32 闇魔法
イザベラ様のスパルタ特訓により、雷魔法はかなり上達したエリカです。
電撃!って感じだ。広範囲は無理だが、1、2匹ならスタン出来そう。
毎日の特訓を見ていた琥珀が、闇魔法の特訓をやると言い出した。
下僕が使えないと困るそうだ。
うちの琥珀、ケット・シー。ただのにゃんこに見えるが、魔法が使える。
しかも、闇魔法だ。
闇魔法ってね、人の心を操ったり、気配を殺したり、影渡りをしたり、
スパイや犯罪者じゃない一般人には、要らないスキルだと思うんだ。
うん。でもね、かわいいにゃんこが魔法を教える!
断れる者がいようか? いや、ない(反語)
寮の部屋で特訓が、始まった。
「琥珀先生、おねがいします」
琥珀のしっぽがピンと立つ。やる気のにゃんこだ。
リアルにゃんこ先生だ!
( じゃ、最初は、気配を消す。 )
( 見本をみせる。 )
目の前にいるのに、琥珀の気配がどんどん消えていく。
よく目をこらさないと見えない。
( はい。じゃ、やってみて )
「えええ? どうやるのか分かりません」
( こうやって、ぎゅうっとやって、気配をけす。 )
さすが、にゃんこの言うこと、よくわかりませんな。
とりあえず、魔力をぎゅうっと内側に集めてみる。
( まだ、見えてる。 )
猫パンチが飛ぶ。
( ぎゅっと、周りに溶けるかんじ。 )
イメージが大事ってことね。もう一度やってみる。
( さっきよりいいけど、見えてる。 )
猫パンチが飛ぶ。
「琥珀、爪が出てる!」
( 出してるの! )
琥珀さん、スパルタです。
繰り返すにゃんこのスパルタ指導により、だいぶ気配が消せるようになりました。
おかげで、手がひっかき傷だらけです。
『気配を消す』より、『ヒール』が上手くなりそう……
**
次の日は、なぜか死霊召喚をすることになりました。
やはり、にゃんこの考えることわかりませんな。
( まず、見本をみせる )
にゃんこが呪文を唱えると、何やら闇に蠢くものが出てきました。
小さい闇の者がゴソゴソしています。
死んだケット・シーでしょうか? そもそもケット・シーって死ぬんでしょうか?
ひぃーっ!!!です。
( やって! )
しょうが無いので教えてもらった呪文を、唱えましたよ。
こんな時に限って、一度で成功しやがりました。
ドロドロとした闇が人間の形を作る。
「ひぃーっ!!」
「あなた自分で呼び出しときながら、悲鳴上げるってどういうことかしら?」と、男の人の声がします。
オネエだ!
「いや、つい、ごめんなさい」
「失礼しちゃうわね。で? 小娘が、何の用かしら?」
と、黒い闇が私のほほを撫でる。冷たい感触が、ガクブルです。
「ごめんなさいぃ。魔法の練習だったんで、用は無いんです」
「もうしょうがないわねえ。次は、かわいい男の子がいるときに呼んでね」と、投げキッスして黒い闇の人が消えて行きました。
死霊召喚、二度と使うことは無いと思います。
連日、寮に帰ってからのスパルタ指導で、気配を消す、ダークボール、死霊召喚、ダークマターが使えるようになりました。
ついでに、にゃんこの愛の鞭の傷を治すうちに、ハイヒールがかけられるようになりました。