2-46 ソラがなんだか変です
トキが行ってしまった。
レオナは 祖母の死以外に人と別れたことがない。
人と交わったことが無いのだから当然と言えば当然だ。
トキが居なくなり 初めて”喪失感”という感情を知った。
でも トキは望みが叶ったのだから 喜んぶべきだ とも思った。
気持ちが整理できないまま、翌日もガーデンへ行った。
トキが居なくても、 居ないからこそユキや理央 ソラに会いたい、この気持ちを分かち合いたいと思った。
「おねーさん!」
ガーデンの門で深淵をつれたソラが出迎えた。
いつもは 横にしっかりと手をつないだトキが 最近はちょっと笑顔でいっしょに迎えてくれてたが今日はソラと深淵だけだ
そんな現実に レオナはまた泣き出したくなった
「僕 トキと会わなければよかったかなあって思うんです」
「レオナちゃん はろー ソラが居るの?」
ソラの言葉と 理央の挨拶が重なった。
レオナは理央に向かって頷く
それだけで 理央はソラが居る事を理解した
「ソラ 暑いから俺の背中にくっついてよ で 今日はまず図書室行こ!
外に居たら死んじゃうよ」
返事を待たずに 理央はさっさと図書室に向かって歩く その背中にソラはベッタリとくっついている
いつもの指定席に行くと ユキが居た。 ”居ないのはトキだけだ。”
「今日は暑すぎるから ユキが図書室に居てくれてよかったあ」
「理央は 急がないと終わらないからか?」
トキが居ないのに そのことには触れずに ユキと理央はふだん通りに会話をしている。
それが”大人”なのだろうか?
ぼんやり考えながら レオナもノートを取り出した。
ソラはどうする?と 自分の前に居はずのソラを見ようとすると ソラはユキの目の前の机に胡坐をかいて座っていた
ユキが顏をしかめて ソラを睨んでいる。
今日のソラは変だ 寂しすぎておかしくなっているいるのだろうか?
レオナは 酔っ払い というものをあまり見たことがないけれど 今日のソラは
”都会24時間!”とかいう番組に出てくる タチの悪い酔っ払いのようだ。
”絡み酒”というタチが悪い酔い方の酔っ払いさん(子供)が ユキに絡んでいる それをどう理央に伝えようかと思いながら レオナはペンを取った。
「ねえ ユキさん 次の紙芝居は ”星の王子様”にしてよ 僕 星の王子様 大好きだったんだ … 僕も身体を置いて王子様に会いに行きたいと思った 今はトキに会いに行きたいなあ」
夢見るように言った ソラの顔がなんだか泣きそうに見える
「僕は この世界が嫌いだったんだ 僕を僕自身でいさせてくれないこの世界が嫌だった 汚いここに居たら 僕まで汚染されてしまうでしょ?」
”星の王子様” ”体を置いて トキに会いに行きたい” ”この世界が嫌い” レオナは慌てて書き留める
図書室では叱ることも出来ないユキは黙ったまま ソラを睨んだ
理央が小声で窘める