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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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昼休みに訓練

 メロアとレオン王子は吹き出して笑った。お腹を押さえ、息が苦しそうに笑っている。そんなに面白かっただろうか。二人の笑いのツボが浅いのかも。どちらにしろ暗い空気だったのが、笑ったおかげで大変和やかになった。


「も、もうええわって。もうええわって……」


 メロアは机をどんどんと叩きながら笑っている。私の突っ込みの切れが良かったからこそ、ここまで笑ってもらえたんだな。


「はぁ~。笑った。笑っちゃった。もう、ベスパって面白いね。私もこんな友達が欲しかった」


 メロアは涙をぬぐい、そのまま、ベスパを見る。


「おほめにあずかり恐縮でございます。どれもこれも、キララ様の熱心なる指導のおかげです」


 私は一切指導などしていないのだが。ベスパが勝手にしているだけなのに。


「ベスパってこんなに賢いんだ。凄いなー。ビーが賢いってこと?」


 レオン王子は私に向って訊いてくる。


「えっと、ベスパが賢いんです。私がもう一人いるみたいな感じなです。でも、ベスパはビーと繋がれるので思考が物凄く早いです」

「へぇー。弱いスキルだけど、こんな効果がついていたら楽しいね」


 レオン王子は微笑みながら悪気なく呟いた。


「失敬な。私は弱いスキルなんかじゃありません。ものすごーく強いスキルなんで、げふっ!」


 私はベスパに向ってパンを振りかざした。ベスパはパンと机に挟まれてぺちゃんこになり、死亡。


「べ、ベスパがぺちゃんこになっちゃった……」


 メロアとレオン王子は目を丸くして私を見る。


「お、お構いなく。ベスパは八秒もすれば復活するので」


 潰れたベスパは私の魔力となり、吸収されて再度生まれる。


「はぁ……。もう、キララ様。いきなり殺さないでくださいよ。でも、キララ様の食べかけのパンに潰されて死ねたので本望です」


 ベスパは胸に手を置き、微笑んでいた。大変気持ちが悪い。


「い、生きてる……」


 レオン王子とメロアは目を丸くし、生き返ったベスパをまじまじと見つめていた。


「この子は私が死なない限り死なないんです。だから、どれだけ殺しても生き返るうざい物体なんですよ。この羽虫が四六時中付きまとってきます」

「し、四六時中……」


 レオン王子とメロアは身を引き、苦い顔になる。全く同じ反応。やはり仲が良い。これだけ仲が良いなら夫婦生活でも上手くいくだろう。


「まあ、簡単に死ぬので物凄く弱いということがわかっていただけたと思います」


 私はぺちゃんこになったパンを咥え、食べる。ぺちゃんこになったパンは黒パンほどではないものの硬かった。そりゃあ、ぺちゃんこになっていたらパンのふわふわした食感が潰されて圧縮してしまうのだから当然か。

 ぺちゃんこのパンを食べ進め、一気に食べきる。美味いか美味しくないかでいったら美味しいが、出来たてを食べてからじゃないと本当に美味しいかどうかわからない。ぺちゃんこになったパンでも美味しければよかったのだけど、はっきりといえない味だ。


「はぁ~。食べた食べた~。じゃあ、昼からは何しようか?」


 メロアはお腹を摩り、気分がよくなったからか、レオン王子がいても何も気にしていない。

 ミーナも後頭部で手を当てて、考え込む。


「とりあえず、無詠唱魔法の練習でもしようよ」


 私は軽く誘うが。


「えー、初っ端から鍛錬するの? さすがに今日はしなくてもいいでしょ。だって、夜にパーティーがあるんだよ。その準備もあるし」


 メロアは午前中だけで疲れたのか、訓練はしたくないと言う。まあ、人それぞれなので構わないが、初日からやってこそ続けられるものだ。


「じゃあ、私は昼寝しようかな」


 メロアは机に突っ伏し、すやすやと眠りにつく。


「眠るのが速い……」


 レオン王子も驚くほどの寝つきの良さ。眠る子はよく育つというのは本当なので、メロアはきっと発育よく育つだろう。私もたくさん眠っているはずだけどなぁ。

 私は空を見て、駄女神に睨みを効かす。ほんのばかり、空が曇ったような気がした。


「私は教室でもう少し過ごしているよ」


 レオン王子はメロアの寝顔を見ながらにやけていた。ほんとメロアの方が溺愛されていて多くの女子が羨ましがる状況なのに、メロアは無感情なのがもったいない。


「うーん、私はキララと一緒に魔法の練習でもしようかなー」


 ミーナは私の方に付いてくるようだ。彼女は魔法が使えないので一から覚える必要がある。ほんと一番大変だ。


「じゃあ、レオン王子、私は失礼します。また、パーティーの時に会いましょう」

「うん。また、パーティーの時に会おう」


 レオン王子は頷き、私とミーナは教室から出た。今回は昇降機を使って一階まで降りる。

 生徒玄関を出て冒険者女子寮に向って走った。私とミーナは裏庭に移動し、準備体操する。


「キララ、魔法を使うのに準備体操っているの?」

「まあ、魔力も体の一部だし、準備体操して体を解しておけば、流れが良くなるんだよ。少しでも流れがよくなれば、魔法の効率が上がる。ミーナは座って目を瞑り、体の中に巡る魔力を感じ取るところから始めようか」

