2-30 ガーデンでお留守番中のソラ(ソラ目線)
僕が トキに遇ったのは、暴風雨の翌日の綺麗に晴れ上がった朝だった。
バラの花は散ってしまったかもしれないなあっと思いながら バラ園を歩いていた時に、誰かが
居るのが見えた。
人でないのはすぐに分かった だって まだ残っている強風に時折ふわりと体が浮いているし 身体が透けて向う側の景色が見えている。
仲間が来た っと思った
んんんんん?
仲間? そう 幽霊仲間?人に見つけてもらえない仲間。
ただ トキには名前があって 願いもあった。どちらも 僕にはないモノ
最初は 僕より長い間一人で彷徨っていた小さな女の子を母親の元に届けたいと
迷子を助けるような気持ちで トキをいつものテラスに連れて行った
ユキさんが考えてくれるって言ってくれた時は 安心した。
トキの願いが叶うまで トキを守ろうと手をつなぎ 風の入らない場所を探して一緒にすごした。
無表情なトキだけど 心が無いわけじゃない 喜んだり 悲しんだりしているのは分かる
ずっと 話し相手も無く ガーデンの門のあたりをウロウロするしかなかった僕にとってトキは大事な友達になった
友達?ともだち? だいじなともだち?
小さい女の子 トキの願いが叶うのは 僕の望みのはずだったのに
トキが おねーさんと仲良くなるのは なんだか楽しくない
そして 昨日 トキはおねーさんの家に行ってしまった
トキに「行かないって」言って欲しいと思ったのにさ
***
今日は おねーさんもトキも居ないから 僕はバラ園を一人で、深淵を連れて歩く
深淵は トキが苦手だから なんだか嬉しそうに見えるよ
今日は誰も来ないだろうなあっと思うのに 気がついたらテラスに向かっていた
テラスに理央さんとユキさんが居るのが見えた。あの二人も習慣で来ちゃったのかな?
そうだ! 今日はトキが居ないから 理央さんに甘えちゃおう
理央さんにくっついていると安心するんだ。 人の温もり?っていうの?気持ちいいんだよな
ユキさんの目を盗みながら 理央さんの背中に飛びつく
「ん?」
理央さんが何かを感じたように 襟元に手を入れて細い三つ編みを取り出して前に垂らす
机の上の紙を読んでいたユキさんが チラリと上目遣いで僕を見た。




