2-36 8月突入
とうとう 8月に入った
祖母の作ってくれたワンピースは作りが単純だから涼しくて、しかも トキとお揃いっぽい という事でレオナのお気に入りだ。なんなら一日おきに着ているくらいだ。
レオナは その大きなポケットに凍らせた小さいペットボトルを入れて今日も ガーデンのカフェに居る。
トキが決断したら、と既にユキと理央は相談してあったらしく カフェにメンバーが、最後に不機嫌そうなソラが揃う頃には 話が纏まっていた。
そして そのことにソラは更に不機嫌そうな顔になり、その隣で深淵がソラに反応して震えていた。
作戦?としては”レオナに見えない、且つトキの気に入る深淵をいつものカフェ周辺で待ち構えて捕まえる”という 当たり前 な上にきわめて単純なものだ。
この単純な計画に至るまでには ユキと理央でいろいろ考えたらしいが、結局の所、一番簡単な手段となったのは…トキが風に飛ばされてしまう事を心配したから、らしい。
「まずは ガーデンの門あたりの結界を解くね というか 結界張るのを止めるから レオナちゃんはそのつもりでいてね」
ああやっぱりっとレオナは納得する ガーデンでレオナが深淵に遇わないと思っていたのも ソラが入ってこれなかったのもユキの結界の力だったのだ。
でも なぜ ユキはガーデンに結界を張っていたのだろう?レオナが少し首を傾げるのと同時に 理央が軽口をたたく
「ユキ ちょっと神経質な所があるじゃん? 自分の周を綺麗にしておきたいのよ それなのに俺が連れ込むから 怒るったらありゃしない…余裕のない男は嫌われるよお?」
「師匠が結界を解いたら 深淵だらけになるんですか?」
「そんなことにはならないと思うよ?そんなに深淵だらけになったら嬉しいけど…」
ユキはレオナがぞっとするような事をさりげなく言ってから、続けた
「それに レオナちゃんが嫌だなって思う深淵にはお帰り頂けばいいよ? ああ、でも 悪霊退散!っというは止めようね。基本的には 怖いモノじゃないからね?」
あら?悪霊退散は違ったらしい。自分では「やってやったわ!」っと少し誇らしくさえ感じていたのにっと 恥ずかしくてちょっと赤くなって俯くレオナにユキが言う
「多分 バディを見失ってちょっと荒れてるだけだろうから優しくしてやってね。
”ここにはバディはいないから バディのところに帰りなさい”って言って でもこっちには来ないでね って気持ちを込めてお清め代わりに少し塩をまいておけばそれで充分だと思うよ。」
レオナは俯いたまま 頷くという器用な事をやってのけた
「ねえ ちょうどよくっていうか 台風が来るじゃん!




