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2-45 歩道橋から 

一行はテラスに場所を移し、ユキがレオナの頭を撫でている。


聞こえない理央も トキとの別れが近い事を理解したようだった


「私も ソラやみんなと別れるのは悲しいけれど でも 行かせてね ………

あ …私 まだ 涙が出るのね」


トキが手の甲で涙を拭って そっと笑った


「えっと トキ? 俺の膝に来て? 行っちゃうの? いつ行くの?」


理央に言われて トキが理央の膝によじ登る 

理央がそっと マルを抱いたトキを包む いつもの 見慣れた風景


「もう 出口がすっかり見えたから行くね 理央さんにも伝えてね ありがとうって

 それから 幸せにー」


シュっと 黒いモノが小さく 理央の腕の中で溶けた


え? 今?

そこにいたモノ全員が思った 理央でさえ何かを感じたようにユキを見た


”もうすぐ”が こんなに急だとは トキ自身も思っていなかったのかもしれない


身体を持たないトキが 深淵に入り 行ってしまった後には 何一つ残っていない。


夏を一緒にすごしたのに? マルと一生に居る姿が今でも思いだせるのに?

ほんの少し前まで 一緒に図書室に居たのに?


「お礼 言ってなかったな 深淵の事 沢山教えて貰ったのに まさか こんなに突然 行っちゃうとは思わなかったな」


ユキの言葉に 同じ思いのレオナも頷いた。


「ソラ おいで」

理央が さっきまでトキが居た場所に今度はソラを抱え込む


「行っちゃったね ソラが見つけたマルのおかげでトキは家族に会いに行けたね」

「ねえ 理央さん マルの方もトキを探し続けていたんだと思うんだ トキとマル

 もともと一つだったんだからね」


理央には見えない 聞こえないはずのソラと理央が重なりながら いたわりあっているように見えた。



「そうだ トキが家族に会いに行くところ 見に行こう!」

しばらくして 理央が顏をあげて言った


ガーデンの前の歩道橋を上がる

 

「ここから 理央さんと二人でトキのマルを呼んだんですよ」


ソラが自慢げに言う 


マルを連れてくる前に理央とソラが叫んでいる声が聞こえたがそれはここから叫んだのか


そうだ あの時「歩道橋からすごく綺麗なチンダル現象見えるぞ」と言いながらマルを連れてやってきたのだった



「おう! 見える? ほら あれ 」

理央が指さすまでもなく レオナたちの目は歩道橋の上から空を見ると 雲の中から地上にむけて伸びる光の帯に引き寄せられる。


レオナはいつも「天国への階段」と呼び 友人の忍は「あの光の先には神様がおる」と 断言している光の帯だ


「俺 トキを見る事も トキと深淵が消えるところも 見えなかったけど 今 トキがあの光線の中を上っている気がすんだよなあ」


ということは 深淵の先があの光なのか?

それとも 深淵が消えるとあの光になるのか… うん でもトキは今あの中を登っているんだね

 そう思いながらレオナはゆっくりと言った


「ありがとう トキに会えてよかったよ ありがとう」


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