2-53 いざ!ローズガーデン病院
そして今 ソラを背負った理央 と レオナとユキは病院棟の前に居る
「なんだか ちょっと怖いな 変化が怖いし 失敗も怖い あ~ トキは 凄いや」
理央の背中でそんな気弱な事を言うソラに
「明日にするのか?」
「明日でもいいよね?」
同じような事を ユキは冷たく レオナは期待を込めて言う。
レオナの横を 老人の二人連れが通った。
久しぶりに レオナは深淵を目にした。 レオナに見えるという事は悪質深淵なのだろう どちらかが 深淵を弄んでいるのか?
”やること”がまだ入っている(終わってない)のに入ろうとするバディにあきれているのか、怒っているのか?
それとも そんな状況のなかで頑張って疲れている深淵なのかもしれない。
ひと月前なら 深淵の姿をチラリと見ただけで逃げていたレオナだけれど
悪質深淵だって悪い、というよりも むしろ 哀れなヤツなのだ、怖いというよりも かわいそうだと思えてきた
レオナに見えない深淵、良質深淵とバディはどんな形にみえるのだろうか? 知りたくなって ユキの方を見るとユキが視線に気が付いたのかレオナの方を見た。そして ふざけたようにレオナの肩を包んで抱き寄せた
病院棟の入口の自動ドアが開き 通路やロビーの様子が見える
老人の足元を守るように動いている深淵 車いすの老人の膝の上でくつろぐ深淵
母親と手をつないでいるよちよち歩きの子ども その足元にまとわりつく深淵
子供は深淵をまったく理解していないから、勝手に遊びに出てしまうのだろうか?
幼い深淵は自分が子供の一部だと理解できず 友達だとでも思っているのかもしれない
ほんの 1秒か 2秒で ユキは離れたけれど レオナにはユキの視ている、レオナによって少しパワーアップされているかもしれない世界が視えた。
うん 大丈夫 深淵は人を襲ったりしないから 死は怖いけれど 誰もに訪れるもの
うん 大丈夫 師匠もいるし 理央さんもいる レオナは手を握り締めながら自分に言い聞かせた。
3人で 病院棟のエントランスに入る そこから 2階まではエスカレーターで エスカレータの無い
その先は ゆっくりと階段を登る
長期入院の患者は四階らしい と言う情報を二人はどこからかつかんで来ていた
「エレベーターもあるけど 階段の方が人も少ないからね」
「レオナちゃん 四階まで登れる?大丈夫?」
理央がからかうように言うから レオナは理央を睨むふりをする。
階段を使うのは 人目につかないからというのももちろんだが 深淵に遭遇しないようにというレオナへの配慮だろう。
4階フロアへの階段を登りきって 右手にある 小さなロビーのような所の椅子に座る
いつものように ソラのいない方を見て理央が聞く
「俺たちの調査では ここにお前の身体が居るんだけど 何か感じる か?」