「はーい」


 ミーナは手を挙げて胡坐を掻きながら地面に座った。目を瞑り、お腹に手を当てさせて瞑想に近い状態を作らせる。


「鼻から息を吸って口から吐くという流れを繰り返してね。出来るだけ呼吸だけして。そうすれば体の中の感覚がわかるから」


 ミーナは目を瞑りながら呼吸を始めた。


 私はミーナが瞑想している間、無詠唱の魔法を使う。

 まず、全属性の初級魔法はほぼ完ぺきに無詠唱で扱える。中級魔法を無詠唱で出来るのは火属性魔法くらい。やはり、私は火属性魔法が得意らしい。

 ベスパは火属性魔法が苦手なのに、私が得意とは皮肉だ。五歳児のころから『ファイア』ばかり打ち込んでいた影響かもしれない。『ファイア』なら中級魔法くらいの威力で放てる。逆に中級魔法は上級魔法くらいの威力で放てる。魔力量による違いなので修正は可能だ。


「無詠唱で火属性魔法の中級を放てたら中々強いよな……」


 私は脳内で火属性の中級魔法が書かれている魔法陣を思い浮かべる。そのまま、魔力を手の平に込めた。すると『ファイアーボール』が手の平に生まれる。ただ、普通に大きすぎた。普通ならバレーボールくらいの大きさにとどめないといけないのだが、今、大玉転がしに使う大玉くらいの大きさになってしまっている。これを放ったら完全に一つの寮が焼失しかねない。


「ディア、くらって」

「わかりました!」


 私はブラットディアを集め『ファイアーボール』を投げつける。ブラットディアは『魔法耐性』を持っているため、魔法をくらっても無傷だ。私の魔法をくらっても傷付かないので魔法で倒すことはほぼ不可能と言ってもいいんじゃないだろうか。物理耐性は踏みつぶす程度も耐えられないので弱い。

 ディアは私の魔法を受け止めて吸収し、お腹を膨らませる。ディアも魔力体なので、私の魔力で出来ている。


「うーん、今ので中級魔法の無詠唱が成功したと言っていいのだろうか?」


 私は顎に手を置き、考え込んでいた。すると。


「すぴぃー、すぴぃー、すぴぃー」


 ミーナは完全に寝落ちしており、頭がかくんかくんと動いている。可愛らしい首振り人形だが、訓練になっていないので起こした。


「う、うぅん。あれ、私は何を……」

「魔力を感じる訓練だよ」

「あぁー、そうだった。あまりにも何も感じないから寝入っちゃったよ~」


 ミーナは笑い、尻尾を振っていた。


「ミーナがスキルを使うとお腹が減るように、魔法を使っても魔力が減るの。その感覚と似ているってキースさんも言っていたでしょ。少しスキルを使いながらさっきと同じことしてみて」

「わかった~」


 ミーナはスキルを使い、魔力を消費する。魔力を感じた覚えがない彼女はお腹が減るという感覚を得て、魔力が枯渇したとわかるはずだ。だから、食事を沢山食べて外側から魔力を得て、魔力を溜めていると思われる。


「うぅん。うぅぅん……」


 ミーナはお腹を摩り、気張っているような声を出していた。便秘ではなさそうだが、大分苦しそうだ。


「ミーナ、無理すると訓練が辛くなると思うから、少しずつでいいよ。少しずつ頑張って。気持ちを落ち着かせて魔力を感じ取る」

「うぅん、魔力、魔力……」


 ミーナは眉間にしわを寄せ、尻尾を持ち上げている。そのまま、じーっと待ち、コテっと倒れた。どうやら、お腹がすきすぎて倒れてしまったらしい。

 私はミーナにビーの子を与え、魔力を補充してもらう。


「はぁ、生き返った……。ありがとう、キララ。でも、魔力を感じるって難しいね」


 ミーナは復活し、呼吸を整えて胡坐を掻きながら座っている。


「まあ、初めはそんなもんだよ。だから、少しずつでいいって言ったのに。まあ、今さらそんなこと言っても仕方ないから、もう一度頑張ろう」

「うん。頑張る!」


 ミーナは諦めが悪いので私の手を握って、力を込めた。


「キララ様、この組み合わせは丁度いいですよ」


 ベスパは私の頭上に飛んできて笑っていた。


「キララ様の大量の魔力をミーナに渡し、ミーナが大量の魔力を消費しながらスキルを連続して使っていれば、両者共に魔力量が増えます。ミーナは魔力を感じ取りやすくなり、スキルも強くなっていきます。キララ様は大量の魔力を消費して悪魔に存在を悟られにくくなるはずです」

「なるほど。いい考えだね」


 私はミーナの手をぎゅっと握り『女王の輝き(クイーンラビンス)』に似た方法で魔力を送る。


「ミーナ、スキルを使って魔力を大量に消費して。私の魔力をあげるから気持ち悪くならないよ。そうすれば、結果が早まるから、一緒に頑張ろう」

「うん!」


 ミーナは耳と尻尾を立て、スキルを使った。彼女の力が全身八倍になり、様々な機能が向上する。聴覚、嗅覚、触覚、筋力、瞬発力、その他諸々、身体能力が化け物の獣族の八倍となる。私の手を握ればあっと言う間にぺちゃんこになってしまうだろう。あまりにも怖いが、何かあれば保健室にでもいって見てもらえばいいかと楽観的に考え、ミーナの体に魔力を流して行く。


「はぁ、はぁ、はぁ……。こ、こんな大量の魔力、使ったことないよ」


 ミーナは息を荒げ、体から覇気を発していた。威圧とでもいうのか、強者のオーラが私の体を吹っ飛ばそうとしている。彼女が本気を出したら、私はどうなってしまうのだろう。

 実際、鍛えるのが魔法や武器ではなく、肉体だったら。ミーナはとんでもない力を持っていることになる。やはりドラグニティ魔法学園は化け物ぞろいの学園なんだな。

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