パーティのお金を着服したら追放された! 返せと言われてももう遅い
「お前はクビだ」
突然の宣告だった。
ここは王都の中心に位置する、冒険者ギルド「白き門」の本部。
「今すぐ荷物をまとめて出て行け」
そう告げるのはの僕が所属する勇者パーティのリーダー、「勇者」バーグだ。
「そ、そんな……」
あまりにも急な宣告に、頭の整理が追いつかない。
僕はパーティの一員として、5年間、必死で戦ってきた。
「どう、して……」
「本当にわからないのか?」
バーグは睨むように僕を見る。
共に戦った仲間にそんな目をするのか!
――本当はわかっている。僕がクビになる理由。
――差別だ。
誰もが生まれつき持っているはずの魔力を持たず、魔法も使えない無能力者。「オイク」と呼ばれ誰からも忌み嫌われ差別される者、それが僕だ。
特にこのパーティのメンバー4人全員が僕を除いて所謂上流階級の人たち。その差別意識は根深く、いつだって機会があれば僕を排除しようとする空気が確実にあった。
「恥ずかしくないのか……!」
気づけば、僕の口から声が漏れでていた。
「は?」
対するバーグは疑問の表情。意識の差に愕然とするが、僕はどうにか言葉を紡いだ。
「正義の象徴である勇者が! ただ『オイク』であるというだけで差別し、排斥する! くだらないレッテルではなく、僕という個人をみるべきじゃないのか!」
「……その個人をみた結果なんだよ」
「……うん?」
どういうこと?
「確かにお前は魔法使えないけど、武芸は達者だっただろ。だから一番いい装備持たせれば、ほかの仲間と同じように活躍できるんじゃねえかなと思ってパーティに誘ったんだよ」
そう、僕は無能力者の不利を補うべく努力し、あらゆる武具の扱いを極めていた。
「で、戦いの場に出てみたらどうだ。お前、前衛と後衛の間をウロチョロしてるだけで本当に何にもしてなかったじゃねえか」
「誰よりも声出しはしてた!」
「なんだその次元の低い貢献アピール。世界背負ってる自覚あんのか?」
「……ある!」
バーグは額に手を当て、絞り出したようなため息を吐いた。なんだその態度。
「まあ魔法が使えないお前に過度な期待を寄せていたこっちにも悪いところはあった。だから俺たち話し合ったんだよ、お前がどうすれば活躍できるのか」
「そんな話し合いがあったなんて知らないぞ!」
「いや、お前も呼んだけどな。『なんか肩だるい』とかわけわかんねえ理屈こねて一回も出てこなかったけど」
そんな記憶はないので嘘だろう。たぶん。いや、あったかも……。
「それで戦闘以外の場面なら活躍してくれるんじゃねえかと思って、料理番任せたよな?」
「ああ」
料理番は文字通りパーティの食事を作る仕事だ。長期間のクエストほど食は貴重な娯楽として重要なファクターになる。
「僕の料理は他の誰よりも美味しかった自信はある!」
「ああ、確かにお前の料理はうまかったよ。文句なしだ、調理時間を除けばな」
「調理時間?」
「俺さ、野菜切るのに2時間かける奴初めて見たよ」
「それだけ熱意を持って取り組んでいたということじゃないか!」
「限度ってあるだろ。一通り完成するころには日付またいでんだわ。馬鹿か?」
「馬鹿って」
普通に傷つく。
「しょうがねえから一緒に行動するのはあきらめて、事務とか中の仕事任せたよな」
現場を追われた僕は、宿の手配やお金の管理など、パーティの事務一切を担当していた。
「それが間違いだったんだよマジで。お前ギャンブル好きだもんな」
「どういう意味だ!」
「もーはっきり言うけどさ、パーティの金に手付けたろ、お前」
「…………あっ、バーグもう酒ないじゃん。次何いく?」
「出ていってくれるな?」
「最近トマトジュースで割るのにハマってんだよね」
「出ていけ」
「ういっす」
そうして僕は追放されたのだった。