4.ファーストコンタクト(図書室にて)
そして今 レオナは壁側に彼を押し付けるようにしてベンチに座っている。大きな画集を開くのに 彼の腕がちょっと邪魔だが そこは仕方が無いから譲歩した。
壁に押し付けられた男子学生、ユキは 突然自分の隣に座った子供にぐいぐいと身体を押されて壁側に押し付けられ当惑した顔をしていた。
図書室は空いていて 他にも開いている席は沢山あるのに、わざわざ人の隣に座る人はめったにいないだろう。
ユキは訝し気な視線をレオナに向け 移動しようとした。だが 動こうにも 一方は壁 前は机 その机にレオナが大きな画集を乗せて眺めているので動けない。
彼は困ったような顔でレオナを見たが レオナの方は彼のことなど全く居ないものとでも思っているように知らんぷりだ。
ユキは溜息をついて 少し考えるようにしていたが 彼も意地になったのか 壁に押し付けられたま、再び本を読み始めた
一方 画集を眺めているレオナは もう ユキの存在などすっかり忘れてしまったようだ
傍目には 同じような青いシャツを着た二人…短髪で少年のように見えるレオナと細身の彼…が 寄り添って(!)本を読んでいる姿は、仲の良い兄弟のように見えた。
16時に 隣のカフェの閉店時間の鐘の音が聞こえ レオナは我に返った。
さあ 帰ろう っとレオナは立ち上がる。すると 身体の左側が涼しくなった気がした。
そちらに目を向けると人が居た ああ 人がいたのか とだけ認識して レオナは本を書架に本を返して図書室を出た
ユキはレオナが出ていくのをあっけにとられて見ていた。
席を立つ前にレオナは確かにユキを一瞥した が それだけだった。ユキは拍子抜けしたような顔をして 軽く頭を振って首をすくめ 誰にともなく(おそらく自分自身に…)「バカみたい」っと呟くと もう 目を本に戻すことなく席を立った。
2週間後の土曜日 スクールの後、ランチを済ませたレオナが図書室へ行くとレオナの席にまた先客が居た
前回もいたような気がするが それでもレオナはレオナの席に座ったのだから今回も同じようにすればいいだろう
レオナは大して考えもせずに 大きな画集を持ってレオナの指定席に向かう
すると 先客はレオナに気が付き レオナが隣に座るより先に席を立って向かい側の椅子に移動して本を読み始めた
16時の鐘が鳴ったのでレオナはいつも通りに 書架に本を戻して図書室を出た