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2-29 明日は帰ります

「お迎えが来たって言って おばあちゃんの魂が入ると 深淵がシュって 溶けるのを見て ああ サヨナラだなあって またトキは一人になるの でも 今はレオナちゃんやソラがいるから 大丈夫よ」


レオナが泣きそうな顔になるのを見てトキが最後の一言を紡ぐ。

そして パチリと瞬きをして また 子供の顔に戻った。


「私もおばあちゃんが亡くなった時にシュって深淵が解けるのをみたの その後ずっと深淵が怖かったの トキは大丈夫だった?」

「怖い?あの綺麗なマルが怖かったの?」


トキが首を傾げる


「ソラのは ちょっと怖いけど…時々優しいけど… レオナちゃんのお婆ちゃんのは怖かったの?」

「うん 多分 小さかったからね … 今は あんまり怖くないよ」


トキに不思議がられて レオナは、本当はまだ怖いのに ちょっと強がって言う。


それから 今のトキの話を慌ててメモする。

もっときれいな字で書けたらいいのに でも 師匠も字は私と同レベルだったよね?ユキの事を思い出し、ついでに理央の事も思い出した。


「理央さんは自分は見えないのに ソラやトキを連れてきたのよ」

「理央ちゃんはシャボン玉も連れてるよ 綺麗よ」

「ふーん 見てみたいなあ 世界は深淵とシャボン玉だらけ、なの?」

「シャボン玉はいっぱい飛んでいるけれど 深淵は…例えば、レオナちゃんの家族の深淵は見えないわよ」


それは まだレオナの家族は深淵をくぐることは無い 彼岸に行くことは当分ない という事だろうか?


トキがノートのページを繰って聞いて来る


「この黒と白はなに?」

「これはね 今 私たちが居る方から見えるのは黒だけど 出口の方は白い世界なんじゃないかなあって あとね 門の役目かも?っとも 言ってるのよ 出口に何があるかなあって 」


「出口は 向う側の世界なのよ だから とうちゃんとかあちゃんが待ってるのよ お兄ちゃんもね」

「そうかあ そうだね 会いたいよね 家族に」


トキは 70年も 約束を守って待っている。私には何ができるんだろう?

レオナの思いが聞こえたように 大人の眼をしたトキが言った


「レオナちゃんが居るだけで 私 幸せよ レオナちゃんは私をトキを見てくれる。ありがとう」


何もしていないのに…っとレオナは恥ずかしいような気持ちを隠すように慌てて言う


「私が視ている深淵は怖いものだけらしいの 師匠と一緒でやっと素敵な深淵が視えるらしいから トキには 綺麗な深淵も 怖い深淵も視えていいね」


トキが優しい声で答えた


「沢山、見えすぎるのは大変よ。視界がいっぱいになっちゃうのよ。レオナちゃんには 本当に危ない深淵だけが見えるんでしょ?

怖い犬が居るのが分かるようなものだもの 噛みつく前に逃げればいいのよ。

可愛い犬は視えなくても困らないでしょ? 理央ちゃんも レオンも、レオナが守れるのよ。」


あっ そうか 師匠も”危険が分かる能力”だって言っていたけれど それは自分を守るだけじゃなくて 人を守るためにも使えるんだ。理央さんに近づいて来た深淵を退けたように、レオンや家族を守ることが出来るんだ。


レオナは 目の前が開けたような気がした。




***


明日はガーデンだね っという夜に トキが言った


「レオナちゃん トキは かあちゃん とーちゃんに会いたい。トキは もうだいぶ前に死んでるのよね? かあちゃんやとーちゃんも死んでるのよね?」


トキの声は悲しそうだ トキが泣く事が出来ないのは死んでいるからなのだろうか

泣ければ少し楽になるかもしれないのに

レオナは悲しくなって でもどうしてもあげられなくて レオナが泣いた


「レオナちゃん 私の為に泣いてくれてありがとう  私 ちゃんと考えたの」


トキの中の大人のトキが言った それから


「私は もう大丈夫だから レオナちゃん もう泣かないで」


レオナはトキに慰められながら それでも涙を止める事は出来なかった


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