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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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新入生歓迎会

「うぅ……」


 ミーナは眩暈がしたのか、視界がぐらついた。すると、ビー達が私に糸をくっ付け、引っ張った。ミーナの手が地面に当たると地面が窪み、辺りに地割れが生じる。


「な、なにこれ。限界の限界にいる感じ。頭が、ぼやっとする……」


 ミーナはゆっくりと立ち上がる。


「み、ミーナ、落ちついて。そのまま座っていて」

「す、座っていられなから立ったんだよ。す、少しでも動かないと、体がどうにかなっちゃいそう……」


 ミーナは、ずしん、ずしんと地響きを起こしているのかと思うほど力強く歩き、一歩踏み出すだけで、地面を簡単に陥没させている。


「ベスパ、ミーナが暴れると危ないから空中に浮かせて」

「そうですね」


 ベスパはミーナの体にグルグルと回り、ネアちゃんの糸を巻き付けて空中に浮きあがった。


「ううぅ、おらあっ!」


 ミーナが拳を振るうと、強烈な突風が吹き、小さな竜巻が起こった。魔法でも竜巻を起こすのは上級魔法の類だ。ミーナは物理で上級魔法を使ってしまったと言っても過言じゃない。あんな一撃を食らえば、体はひとたまりも無いな。


 ――ベスパ、危険な方法を教えてくれたね。安全性皆無じゃん。


「いやぁ、効率重視なら、これが最も効率が良い方法だと思ったんですよ。でも、安全性がないと訓練してはいけませんね」


 ベスパは笑いながら翅を羽ばたかせていた。


「当たり前でしょ……」


 私はベスパを燃やしてやろうかと思ったが、今ベスパを燃やしたら、ミーナまで燃えてしまう。


「うぅーん、この出そうで出ない感じ、うざいっ!」


 ミーナは脚を振り上げ、ブオンッという大きな音を出しながら風の刃を放つ。どうやら、ミーナの足先は音速を超えていたらしい。音速を超えていないと音は出ないのだ。


「はは、凄い威力……。魔法じゃないからディアやクロクマさんで対処できない……」


 ミーナは魔法ではなく物理で魔法のような現象を引き起こしていた。そんなことされたら、魔法耐性がある者が無意味になってしまうじゃないか。まあ、物理耐性がある魔物はどれだけ頑張っても倒せないけど。

 私は、ミーナの凄さを改めて実感した。こりゃ、八組に来るよな。


 ミーナは蜘蛛に捕まって藻掻く虫のように大量に動いており、力を必死に発散していた。少しすると、穏やかになっていき、体から発せられていた雰囲気は消える。


「ミーナ、お疲れ様。どう、魔力を感じ取れた?」

「う、うーん。キララの暖かい魔力はわかったけど、私の魔力がどんななのか、いまいちよくわからない」


 ミーナは胸に手を当て、魔力を感じ取ろうとしているが中々うまくいかない。まあ、一日で上手くいったら誰も苦労しないか。


「ミーナ、一〇〇〇日掛かる道のりも一歩目から始まるんだよ。ミーナは確実に結果に近づいた。それだけは事実でしょ。これからも一緒に頑張ろう!」

「うぅ……、ありがとう、キララ。私のためにそこまでしてくれて」


 ミーナは眼元に腕を持って行き、涙をぬぐう。魔法が使えないでドラグニティ魔法学園に入学したのだから、魔法を使えるようになって卒業したいと思うのも必然だろう。努力なら誰でもできる。でも、継続は誰もが出来るわけではない。

 私は継続が得意だから、飽き性なミーナもしっかりと巻き込んで共に強くなってやろうと思った。友達のミーナがどこかでぽっくりと死なれたら寝覚めが悪い。

 私とミーナは午後の講義が無いのをいいことに日が落ちるまで訓練し、大量の汗をかいた状態で新入生歓迎会の準備をする羽目になった。


「はぁ、はぁ。一回お風呂に入ろう。こんな、汗ベタベタの状態でパーティーに行けないよ」

「そうだね。さすがに臭いかも……」


 ミーナは体のにおいをかぎ、頬を引きつらせる。

 きっと私も臭くなっていると思うから、お風呂に早く入りたい。


「キララは全然臭くないのが不思議だね。舐めとりたいくらい良い匂いがする」


 ミーナはフラフラーと寄ってくる。彼女は魔力が枯渇しているから、魔力が汗にまでにじみ出る私に引き寄せられているのだろう。


「み、ミーナ、落ちついて。私から出ている汗は普通の汗で汚いから。そんな下品なことをしたら普通に捕まえるからね」


 私はミーナから距離を取り、服を脱いで風呂場に入る。

 シャワーで汗をしっかりと流してからお風呂に浸かり、体を温めた。


「ふぅ、これで大丈夫……」


 私は、お風呂からミーナの方を見る。

 すると、ミーナは疲れからぶっ倒れていた。どうやら、限界が来たらしい。


「うぅ。世界が回って見える……」


 ミーナは疲れから幻覚まで見ているようだ。さすがにパーティーに参加させるのは厳しいか。でも、このまま参加しなかったら、ミーナは彼氏が一生できないかもしれない。きっとただの噂だけど……。

