」


 マルティさんが手綱を靡かせると、イカロスは前足を大きく持ち上げた。そのまま、勢いよく走り出し、上段を飛び出す。

 床が割れるんじゃないかと思うほどの勢いで着地し、周りの者の目を引くほど勢いよく走る。そのまま、私達のもとに向って駆けてくるがリーファさんが多くの障害物を魔法で出現させた。

 ジグザグに配置された棒や高い台。坂道などを直線状に作り出し、それを華麗に攻略していく。

 短いが迫力は伝わるはずだ。最後に大きなハードルが生み出された。高さ三メートルほどあり、普通のバートンは簡単に越えられない。


「『キャリーボワード』」


 マルティさんの詠唱によって一段の足場が生まれた。


「はぁあっ!」


 イカロスは前足で足場を踏み、大きく跳躍。後ろ脚で体を持ち上げ、三メートルのハードルを飛び越え、レクーとファニーの間に入り込む。


「はぁ、はぁ、はぁ。よ、よっしゃ……」


 イカロスは息を荒げ、ファニーの方を見る。


「はぁ、まあ、よく頑張りました」


 ファニーはレクーと離され、ご機嫌斜めだがイカロスの頑張りをしっかりと褒めた。


「えっと、今のがバートン術です。興味を持った方がいたら、ぜひ部室にお越しください。ほぼ毎日練習しています。どうか、よろしくお願いします!」


 マルティさんは最後までやり切り、頭を下げた。

 すると、リーファさんが涙目になってぱちぱちと大きく拍手する。すると、他の生徒も大きく拍手してマルティさんとイカロスの頑張りを褒めたたえた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 マルティさんは満面の笑みを浮かべ、腰を九十度曲げながら頭を深々と下げる。イカロスと共に裏出口から出て行った。


「レクー、ファニーをエスコートしながら外に出てくれる」

「わ、わかりました。じゃあ、行こうかファニーさん」


 レクーは扉を軽く押さえながらファニーに声をかける。


「はわわ……、はいぃ~」


 ファニーはレクーに寄り添いながら会場の外に出ていく。


「ディア、床に付いた足跡やゴミを一瞬で食べて綺麗にして。ベスパはレクーを厩舎にファニーをリーファさんのもとに移動させて」

「わかりました!」

「了解です」


 ディアは床を一瞬で駆けまわり、土や食べこぼしなどを一瞬で片付ける。

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