56 ゴーレム
ゴーレムが、現れた。
( 門の中に入りたければ、我を倒せ。 強き者のみ、中に入ることを許す )
頭の中で声が響いた。
慌てて皆が、距離をとる。
エンバー先輩が氷魔法を放つ。ゴーレムの足に氷が走る。
が、ゴーレムの力が強く、地面に足を縛り付けることは出来なかった。
双子のトーマスがファイヤーボールを放つ。
ゴーレムに命中した。が、ゴーレムは岩、効果はないようだ。
( 防火加工 )
ゴーレムが余計なことを言う。
「これなら、どうかな?」
双子のパーシーが雷を放つ。
ゴーレムに命中した。が、やはりゴーレムには効果はないようだ。
( 防電加工 )
アースが付いてるのだろうか?
フェルナンドさんとアルベルト様が一緒に、ゴーレムに斬りかかる。
やっぱり、石のゴーレム傷一つ付いてません。
剣の方が刃こぼれしそう……
ゴーレムがこちらに向かって、頑強な腕を振り上げた。
あわてて後ろに逃げる。
崖に滑り落ちそうになった。
――落ちる!!!
「俺の手を離すな。」
カインが私の手をガシッとつかむ。
カインのくせにカッコイイ。なんだかドキドキする。若いのに動悸だろうか?
なんだかとっても、ファイト一発!って叫びたい。
カインの手を取って崖を登る。もう少しで崖の上に立つというところで、ゴーレムが大きな岩をつかんで投げつけるのが見えた。
岩が私の方に飛んでくる。
カインの手を振り解くと思い切り突き飛ばした。
「エリカ! 何するんだ!」
やっぱ、おばさんと未来ある青少年なら、若者を救わないとね。
私は大きな岩と一緒に崖の下に落ちた。
カインがすごい顔をしているのが見えた。
私は大丈夫だよの意味を込めて、にっこり笑った。
そのまま私は岩の下に入った。
正確には、地面に出来た岩の影に入った。危機一髪だったぜ!ふう~。
影の中を通って、門の前の広場に戻る。
「火の魔法を使える人は、ゴーレムに火を放ってください!
そのあと合図をしたら、水を放ってください! お願いします。」
「火は効果なかったよ?」とトーマスがいう。
「わかった。エリカの言うとおりにしろ!」とアルベルト様。
さすがアルベルト様、私のやりたいことを理解した模様。
火魔法を使えるトーマス、私、ハルカがゴーレムに向かって火を放った。
( 防火加工 )
火は効かないぞ!と言いたいらしい。
おばちゃんは、ファイヤーボールの連打を打ち込む。
ゴーレムの石の身体が熱で赤く染まってきた。
「今だ! 水を放て!」
水魔法を使えるエンバー先輩、私、ハルカがゴーレムに向かって水を放った。
じゅっという音がして、すごい量の水蒸気が上がる。
湯気で前が見えない。
――その時、ビシッピシッと何かが割れるような音が走った。
身体にひびが入ったゴーレムが崩れ落ちる。
長年の主婦の経験で知っているけど、熱くなっている石や食器に水をかけると、膨張してたところが急に冷えて割れるんだよ。
主婦の知恵が、勝ったぜ!!!!
喜んでると、
「エリカ、あっちをみて!」と、双子がニヨニヨしながら何かを指さす。
双子が指さしたのは、崖の下。
そこには、泣きながら岩をどけようと頑張る人物の姿が……。
おおう、カインだ。
いやいや、そこに私はいません。
カイン、ゴーレム戦はほっといて私を助けようと頑張ってたみたいだ。
岩の下敷きで私が死んだと思ったみたい。
いや~、声がかけにくい。
「カイン?」って声をかけると、カインが信じられない者を見たような顔をする。
泥と涙ですごい状態になったカインが走ってくる。
すごい勢いで崖の下から走ってきて、力いっぱい私を抱きしめた。
ホントに、力いっぱいで痛かった。
「エリカが死んだかと思った」
「お前、俺を突き飛ばしてにこっと笑って岩と一緒に落ちてくし……」
いや、すまんかった。大丈夫だよっていう意思表示だったんだけど……
ぎゅうぎゅうと締め付ける。
いや、肋骨ミシミシいってるからね、今、死にそうだからね。
影渡りで逃げたことを伝えると、
「まぎらわしいことをしやがって」と、嬉しそうに頬を引っ張られた。
あんまり嬉しそうなので、好きなだけ引っ張らせた。
ヤツは、頬フェチなんだろうか?




