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2-40 呼んだ?呼んだよね?

「『このコは マルよ!』って トキが言ってます。」

レオナが理央に通訳する。


「『僕の深淵は ソイツの事も苦手みたい』って ソラが言ってます。」

また レオナが通訳する。


レオナと理央の間には 深淵の”マル”を抱えたトキと トキの反対側に自分の深淵をまとわりつかせたソラ


その様子をレオナの横でユキが腕組みをして見ている。


人間だけしか見えない通行人が そんな3人に不審げな視線を送って通り過ぎていく。


少し前にガーデンでレオナと話をしていたオバサンが 通路に近い方に居たユキをチョンチョンとつついて


「どうしたの?」


と声をかけた事で その場の緊張がほぐれた


「あ すいません 邪魔ですね 退きますね」


 質問には答えずに 3人とも笑顔を張り付けて邪魔にならない場所、テラスに場所を移す。





今 深淵の”マル”とトキを テラスに連れて行く=(イコール)ユキが折れる 事になりそうな流れだなあ


ユキとレオナのフィルターを通過した深淵からトキと相性がいい深淵を選ぼう、という予定だったのに

よりによって レオナに見える深淵をトキが気に入ってしまった。


テラスでは、「捨て犬拾って来た娘と それを反対する親」状態が展開されている しかも トキはさっさと名前まで付けている。


理央が椅子に座ってトキを呼び トキが理央の膝に座る。ユキが頷いたのを確認して理央が見えないトキに話しかける


理央オジサンが トキを説得してくれるのだろう


「トキ 教えておくよ 名前を付けたらお前が責任もって面倒みるんだよ 何がおきてもても責任をとるんだよ」


理央は いつか ユキが理央に言ったセリフをそのままトキに言い 

トキが目を輝かせて まず理央に 次にユキとその隣にいるレオナに大きく頷いた。


「理央のヤツが裏切りやがった!」

「し…ししょう…」


ユキがかなり怒っているらしく 今までレオナが聞いたことが無いようなセリフを吐いて レオナを驚かせた。


理央が作戦を放棄し ユキをあっさり裏切り トキの見方になり …

理央に丸め込まれた形になったユキが いつものような大きなため息をついて 怒りを抑えた。


それを見たトキがこっそりと微笑み 理央の膝から下りた。

そして  マルを抱えて レオナとユキの前に来た。


「大丈夫 ちゃんと面倒みるから このコについては私の方が詳しいのよ」


トキは二人の顔をみてニッコリと笑った。


トキが笑った!!!!

レオナとユキ そして ソラが同じように驚いた顔になった


「なに!なに? その顔 何が起こったの?」

「今 『ちゃんと面倒見る 私の方が詳しい』って言って トキが笑ったんです!」


理央にトキが笑った事をレオナが興奮気味に話すと 理央が破顔した


レオナはふと 疑問に思った事を口に出す


「面倒みる 世話をするってどうしたらいいんですか?」

「マルは 私のマル、深淵なの こうして抱っこしていればいいのよ。

 声をかけてやって 私のやりたい事を話したら 私の”やること"を教えてくれる。

私はそれを順番に”成し遂げて”行けばいいの」


そう話すトキは 確かにトキの姿 トキの顔 トキの声なのだが 少し前までのトキ とは違っている


「トキ もう ソイツに出会ったから変わっちゃったんだな」


ソラが誰にともなく 呟いた そして 突然


「トキ 帰ろう!」


トキを呼ぶと 手をつないでバラ園の奥へ去って行く


いつもなら 兄が妹の手を引くように見えるのに 今日の後ろ姿は 少年と少女が手をつないで歩いていくように見えた。

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