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5.6月末のローズガーデン

6月の終わり、バラのアーチの花は無くなってしまったが 今度は花壇の夏バラがシーズンを迎えていた。

本来 夏はバラが少ない季節だが園芸ボランティアたちが腕の見せ所 とばかりに張り切って夏バラを植えてあるのだ。



最近 ユキは入口から一番遠い 受付の背中側の角っこの席の椅子席(つまり レオナの指定席の斜め 前の席)を指定席にしている。

しかし レオナは毎回 同じ人物が斜め向かいに座っている事に全く気が付いていなかった。

4回目にレオナと遭遇したユキはとうとうレオナに声をかけた


「ねぇ、君はいつもそこで図録を見ているね 面白い?」


小さい声で聞いたユキに レオナは画集から目を離さないまま 頷いた。


ローランサンの淡い色使いはレオナを安心させる 誰かが 「ローランサンの絵は閉鎖的」だと言ったけれど閉ざされた世界がレオナには心地よい


レオナの斜め向かいに座って 本を読みながらチラリと画集を見たユキは デニムパンツの少年とローランサンの画集の組み合わせに少し当惑気味な表情を浮かべた。



16時の鐘が鳴って レオナが画集を閉じて立ち上がると ユキがその画集を取り上げ レオナは初めてユキを見た


自分と同じような 明るいオレンジのシャツとデニムパンツ そして ユキの顔を見上げて その瞳に深淵が見当たらないことに気づいた


「本 返してきてあげるね」

「ありがとうございます」


突然の申し出にレオナは少し驚きながらも 頭を下げて礼を言った。

図書室を出るレオナにユキがついて来て 話しかけた


「君の事、時々見かけるけれど お見舞い?」


レオナは首を横に振る スクールと病院は隣接した建物だが 入口は反対側だ。しかも、レオナは病院側で深淵を連れた人を見かけたことがあったので 病院側には近づかないことにしている


「そうか まぁあっちは 僕もあまり好きじゃないけどね」


ユキはそのまま ごく自然にレオナと並んで歩く


土曜日で お見舞いに来る人も多いのか 今日のバラ園は人が多かった 人が多いと深淵が紛れて入ってくるかもしれない レオナは緊張しながら歩いていく 


緊張のあまり レオナは人を上手に避けられない むしろ向うから来た人とわざわざ同じ方向に動く事になる。

 そんなレオナを反対側に導こうとユキがレオナに手を伸ばす その手がレオナの肩に触れたかどうかのタイミングで声がした


「すいません 写真とっていただけますか?」

「いいですよ」


ユキがスマホを受け取る。

バラをバックに笑う人達、若い男女と小さい子供二人、真ん中に車椅子の老女、その膝には 黒い猫?

ではない、 深淵だ。。。。


見たくないのにレオナの眼が深淵に吸い寄せられる 


セイレーンに魅せられたら死んでしまう それが セイレーンというモノだから 

なんだか クラクラして座り込んでしまう


「大丈夫?」


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