あんたのせいで歩けなくなったのよ償え! と下半身不随となった姉に言われ続けてきました。確かに私を助けるために姉はこんなになってしまったのだから…。でも婚約者まで譲れと言われて疲れ果てました。
「あんたのせいで私は歩けなくなったのよ!」
「申し訳ありませんお姉さま…」
私は昔、遊びに行ってはいけないといわれる場所に行き、そこで面白半分に老朽化した橋を渡ったのです。
駄目よ戻ってきて! と姉が言ったのですがへっちゃらよとまだ6歳だった私は足を踏み入れ、橋が落ちていき…。
姉の手が私の手に間一髪握りしめ、でも8歳の子供に引き上げられるはずもなく…。
二人で川の中に落ちていき…。
私がほぼ無傷で助かったのですが、姉は一生涯歩けなくなってしまったのです。
姉に償えと両親に言われました。確かに私が悪い。
私はずっと学校にも行けず寝たきりとなった姉の世話をしました。
姉はあんたのせいよとののしりものを投げ、そして私が姉のためにと摘んできた花なんて汚いと投げ捨てました。
反対の立場なら…私もそうなったかもしれないのです。
「…あんた、婚約したそうね」
「はい」
「婚約者を譲ってよ!」
「え?」
私は姉の言葉にうろたえました。確かに私のものをずっとあんたなんていらないでしょといわれてとられつづけました。私も姉にあげるつもりでいたのです。
でも婚約者は…。
「お父様、お母さま、私がこの家を継ぐわ。だからこの子の婚約者と婚約させて!」
かわいそうな娘と両親は泣きました。
でも…私に婚約の打診がきたんです。憧れの公爵令息リオネル様と婚約できて私は…。
「…リオネル殿に聞いてみよう」
姉の言葉に両親は頷きました。
私はでもというと、お前のせいであんなふうになったロミナが気の毒だと思わないのか? と言われたのです。
リオネル様に両親は泣きながらかわいそうな姉のことを懇願したそうです。
…私とリオネル様の婚約は破棄されて、姉とリオネル様が婚約したのです。
跡取りもお姉さまでした。
「…あんたは一生涯使用人として私の面倒を見るのよ!」
私は…姉に悪いと思っていたのですが、この一言で…ここにいるのは優しかった姉じゃないと悟りました。
泣きながら家を出てトボトボと下町を歩いていると。
「お嬢さん、こんなところを歩いていたら危ないよ。あんた貴族のお嬢さんだね」
占い師に声をかけられました。私はでももう帰りたくないと泣くと、占ってあげようと占い師は笑ったのです。
「…あんたすべてを姉に奪われ続けた人生だね」
「でも私が悪いのです…」
「いや、あんた…」
私はえ? と聞くとどうも姉の足は…。
私は占い師のアドバイス通りに、あるものをもって館に戻ったのです。
「何していたのよ。ほら早くしなさいよ!」
「…お姉さま、あの」
私は懐から取り出したあるものを姉に渡しました。
きゃああああという大声とともに姉が寝台から飛び上がって起きだし、そして床に足をついたのです。
「おいどうした…ってロミナお前」
「立てるようになったのね!」
両足でしっかりと床に立つ姉を驚いた顔で見る両親。
「…お姉さまとっくになおっていたのですね」
「…数年前からよ。でも二度と歩けないってお医者も言っていたのにと思って…」
お姉さまはもう歩けるようになっていると占い師に言われて驚きました。でもお姉さまの大嫌いな蛇を投げつけてこの反応…。
私はお姉さまを強い目でにらみました。
「歩けるようになったのでしたらかわいそうでもなんでもないですわよね?」
「…何年も歩けなかったのだから可哀そうよ!」
私はこのことをリオネル様に言ったらどうなりますかね? と笑いました。
二度と歩けないはずが歩けるようになっていたのを黙っていましたって。
「言ってあげましょうか?」
「悪かったわよ!」
「……」
「…リオネル様ごらんのとおりです」
「…歩けるようになっていたとは」
「あんた!」
私はリオネル様をお呼びしていたのです。ことの顛末を聞いてあきれるように姉を見るリオネル様。
「…嘘つきは私は嫌いだ。それにクレールはずっと君の足をそんなにしたのは自分だと悩み続けていたんだぞ。それに私がいない間に勝手に両親が婚約者を姉にしたといってきたが、私は了承した覚えはない!」
私はリオネル様に手紙を書いてどうして婚約を破棄したのか聞いたのです。
占い師のおばあ様がそれがリオネル様の本心じゃないというので…。リオネル様の知らないうちに婚約は解消されていたのです。
「私の婚約者はクレールだ。これから私の家に行こう。身一つでいいこんなところにおいておけない」
「リオネル様…」
私はリオネル様に連れられて家を出ました。
あの姉と両親はどうなったって?
ええ、私は事の顛末を面白おかしく噂として流しましたわ。
私がかわいそうにと同情されて、姉は根性が悪い姉として評判になりましたわ。
そして…姉はいまだに婚約者も見つからず、いじわる姉~と子供たちからに面白おかしく歌われているのです。
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