2-12 ソラが女の子を連れてきた!
ようやく 顏を上げたユキが あの時の様に溜息をつきながら言う
「で ソラ この子は? お前の妹、じゃないよな?」
「昨日の暴風と一緒に飛んできたんだと思う 一昨日 バラ園のチェックしたときは、気配もなかったのに 昨日 バラ園の一番奥の花時計の所で見つけた。
多分 こいつは幽霊だと思う。」
ソラがいかにも 自分は幽霊ではないかのように言うのに ユキは引っかかったが、
話を続けさせる
「こいつ 防空壕へ行くときにはぐれた とか言ってるから 大分長い間、80年くらい?彷徨っているんだと思う。こいつを先になんとかしてやってくれないかな? えっと お願いします」
ソラが立ちあがって 机に両手をついて頭を下げる 先ほどのレオナと同じポーズだ。
それを見て ユキがまた溜息をつく
そんな二人を見てレオナは ソラはちょっとずるいなと思う。ソラに対しては厳しいユキだが、 レオナを助けてくれて ソラでさえ助けようと思っているユキが こんな風に頼まれて断れるはずがないのだ
戦争中から彷徨っている、と言われれば この髪型は納得できる。
ソラについてきたのも ソラの着ているカーキ色が見慣れたものだったからかもしれない。
外界との接触を避けてきたレオナは対人スキルが低いと自覚している。が ここは年上のレオナから交流を試みるべきだろうっと レオナは自分に言い聞かせた
「お名前は?」
「トキ」
「何歳ですか?」
「ごさい」
トキは 片手を広げて突き出す
「おうちはどこですか?」
トキは 首をかしげる
「かーちゃんがおうちでまってる おうちに行きたい」
不安げな様子に レオナが頭を撫でようと手を差し伸べるが、突き抜けた。ソラと同様で 触ることは出来ないようだ
心配げな様子でこちらを見るソラの足元にはモヤモヤと深淵が纏わりついているが、トキの周りには気配がない
自分に見えないだけで 可愛い深淵が懐いているのか?と レオナはユキに視線を送るがユキがその意味が分かったように 首を振る。
「僕の深淵 トキの事嫌いみたいなんだ」
ソラが言う通り ソラの深淵はトキからなるべく離れようとしているようだ。
レオナは ちょっとトキが羨ましくなる。
”怖い深淵の方が避けてくれる能力”「おばあちゃんその能力が私欲しかったわ」っと心の中で訴えておく
「お前は 自分の深淵が好きなのか?」
ユキがちょっと意外そうに聞く
「好きとか嫌いとかじゃなくて コレも僕の一部だからさ…」
”僕の一部”、という言い方にレオナは驚く、この間ソラは”こいつ 僕の言うことなんて聞かない”とも言っていたが 好き嫌い以前に”自分の一部”という考え方は ユキと同じだ。
そして その”一部分”が トキの周りにはない。
「あー」っと ユキが頭の後ろで手を組んで椅子の背に身体を預けて遠くの空を見る
レオナが思いついて ノートの空いているページを開いて トキにペンを渡してみる
すると トキがペンを握ってノートに落書きを始めた。
何を書くのかと レオナとソラがノートを覗き込む
ノートにペン先が触れる瞬間 インクが紙にのる が ペン先が動くと同時にインクが消える 魔法を見ているようだ