3-14 幸せに
なんで?という顔を一瞬した理央はすぐに納得したようで頷いた
「あれ?理央さん 髪切ったんですね 三つ編みも切っちゃったんですね?」
「そう もう ソラ達もユキも居なくなっちゃったからね 要らなくなっちゃった」
「ふーん? それで 今日は理央さんどうしたんですか?」
「え? 深淵研究会の会合じゃんね?」
「あれは 師匠がお休みの間は休会です」
言いながらまた 涙が出てきたから 慌ててお手拭きで目を拭う
「はいこれ ユキの家族から預かって来た。」
顏をあげたレオナに理央から 1冊のレポート用紙が渡される
「俺も知らなかったんだけど、ユキ最後の方は あっちのホスピス棟に居たんだって。引き上げた荷物をご家族が整理してたらこのレポート用紙にTO Leone ってあるから レオナって友達知らないかって俺に話が来て で 今に至る。
ちなみに 俺には何もなし 」
レオナはレポート用紙を受け取りながら 理央の言葉が理解できないでいた。
”俺には何もなし”は いつもの事だけど…
”最後の方は” ってなんだろう?
”あっちのホスピス棟” って ローズガーデンの奥にあるホスピス棟だろうか?
聞きたい事が沢山あるような気がするが あまりにもありすぎてどこから聞いたらいいのかわからない
一周回って冷静 というか ぼんやり してしまったレオナは 機械的に目の前にあるサンドイッチを口に入れた。
咀嚼しながら考えて とりあえず先ず、一つ聞いてみようと、サンドイッチを食べ終えたレオナは ミルクティーを一口飲んで問いかけた
「理央さん 師匠のフルネームって何ですか?」
コーヒーを飲んでいた理央が コーヒーの中に何が入っていましたか?と聞きたいような 何とも言えない顏になった
「え?なんで?知らないの?」
「はあ ユウキさんって苗字しか?」
「苗字???? 苗字は月見里、ユキは 月見里有希 だよ」
「え? え???? 結城さん ではないんですか?」
理央が笑おうかどうか考えている顏になって 空中に話しかけた
「おいユキ! 聞いてる? レオナちゃんお前の名前さえ知らなかってさ 流石 お前の弟子だねえ!」
「そこに師匠はいません! いつだって 理央さんが見ているのは明後日です」
レオナは椅子の上に置きっぱなしになっていた 園芸ポットを手に取った。
「頂戴」と手を出す理央に渡す前に その穴から理央を覗いてやった
まるい景色の中が 小さいシャボン玉でいっぱいになって その向うに理央が見えた
師匠だ!!!
師匠が光になって帰って来た
そうだ そう言っていた 風と光になって帰って来るって
「師匠が帰ってきてます 今 理央さんの周りにいます!
師匠!師匠!!師匠!!!」
園芸ポットを放り出して シャボン玉ごと 理央に抱き着いた。
突然の事に目を白黒させている理央
その二人の横のテーブルの上 放置された園芸ポットの隣で、
レポート用紙の表紙が風もないのに捲れた
そこには 急いで書いたようなユキの大きな字が見える
いつか レオナに話をしようと思ってのメモだったのだろうか
TO Leone
幸せに
・なれ
・しろ
・させろ
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あと一回 お付き合いくださいませ
明日 最終投稿です