12.ユキが見せてくれたのは
少し緊張を緩めたような顔になって、ユキはゆっくりと言う
「今から僕が見せるモノに 君は驚くと思うけれど 落ち着いて見てくれる? いいかな?大丈夫?」
レオナは当惑しながらも頷く
「じゃあ 右手の指を二本だして そうそう その指を僕の左肩に当ててくれる?」
レオナは 言われた通りに右手の人差し指と中指をユキの肩に軽く当てる 何が起こるのだろう? と 思っていると ユキはレオナの顏をみて 「いい?」っと声に出さずに言った
そして
握った左手をテーブルの上に出して 上を向ける。右手を添えて そっと小さく開く
覗き込んだ レオナは ぎょっとした顔になって 二本の指でぎゅうっとユキを押しのけながら のけぞった
ユキの手の中に ちょうどおさまる大きさの深淵が居た。
底が見えない穴のような でもなぜか立体感があるボールのような そんな存在がユキの手の中にあった
「見える?」
ユキの問いに のけぞったまま頷いた
ユキが右手を添えたまま そうっとその手を握る レオナはその手を覗き込もうと テーブルに両手を
ついて前かがみになる ユキが再び左手を開くと深淵は消えていた
がっかりしたような、ホッとしたような、信じられないモノを見たような?夢かな?
固まったままの レオナの目の前で ユキが
「おーい レオナちゃん?」
と小声で呼びかけて ヒラヒラと手を振る。
レオナがはっと我に返って 紅茶を一口飲んだ。
夢じゃない!
深淵を連れている 飼いならしている?
もう この人の事を信じてついて行くしかない。師匠!とお呼びしよう
レオナは大真面目に思った この人ならきっと助けてくれる
「師匠!!」っと呼びかける前に ユキが話し出した
「レオナちゃんは 深淵って呼んでいるんだね。僕は バディとかブラックホールって呼んでいたんだけど これからは 深淵って呼ぼうか?」
レオナは大きく頷く 今まで「深淵」と呼んできたものの名前を急に変えられてもピンとこない できれば慣れ親しんだ(?)名前の方が分かりやすい
「今のが 僕の”深淵”ね そんなに怖くないでしょ?」
微笑みながら言うユキに レオナはまた頷く。
びっくりしたけど 嫌な感じは全くなかった。黒いマリモ?ちょっと触らせて貰いたかった
「僕 ちょっとだけど霊とか感じたりするんだよね。 バディ、深淵も小学生の頃から見ているんだ 一番最初は 猫かなと思ったりしていたんだけどね」
たしかに レオナも深淵だと思って避けたモノが「ニャー」と鳴いて悠々と歩いていくのを見送ったのは一度や二度ではない
「深淵に初めて遭遇したのは7歳の時、かれこれ10年くらい、僕が勝手に色々と考えている事を話すね。 正しいなんて言えないし 分からないことも沢山あるけど 聞いた後で レオナちゃんの考えも聞かせてね」
ユキは 間合いを取るようにカップに口をつけた
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