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一人旅日記

作者: mayo

あ〜楽しいことしたい毎日もっと楽しみたい〜あ〜旅したい。

そんなことばかり考えているから仕事も続かないんだ。

何もかも自分で分かっていた、21歳の秋。


破茶滅茶に楽しんだ高校生活が終わり、就職するも数日で退職。

働きたくないだとか、まだ高校生の気分だったとか、そんな理由ではない。

私何やってんだろう。辞めなきゃよかった。そう思った事はないけれど、

「お仕事頑張ってね!」とあれだけ応援してくれた友達に合わせる顔がないし

これからどうしようか、それでもなぜかわくわくした。

後にこれで良かったと、間違っていなかったと気づく日が来ることをまだ知らなかった。


19の冬、1人で飛行機で海を渡り、東京へ旅をした。

まだ見ぬ世界が広がるまいと、胸を踊らせた。

友人と旅行をするのも良いが、1人旅は憧れだった。

誰かに聞いた話より、Twitterで見る写真より、何よりこの目で確かめたいという想いが強かった。


私はリュックサックに自分で作ったブローチを付け、たくさんの楽しみを詰めて旅に出た。

電車に揺られてぼーっと窓の外を眺めていた。

窓から手を伸ばせば建物に手が届くんじゃないか、と思ったりもした。

昼ごろなのにサラリーマンが多いことに、安心感を覚えた。

初めに着いたのは鎌倉だった。赤が映える街。

瞬きをする間も無く、高円寺、下北沢、と色々な街へ出かけた。

お腹が空いた頃に、カレーを食べた。

私が注文したドライカレーは、このお店で一番辛いカレーらしい。

外に目をやると、カメラマンとリポーターが歩いていた。

「ああ、東京だ」

ふと気づいたのはいつも使うイヤホンを一度も使わなかったこと。

街の音を聞きたいから。音も一緒に焼き付けたいと思った。

なんとなく住宅街に入ると人気がなくなんだか落ち着いた。

静かな場所もいい、と思って公園のベンチでぼーっとしたりした。

夕方、暗くなるとカラフルな明かりが商店街を照らす。それさえも良かった。

普段の生活との違い、地元には無いものとの触れ合い、気づく事がたくさんあった。


何かある度に建物を見上げる私を、通りすがりの人達は気づいていたかな。

ううん、誰も気づかなくていい、気づかないで欲しい、その先にある感動を独り占めした気分だった。


実家で暮らしている私もこうやって一人で出来ることが増えていくんだなと実感した。

この先何でも出来るような気持ちで満ち溢れていた。

旅が終わりまた現実に戻ると、あの時間は夢だったんじゃないかと思うことも増えた。

そして、私の中での「絶対に忘れない時間」が増えていく感覚だった。


普段過ごしている中で、

これぞ私が求めていた服!というのが見つかった瞬間、ピンクのグラデーションのガーベラを初めて見た瞬間、

絵具を使って描いた絵がうまくいった瞬間、涼しい夜に見上げた空が綺麗だった瞬間、

いくつもあるその「瞬間」に感動してはまた出会う。

すぐそこに広がっている光景に幸せを感じて生きている私は誰よりも幸せと感じた。


普段生活する中で、どれだけ楽しくて笑っていても、どれだけ悲しくて泣いていても、

大抵のことはいつか忘れてしまう。

都合の良いこと全てを記憶に残すことができないと分かってから、

ならばどれだけ自分の中で「良い」と思う時間を過ごせるかに限る。

夜、寝る前に「今日も良かったな」と一言思うだけで良い。

そんな日が増えれば良いと思った。




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― 新着の感想 ―
身体の調子が悪いとか、旅先で慣れないもの食べるのは不味いとか、仕事が忙しいとか言い訳ばかりで行動しない自分には眩しいなあ
[一言] 一人旅いいですよね。 色々共感しました。
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