15.師匠と呼ばせてください
「そうだね 深淵の話に戻ろうか?」
ユキは 戸惑いを誤魔化すように コップに口をつける
その時 カフェの鐘が鳴った
あれ? 早くない?レオナが首から下げた時計を見ると、まだ15時だ
ユキも腕時計を見て言う
「今日は 日曜日だから 閉店時間が早いんじゃない?」
ユキに言われて 今日が日曜日だったことを思い出す
金曜が終了式だったから 夏休み2目にして曜日感覚がくるっている
「あ 閉店だったら もうここから退かなくちゃだめですね」
「ゴミさえ自分でかたずければ 大丈夫じゃないかな? このテラス チェーンとかも無いみたいだし」
言いながらユキはテラスを見回す
「じゃあ もうちょっとだけ大丈夫ですか?」
「僕は 大丈夫だよ。 そうだなあ 今度はレオナちゃんの考えを教えて貰える? レオナちゃんだって 10年くらい 深淵を見てきたんだから もしかしたら 僕よりも詳しいかもしれないよ」
「あんまり 詳しくなりたくないって思って来たんですけど……
お知り合いになりたくない 反社会的勢力の方みたいな? でも、 さっきのユキさんのブラックホールさんみたら見たら ちょっとお知り合いになってもいいかもって気がしてきました。
コレって 悪いやつに惹かれるってのですかね? 私 危ないヒトですかね?」
「はい ストップ ストップ 君の深淵についての考察をお聞きしたいな」
ユキが両手を上げる.
レオナは一度口を結んでから言う
「はい 先生 いえ 師匠 あ 師匠って呼ばせて頂きます!」
レオナが宣言する。
レオナにとってユキが師匠となるのは運命なのだ!ユキを師と仰ごうと決めていたのだから譲る気は無い。
だが、突然の師匠と呼びます宣言にユキは両手を上げたまま聞く
「師匠って 何の?」
「深淵使いの ですよ! 私も深淵使いになりたいんです」
そうだ レオナがなりたかったのは 深淵使いなのだ。深淵を飼いならしたいのだ
そうしたら 欲しかったものがみんな手に入る気がする
普通の学校生活とか 普通の家庭生活とか とにかく普通の生活とか 普通の中学生になって両親を安心させたいのだ
師匠と呼びたいと言われて ユキは困惑した表情で固まった。固まったユキを見て レオナが慌てて語りだす。
ここで見捨てられない為には とにかく 包み隠さず語り続けるしかない。
「あ!はい 私と深淵の関係ですよね えっと 保育園通ってるくらいの時に 祖母の葬儀の時に深淵をみてから、 私の視界? 生活に深淵が入り込んできたんです
えっと とにかく 初めて深淵を視た時には 怖いって思って … その後は もう 深淵に見つからないようにって思って生活して 深淵らしきものを見たらとにかく 避けて って生活してきたんです。
私、すごく 怖がりになってしまって、そしたら わざと脅かす子とか出てきて
”すぐに大騒ぎする子”って言われて、それで 結局 小学校は3年生の時に転校したんですよね 引っ越しが先かな?
弟が生まれたからちょうどいいって親は言ってたんですけど…私の転校の為の引っ越しかなっと思うと 両親にも申し訳なかったと思っているんですよね。」
レオナは なるべく 深淵から離れないように注意しながら話したけれど やっぱり 支離滅裂になっていた。メモを用意してくればよかったのかな 頭の中に浮かんだことを整理して話すのは苦手だと思いながら話し続けた