 それでも、可能性が生まれてしまうのは危険だ。なにがなんでもミーナをパーティーに行かせないと。パーティーに参加すれば何ら問題ないはず。


 私はミーナの体にシャワーを掛ける。凍ったマグロに水を掛けて、さらに凍らせるような感覚に陥った。


「ミーナ、私が色々準備してあげるから、その間に眠っときな」

「わ、わかったぁ。よろしく……」


 ミーナはスーッと眠りに入り、すぐに寝落ちした。あまりにも早い入眠は気絶とほぼ変わらない。


「って、そんなことを考えている場合じゃない。ベスパ、ミーナの体を拭いて、服を着させて部屋に運ぶよ」

「了解です」


 ベスパはミーナの体を持ち上げ、脱衣所に移動し、他のビー達が体を綺麗に拭いていった。

 私はその間に彼女の髪と尻尾を『ヒート』と『ウィンド』で乾かした。ベスパがミーナに服を着せ、共に八号室に向かう。


「あれ、キララ。まだ、準備していないの?」


 食堂にいたメロアはすでにドレスを着ていた。準備が早いんだな。今日、遅刻しかけてたのに……。


「ちょ、ちょっとね。必ず行くから先に行って待っていてください」

「う、うん。わかった」


 メロアは首をかしげながら、私達の姿を見ていた。


 私とミーナは八号室に戻って来てドレスを棚から取り出す。

 ミーナの方はベスパに着つけを頼み、私は私でドレスを身に纏う。カイリさんがくれたドレスなので、超高級品。もう、金貨何枚分だよという服なので子供のころしか着られないのがもったいない品だ。

 黄色っぽい布地で、ふわふわなレースが何枚も縫い付けられており、お姫様になった気分。

 髪をネアちゃんに整えてもらい、しっかりと決める。黄色っぽい花の髪飾りを頭につけ、首にフロックさんが貸してくれたネックレスをかける。

 鎖骨が少々見えすぎな気もするが、これくらい普通か。

 私はドレスを着た状態で姿見の前に立つ。しっかりと着付できており、問題ない。少し高いヒールを履き、姿を高く見せる。それだけで大人っぽく見えるはずだ。


 ミーナの方もほぼ着付が終わっていた。ひざ下までスカートがあり、卑猥ではない普通のドレス。銀色っぽいので、ミーナの髪とよく合っていた。

 ミーナは未だに眠っている。立った状態なのによく眠れるなと思いながら、一緒に会場に向かった時間は午後六時五五分。走っても間に合わない。

 私はブラットディアが集まった板の上に乗り、動く床に乗っているような感覚で移動した。こっちのほうが走るより速い。


 パーティー会場は広い会館で、多くの者が着飾っており、燕尾服とドレスの者ばかり。さすがに制服で参加している者はいなかった。ほとんどが貴族だから当たり前か。


「ミーナ、ミーナ、起きて。もう、パーティーが始まるよ」


 私は会館の中に入り、ミーナをゆすって起こす。


「う、うぅん。おはよう。お腹空いた……」


 ミーナはあくびしてお腹を摩る。


「お腹が空いたのなら、もう少しまってね。あと少しで食べられるようになるから」


 私は懐中時計を開く。時刻は午後六時五八分。ディアのおかげで時短できたから何とか間に合った。


「一年生の皆さん、大広間の方にお入りください」


 司会役の方だろうか。女性の者が私達に声をかけ、大きな扉を開く。奥にずらーっと見えるのは長テーブルの整列した姿だった。多くの料理が並んでおり、ビュッフェやバイキング料理の形式に似ている。


「ささ。料理が食べ放題、飲み物は飲み放題。いくらでも食べて飲んで、楽しんでください。もちろん、多くの者と話して仲を深めるのもいいですよ」


 司会者が声を出すと、待っていた一年生たちは小走りになり、良い位置に付こうと努力し始める。良い位置がどこか私にはわからないが、王子や大貴族と話しやすい場所が良い場所だろう。上座のすぐ近くとかかな? じゃあ、私とミーナは一番遠い下座に行くか。


 パーティー会場の後ろ側奥に移動した。多くの者がおらず、逆に目立っているように見える。


「キララ、なんで前の方に行かないの?」

「皆、貴族でしょ。私達は貴族じゃないから少し離れた場所でもいいかなと思って」

「なるほどね。確かに、貴族ばかりがいたら嫌だもんね」


 ミーナは歩き出すが、足下がおぼつかない。


「うぅ、この踵が無駄に高い靴、歩きにくいよ……」


 ミーナはヒールを指さす。私だってヒールを履きたくないが、多くの者が履いているから仕方がない。


「つま先立ちを意識して足裏全体で体を支える感じになれば、歩きやすいよ。踵から歩こうとすると歩きにくいからつま先から歩くように意識して」

「こんなんじゃ、全力疾走できない……」

「まあ、走らないといけない時はヒールを脱ぐしかないね」


 私達は多くの一年生たちが会場に入るのを見届けた。まあ、私達の方が遅かったので皆が定位置を探す姿を見ていたという方が正しいか。

 午後七時になり、司会進行役の方が話し始めた。どうも大人っぽくないので生徒会の役員だろう。


「では皆さん、午後七時になりました。今から、新入生歓迎会を始めたいと思います」


 進行役の女性は声を広げ、会場にいる多くの生徒に話を届ける。とても元気で声が通る良い声質だった。だから、進行役に選ばれたのだろう。魔道具を持ち、良い声を辺りに広げるている。声を増幅しているのかな。

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