2-4 君の名は?
閑話レオナママを読んで頂けるとあらすじがわかると思います
黙って頷くユキに少年が続ける
「えーと 気が付いたら あの門の所に居て 長い間…… とは言っても あの門の近くのアーチのバラが咲いたのは 一回しか見てないので 二年は経ってないと思います。 一日中 あの門のあそたりをフラフラしているだけで 正直 もう 飽きちゃいました。 僕 幽霊なんですか? 死んだら あの世とかに行くと思っていたのに 何でこんなことになってるんですか?」
自分のことなのに 分からないという顔で 苦笑しながら少年が言う。その表情は
ずいぶん大人びて見えた
「スズキリオさんが連れてきた名無しの幽霊(深淵付き) 小学生? 自覚無? 幽霊歴? 」
レオナがノートの新しいページを開いて書き込むが 分からないことだらけだ。
少年が見えない理央が そのレオナのノートを覗き込んで、「みせて」と口だけでいう。
レオナがノートを渡すと胸ポケットからボールペンを出して スズキリオの下に自分の名前を漢字で書き 隣に電話番号、ご丁寧に携帯と自宅を綺麗な字で書く、それから 名無しの幽霊の所に↓(やじるし)をして ソラ と書き込んだ
「ソラ?」
「その 名無しの名前」
理央が少年と全く関係の無い方向を指さして言う
「理央 名前を付けちゃダメって前も教えたよな?名前を付けたらお前が責任もって面倒みるんだぞ 何が起きても責任をとるんだぞ 教えたよな?」
ユキが理央を指さしながら叱っている 捨て猫でも拾って来た時に親に言われるセリフに似ている。
「うん でも俺見えないしな… ユキ、助けてくれるだろ?」
捨て猫を拾って来た子供よりもかなり無責任にあっけらかんと言う理央に ユキが再び頭を抱えた。少年は理央の背中にぶら下がって嬉しそうに言った
「サンキュ 理央さん名前をくれて! 僕今日からソラね! うん、いい名前 気に入った。レオナさん、伝えて ソラが喜んでいるって」
レオナが
「理央さん ソラが 喜んでいるって伝えてっだそうです」
というと 理央は 嬉しそうに笑い ユキは溜息をついて レオナに言う
「理央は、初めてじゃないんだよね、わけのわからない”気配”つれてきたの。視えないから何を連れてるのかはわからなかったけど 名前だけは付けちゃダメっていってあったのに…はあ…」
ユキが何度目かの溜息をつく 今日の師匠はいつもの何でも知っている師匠と大分 違う
「理央はさあ 悪い深淵に落ちそうになった事だって有るのに アッチの方から寄ってきちゃうんだろうなあ……
アイツ いつか 悪い深淵に取り込まれちゃいそうでホントに心配なんだよね…はあ…」
誰に言うともなく言い また溜息をついた。
レオナと理央は そんなユキを見守り 少年はそんな理央のまとわりついている
16時の鐘がなった。
今日は そろそろ帰らなければと遠慮がちに言うレオナにユキが言う
「レオナちゃん ごめん ちょっと理央に説教したいし、ソラにも話があるから ここでごめんね 次はいつにする?」
当然の様に次の約束をしようと言うユキの言葉にレオナの頬が緩む。
明日も 昼過ぎにはここに来ると約束をして レオナはガーデンの出口に向かう。
「では 師匠 また明日おねがいします」
言いながら ソラの深淵をチラリと見て ちょっと暗い気持ちになるレオナにユキが聞く
「アレ 持ってる?」
レオナはポケットからソラに貰ったボトルを出して見せる。実は反対のポケットには台所から拝借した「桜塩」のボトルも入っている。
ガーデンの門を出て 歩道橋を上る。
ガーデンが丘の上にあるから眼下に街並みが一望できる。先週まではあそこに あの深淵達がうごめいていると思うと 足がすくんだが今日は コレがあるから大丈夫 ユキからもらった瓶を握り締めてレオナは 歩道橋を下りた。




