3-5 深淵の真相
この夏休みは学校へ行く変わりに ガーデン行ってるみたいだった。
我ながら 規則正しい生活だったと満足の笑みを浮かべながら ガーデンへ向かう坂道を登る
レオナは もう 前ほど深淵に怯えなくなった
怯えていた相手のほとんどは自分の心が作り出した物だったらしい それにもし本物と遭遇しても それを観る事が出来るレオナは避ける事ができる。 そっと「桜塩」(ワサビ塩でも食卓塩でも)を振りかけて 「ここに居ちゃだめだよ」っと声をかけてやれば去って行く。
提出なんて出来ないけれど 「幽霊と生霊と過ごした夏休み レポート」もまとめたいな ソラやトキを過ごした夏休みを記憶だけでなく記録に残しておきたい。
研究対象の 幽霊と生霊がいなくなった今 レオナの研究テーマは
当初の「深淵」に戻すべきだろう
レオナはそんなことを考えながらノートを開く 最初はユキに疑問をぶつければ全てが解決するのかと思ったけれど 謎は深まるばかりである
それに いつ どんな時に 自分の深淵は 自分の中から出て来るのだろう?
テラスの指定席で 3人はレオナのノートを囲んでいる
「トキにもっといろいろと しっかりと聞いておけばよかったです」
「でも あれはトキが見た深淵の話だからね 見たことが全て真実か?っていうとそれもちょっと違う。僕に見える理央と レオナちゃんから見える理央は違うでしょ?
それと同じかな? でも 少し 深淵の真実には近づいたかもしれないね」
「トキが最後の最後に 幸せに? って言いましたよね? あれって トキが幸せになりました。か 私たちに幸せになってねって事か?どちらでしょうね?」
「私は幸せでした 貴方たちも幸せになって それからソラを幸せにしてください。だったんじゃん? 自分も周りの人も幸せにせよって 約束守って彷徨ってたトキっぽいじゃん? トキは約束を守ることが幸せにつながるって思ったんじゃん?」
「それが最後の言葉ってことは 最重要でしょうか? トキが一番”やらなくてはならない”こと? だったのでしょうか? 」
うーんっと ユキが椅子の背に身体を預けて遠くの空を見る
ユキの考えるポーズ 久しぶりに見ました!
「トキが 深淵には”やること”が入っているって言ってたけど それに逆らっちゃダメなのかな?
自分が幸せになるために 持ってきた”やること”をやらないとか 持ってきてない事をやったらどうなるんだろう?
ダメかもって思っても 自分が幸せになるために 生まれる前の国での出来事なんてこだわらないで 逆らう事だって大事じゃないかな?って思うんだ
恋も 病気も 人生は決められている部分もあって 受け入れるしかない事ってあるんだろうけれど それでも 僕は自分の生きたいように逆らって生きていきたいと思う…
あ!こら 理央 笑うな!」
正面に居た理央が顏を覆って 肩を震わせて 笑い出した
そして そのまま
「ごめん 帰る!」
そのまま 速足で去ってしまった
そんなに面白かっただろうか? むしろ いい話だと思うけれど。。。っとレオナはあっけにとられて 理央の後ろ姿を見送った。
「理央さん どうしたんでしょうか?」
ユキはただ 肩をすくめた それから
「今から追いかけても つかまらないよね? ほっとこうか?
ああ そうだ 人間に生霊のことなんて分るはずないじゃないってレオナちゃん言ったでしょ?
人間に深淵の事はわかるはずないのかもっとも思うけれど それでも 知りたいと思うから これからもよろしくね」
「こちらこそ 末永く よろしくお願いいたします」
レオナは テーブルに三つ指ついて 深く頭を下げた。
本当に 本当に ずっとずっと ユキと一緒に居たい ユキについて行きたいという思いをレオナなりに言葉と態度に込めたつもりだった。




