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1.佐藤レオナの過去

レオナは幼少時、祖母の死に顔と対面したときの事をよく覚えている 


 年に数回しか会わない祖母であったが 一番小さい孫であるレオナを「食べちゃいたいくらい可愛い」と言っては猫っ可愛がりに可愛がってくれた祖母



その日 保育園の砂場で遊んでいたレオナは すぐ帰る支度をする様に言われた。

次に覚えているのは 


祖母の家の広い座敷で白い布団に寝かされた祖母がもう「人ではない何か」になっていた事だ


「オバアチャン タスケテ」


レオナがそう思いながら眼を泳がした時 シュっと音がしそうな気配と共に”黒い何か” が部屋の隅の闇の中に消えて行ったのをレオナは見た


 アイツに気が付かれてはいけない

 アイツがいることに気が付いている事にも気づかれてはいけない 

 レオナはそう思った


 それ以来 レオナは変わった

 可愛がってくれた祖母が亡くなったことがよほどショックだったのだろう

 両親はそう思っている。


 明るくて積極的だったレオナは 口数の少ない大人しい静かな子供になった

 あの時以来 レオナはアイツ あの”黒い何か”に気が付かれないように 息をひそめて生きているのだ


 時折 現れる アイツに近づいてはいけない 

 アイツは 突然現れる小さい虫の様に漂っていることもあれば 落とし穴の様に地面に口を開けてレオナを(もしくは他の誰かを)待ち構えていることもある。


「レオナちゃん まっすぐ歩いて」


 アイツを避けながら歩くレオナは そう注意される

 レオナが真っすぐに歩けないのには理由がある でも その理由を口にすることは無い。

 レオナがアイツに気が付いていることを アイツに悟られたくないのだ

 




 小学校の修学旅行に行く朝


「あら このタレントさん 亡くなったのね 若いのに」

母親が テレビを見ながら言った


 その画面に映る 若い女性タレント 

 画面が切り替わり 

 映し出された子役時代のそのタレントの写真の隅に小さなシミの様にアイツが映っている

 次に映し出されたのは最近の動画、その中で笑顔のタレントの後ろには大きく育ったアイツが その口を開けている


 怖い 怖い 怖い 

 この人は アイツを飼いならしたつもりでいたのだろうか?

 レオナは黙ってテレビの画面を見つめていた。画面の向こうからのアイツの気配に怯えながら   




 小学校の卒業アルバムを読んでいる時

好きな言葉の寄せ書きページに、”友情”とか”情けは人の為ならず”とか” Let It Be"などの言葉が並ぶ中にこんな言葉を見つけた。


「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ BYニーチェ」

その言葉を見たときに レオナはあの「小さな黒い何か」の名前が「深淵」であると理解した。


以来 レオナは アイツとか黒い丸 とか呼んでいたものを「深淵」と呼んでいる。


 名前を付けたことにより 以前よりも「深淵」が頻繁に感じられる気がして レオナはその言葉を書いた旭アツキを少し恨んだ





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― 新着の感想 ―
[良い点] おっ、と続きが読みたくなりました。 センスがあるんですね~(*^^*) [一言] 続きが気になります☆
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