2-18 7月第三土曜日
二話目です
7月下旬、日中に外に出るのは勇気がいる暑さだ。
にもかかわらず レオナは今日もガーデンに向かう。
いつもの麦わら帽子を被って 従姉のおさがりの、祖母の作ったという白いワンピース。その右のポケットには桜塩スティックとユキのミニボトル 左のポケットにはいつものリングノート。それから 鞄の中にはお弁当と宿題とユキと理央へのお土産のお饅頭などなど…
「おねーさん お久しぶり!」
待ち合わせをしたわけでもないのにガーデンの門では深淵連れのソラと手をつないだトキがいて 当然の様に声をかけてきた。
「夏バラの有るところ見つけたから来て!」
トキと手をつないで先に行くソラの後を追ってバラ園へ入る。
二人が探しておいてくれた夏バラを咲いているバラの品種名が入るようにして写真を撮る。
バラの少ない季節に写真を撮っている学生が珍しいのか 声をかけてきたボランティアのオバサンと少し話をする。ついでに 夏バラの手入れを教えてくれたので それもメモする。
その間 ソラとトキは退屈して オバサンの中を透り抜けて遊んだりするので レオナは内心ドギマギする。
おしゃべり好きらしいオバサンと話をしていると 奥の方からユキが歩いて来た。レオナ達に小さく手を振って オバサンには頭を下げる
「あら~カレシさん? 今はバラは少ないけどゆっくり見て行ってね~ オホホ」
と意味不明の笑いを残してオバサンが去って行く。
カレシですかあ 実はもう二人 ここに子供が居るんですけどね っと心の中でレオナはつぶやく。
ユキは”カレシさん”と言われてちょっと肩を竦める。
「すいませんね~ 二人っきりじゃなくって」
っとソラが冷やかすように言うと 同じ言葉をトキが無表情で真似をして言った
「すみませんねえ ふたりきりじゃなくて」
反応に困って レオナとユキは顏を見合わせた。
今日は 図書室には行かずにそのままテラスへ行く アイスティを買って いつもの席へ ユキはいつものように済ませてきた というので これもいつものようにレオナだけがお弁当を開く
トキが サンドイッチを珍しそうに見るので 食べられるか挑戦してみるが、ソラと同じようにサンドイッチに触ることも出来ない。ごめんねっと謝って レオナだけが食べる。
食べるのが遅いはずのレオナだが 夏休みに入ってからずいぶん早く食べるようになった気がする。いい事なのか分からないけれど…
「おねーさんのサンドイッチ 綺麗だし、 食べてる顔 嬉しそうだから 見ていて楽しい」
とソラは言ってくれるし トキも
「みていて たのしい」
と言ってくれる。