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3-10 9月第一日曜日

気が付いたら レオナも 理央の横で 座りこんで泣いていた  



理央が いつかユキがしてくれたように レオナの頭を撫でていた


「エレベータ 消えてるなあ」


理央の声に顏をあげると 夕焼けに染まる空が広がっていた


「ユキ 昨日 トンネルに入ってさあ  今日、トンネル出てさ  さっきのエレベータに乗ったと思う」

理央の声が 震えている


「 ユキのエレベータ レオナちゃんと一緒に 見送りたかったんだ。

  ユキどう思ってるかな?」


「トキがユキを案内してるかな? ユキの事だけ ユキさんって呼んでたじゃん 俺のことは 理央ちゃんって言ってたのに」


「ユキ やること 全部やったのかな? トキみたいに そろそろって分かってたのかな」



理央が一人でしゃべるのを レオナは黙って聞いている






理央がレオナを家まで送って行った。

その間 レオナは一つの深淵さえ見なかった

理央があまりに心を閉ざしているからだろうか?


理央に深淵が懐くのは 理央が優しいから、 その明るく、開いている心に光や風になった魂たちがひきつけられて そして 深淵までひきつけられる


でも 今の理央は空っぽだ、明るさも温かさも無い。 そして レオナの心も空っぽだ

 


「気を付けて帰って下さいね あ これ」


理央とエントランスでの別れ際にレオナは 少し躊躇しながらも 理央にユキからもらったボトルを渡そうとした


「ありがとう でも レオナちゃんが持っていて ユキもその方が喜ぶ ありがとう また ね」


やっと 理央が口の端を上げた。 

理央が手を挙げて出て行き 自動ドアが閉まるのをレオナは見ていた


 

後から レオンを連れて帰って来た母親は ベッドで丸くなっているレオナを心配し、体調が悪いというのを信じて気遣ってくれた


日曜は ベッドの中で 一日 丸くなってすごした


食欲がないというレオナに 母親が食べられるものはないかと聞いた レオナは いつものサンドイッチをリクエストした


夕方 夕日が差し込むレオナの部屋に母親がサンドイッチを持ってきてくれた。

いつも お昼に持っていったサンドイッチ、 

トキが褒めてくれた 

いつも ユキは済ませてきたからと言っていたっけ 

「いいよ どうぞ」そう言うユキの顔と声を思い出してまた涙があふれる


「何があったか 教えてくれないかな?」


ベッドに寄りかかって レオナにくっついて座った母親が聞く


「ガーデンの友達がね 空に登ったの…」


やっとそれだけ言って レオナはまた泣く

母親が その背中を抱いて トントンとかるく擦る。

 


夏休みの前は、泣くときはいつも一人だったのに 師匠の前では何回も泣いて 

そして 今は母親に縋り付いて泣いている 声を出して泣いている

一度泣き出したレオナの涙は止まらない


今週で終話を迎えます

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