2-8 思い出せる?
レオナは二人のやり取りを観察しながらサンドイッチを食べる。母のサンドイッチはいつでも美味しい…
ユキとソラの不穏な空気を無視してレオナがソラに声をかけた
「ソラ サンドイッチ食べる? 私のお母さんの手作り、美味しいよ?」
「オカアサン かあさん 母さん 僕にも母さんがいた
今はどうしてるんだろう? 母さん 母さん それから …… 父さん … 」
何かを思い出そうとするように ソラが顔を覆う ソラの深淵がそれに反応するように震える
「ソラ 何かを思い出しそうだなあ 前に進めるといいけど…」
「師匠 助けるとか出来ないんですか?」
「僕 霊媒師とかじゃないからね! レオナちゃんナニカ 思い込んじゃってない?
ソラの本質次第では今よりも少し楽にしてあげられるといいなって思っただけだからね?
ガーデンの門の所にちょっと塩の道で結界作ってあったんだけど ソラに作用しちゃったってことは 上質なヤツとは思えないけど…」
ユキが自分の考えを整理するように言った
結局 ソラにはサンドイッチを食べる事は出来なかった。触ることも出来なかったのだ
ガーデンの門付近に佇んでいる間も お腹もすかないし のども乾かなかったらしい
レオナはノートの「名無しの幽霊」ページに ”空腹感なし のども乾かない”と律儀に書き込む
「夏休みの自由研究 ソラにしようかな? 幽霊の観察」
「おねーさん 本気?」
「ダメかな?」
「おねーさんの学校ってそれ有りなの?…ですか?」
「私の学校?自由闊達 錬心学園 だもん」
「あ~ 知ってる 受験するって言ってたヤツいた…いました」
ユキがチラリと見るたびに ソラの語尾が丁寧語になる。
ソラの深淵も ユキの視線を逃れるように机の下でおとなしくしている。
深淵が視界から消えたからか レオナがソラと親しげに話している
レオナはコミュ障とか自閉症疑いとかって言ってたけれど そんな心配はないのでは?と思える位、ソラとの会話が弾んでいる。
会話を聞いていたユキが 受験というワードに反応した
「ソラ 受験?って言ったか?同級生が受験?お前 小6か?
錬心学園知ってるって言ったな? 通学範囲に住んでいる もしくは住んでいたって事か?」
「え? 僕 そんなこと言いましたか?」
ソラがマジメが顔になって しばらく考えるように空を仰ぐ その仕草がユキと似ているなあっとレオナは思う
「うん 受験するんだ大変だなあって言ってた そうだ 僕6年2組16番だ です」
晴れ晴れした顔でソラが言う レオナが慌ててそれをメモする
「”生きているなら” 中一 13歳かな?」
ユキが言うので それもメモする
”生きているなら” ソラは幽霊じゃなくて 生霊なのか? レオナがじっとソラを見る ソラは目をそらして
「おねーさん 自由研究 バラの研究にしたら?ここ 沢山バラが咲いているし」
「バラかあ 今 花少ないよ?」
「でも 咲いてた…ました」
「そうだね 私どうせここに来るんだしなあ」
「僕も 幽霊の観察よりも バラの研究の方がいいと思うよ? ボランティアの人にも話を聞いて、バラの話でもいいし ボランティアの方に焦点当ててもいいんじゃない?」
話題が自由研究になったので ユキもソラの追求を一時止めて 提案する。
「師匠 私コミュ障なのでそれ無理です」
「おねーさん コミュ障?!」
「それも レオナちゃんの思い込みかもしれないよ?」
「え?えええ?」
ほぼ同時に発せられた二人の言葉に レオナがまとめて返事をした