28 カインside
モンスターと交戦中の班の援護に向かった。
騎士科で一緒のアイリーンの班だった。
アイリーンは赤毛の美しい女騎士だ。スピードのある剣技でなかなか強い、性格も気さくでいいやつだ。
アイリーンの班は、シャドーウルフとナーガの群れとの戦闘中だった。
ファイヤーボールも使ったのだろう、木がくすぶっていた。
シャドーウルフは、オオカミ型のモンスターで影渡りが出来るので倒すのが難しい。
倒すには、攻撃するために実体化した時を狙って切りつけるしかない。
ナーガは蛇にトカゲの腕がついたようなモンスターだ。
毒があるので、噛まれないように注意が必要だ。
エンバー先輩が、氷の魔法を使い、ナーガの群れを凍らせた。
シャドーウルフは、影渡りで逃れた。
襲い来るシャドーウルフを剣で切りつけつつ、ナーガにトドメを刺してゆく。
アイリーンが、影から飛び出したシャドーウルフに剣を振るっているとき、氷が溶けたナーガがアイリーンの後ろから跳びかかってきた。
「アイリーン、危ない!!」
とっさにアイリーンをかばって、ナーガを切りつけた。
が、一瞬遅かったらしい、ナーガに左足を噛み切られてしまった。
太ももを縛って、止血しようとするが血が止まらない。
戦いは、アルベルト様やエンバー先輩の奮闘で、モンスターを倒し、集結した。
俺を含め、負傷者を連れて、チェックポイントに帰った。
皆、ボロボロだ。
エリカが、俺を見て、目をまんまるにする。
ロベリア先生が一番の重傷者の治療に取りかかる。
「時間が無い、エリカ、貴女が、やりなさい。まず、出血を止めて。」ロベリア先生が指示する。
俺の担当はエリカのようだ。かなり、不安だ。
「ごめんなさい。私をかばってやられたの。」アイリーンが、泣いている。
いや、俺がナーガを切りつけるのが遅かったせいだ。アイリーンのせいではない。
出血のせいか、意識がもうろうとする。
エリカが、ズボンを切り、足を露出する。水をかけ洗って消毒する。
エリカが、ヒールをかける。
血が止まらない。
エリカが、ヒールをかける。
血が止まらない。
「もういい。足は捨てた! 将来、かわいい娘を受付にして、おじさん受けが良い治療院しようと思ってたけど、諦めた! しょうが無い。カイン、受付にする。生きて! 死なないで!」
エリカのやつ、とんでもないことを言う。
勝手に人の足を捨てるな!
勝手に俺を、お前の治療院の受付に内定するな。
ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒーーーーーール!!!!!
エリカが泣きながら、つえを振りつづける。
俺のためにこんなに必死になってくれてるのかと、思うと、こんな時だが、かなり嬉しい。
エリカのグシャグシャの泣き顔を見ながら、足がダメになったら、こいつの治療院の受付するのも、いいかなと思った。
雷が光るように、周りが真っ白になり、エリカが意識を失った。
おれは、けが人より先に気を失うなよと、思った。