9.その頃のユキ
その頃 ユキもベッドの上で 寝転んで考えていた。
図書室で頑に同じ席に座ろうとした少年が 実は少女で しかも「視える人」らしい
ユキも「視える人」ではある。だが、姉たちに「ユキは霊感が強いから動物に嫌われる」と言われる程度の霊感らしきものと あのブラックホール達がある程度の大きさ以上であれば見える そして 自分のバディが少し扱える その程度だ。
ユキが バディと出会ってのは 小学校に入った年 母親の祖母-ユキにとってのひいばあちゃん-が亡くなった葬儀の時だ。 その葬儀に出席している大人の中に 黒猫を連れている人がいるのが不思議だった。あれはバディ達だったのだろう。
初冬だったのだろうか? 日当たりのいい縁側で 一人の男性が猫を撫でていた
ユキはその猫に興味をもって近づいた
「オジサンの猫 僕もさわってもいいですか?」
その人は驚いた顔をして苦笑した。
「これは猫じゃないんだ 僕のバディ(相棒)だよ
ええと 君は何歳かな?」
とユキに聞く
「7歳です!」
「7歳かあ 僕は7歳まで生きられないと言われていたんだよ」
7歳まで生きられない人がいる というのがユキにとっては不思議で ユキはその言葉をよく覚えている
「7歳までは神の子 7歳超えたら人の子って言うんだ
君には このコが視えるようだけど そんな人ばかりじゃないから この黒いゆコの事は秘密にしておこうか? 皆が生まれたときから連れているバディだけど 怖がる人もいるからね」
男性は 膝に抱えたバディをもう一度撫でると
「それから 人のバディをむやみに触ってはいけないよ。でも君は僕にとってとても嬉しい事を言ってくれたから、今日は特別に触らせてあげよう」
と言って ユキの手をとって バディに触れさせてくれた。
「なんにもいないのに あったかい?」
驚いて 男性を見ると 優しい顏でユキを見返して頷いた
「怖いものではないんだよ でも 自分から近づいてはいけないよ」
その後 しばらく会話を交わした男性が 有という名前で その葬儀の2年後に19歳で亡くなったと知ったのは 死後大分たってからだった
有のバディに会ってから ユキはバディに魅了された。
綺麗なバディ 不気味なバディ 見つけたっと思って近づいたら 猫だったり 石だったり ごみ袋だったり めったに見つからないけれど 見つかればうっとりと眺めた。
それから しばらくして 何もかもを飲み込もうとしているようなバディを見かける事があった。ユキはそれをバディではなくて”ブラックホール”と呼んで区別した
「あの子 レオナって言ったなあ 何を知っているのかな? 僕の知らないバディの事を教えてくれるのかな? あの子もバディが大好きだといいけれど…」
そんな事を呟いて ユキは目を閉じた