2-15 その頃のレオナ
ユキと理央が ”トキをなんとかすべく” 頭をひねっているであろうその頃、レオナは家族と、亡くなった祖母の家を訪れていた。
10年ぶりの祖母の家の玄関は記憶よりも小さく感じた。
ガラガラと大きな音を立てて引き戸を開けると、サカナを咥えた熊の木彫りが目に入って来た。
そうだ、この熊が子供のころに怖かった、と思い出しながら家族で声をそろえて「こんにちは!」と声をかけると 記憶よりも少し年を取ったような伯父と伯母が迎え入れてくれた。
茶の間には潜ってはダメだと言われていた 深い掘りごたつがそのままあった。
だが、最後に祖母と対面した座敷は畳が新しいせいか 縁側がガラス戸からサッシに替えられたせいか 記憶よりもずいぶん明るかった。
この辺りに深淵が消えたはずだと思う押し入れもその後 襖を張り替えたのか記憶と違う 現代的な模様になっていた。
レオナたち家族は2階の部屋を使うように言われて荷物を運ぶ。
見覚えのある 古い家ならではの急な階段 1段の高さが学校の階段の二段分くらいありそうに高く 踊り場も無いから落ちたら一階まで真っ逆さまだ。
用心しながら 階段を登り、 降りようとした時に 勾配がきつい階段は下りるときが怖いのだと思い出す。
先に降りようとしたレオンが立ちすくんで レオナに助けを求める
「お姉ちゃん 怖い 降りられない」
「じゃあ ”バックオーライ”で下りようか?」
一緒に並んで 後ろ向きで降りる。
レオナはこの階段は「登っちゃだめ」だと 祖母に言われていた。それでも お転婆だったレオナは階段を登って降りられなくなり こうやって誰かと下りた記憶がある。一緒に降りたのは 従兄姉だったのか 祖母だったのか?
盆飾りがされた仏壇の祖母の写真はレオナの記憶の祖母よりもずいぶん厳しい顔をしていた。
「ねえ おばあちゃんってこんなに険しい顔だったっけ?」
この家に住む従兄姉たちに聞くと
「優しいお祖母ちゃんっというよりは厳しいお祖母ちゃんだったからなあ。レオナにだけ特別甘かったけどさ」
「そうそう レオナだけ ずるいなあってずいぶん思ったわよ」
っと 口々に言われ、父親たちは
「お祖母ちゃん 旦那さん早くに亡くなったから苦労したんだよ 伯父さんたちにも厳しい母親だったよ」
「そうそう いつもこんな顔してたよな その割に思い込みで何かやって失敗しては大笑いしてたよな」
「塩ココア 覚えてる?」
「塩パンは?」
っと 父親たちは盛り上がった
夕方になり 迎え火を焚いた




