23 遠足は、家に帰るまでが遠足です。
そんなこんなで、そこそこ魔法が使えるようになったエリカです。
白魔法に続き、水魔法も、風魔法も、初歩の魔法が使えるようになりました。
土、雷、闇は、まだまだです。
属性が多いので、取ってる教科が多くて辛いです。
特に、白魔法の授業が辛かったです。
ちなみに、白魔法の授業、2回目は、疲労回復のあと、打ち身の治療の魔法でした……
演習前ということで、応急処置の講習もありました。
つらい授業でした。おかげで白魔法を取っている1年生3人の友情は深まりました。
このあと、骨折の治療の授業は、どうなるのだろう?と、非常にこわいエリカです。
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ついに、演習の日を迎えた。
演習は、魔法科と騎士科合同でおこなわれる。
5つのグループに分かれて、森の中を探索しゴールを目指す。
グループは、1年生10人程度の魔法科と騎士科の混合。
各グループに、リーダーとして2年の生徒が二人参加する。
白魔法ができる1、2年の生徒は、治療担当として各グループに1人分けられる。
場所は、学園から少し離れたエンバード山麓の森。
エンバード山麓の森では、弱いモンスターしか生息していないので、1年生の演習にはちょうど良いのだ。
各班がくじでひいたルートをたどり、魔法使いと騎士で連携を実践して森で遭遇したモンスターを倒しながら、所々にあるチェックポイントを通ってゴールをめざす。
チェックポイントには、先生と2年生がおり、治療や何かあったときの救助の要請が出来る。
私の班は、1年は、魔法科が私とイザベラ様と男子3人。騎士科がカインと女子1人、男子3人。計10人。
2年は、なんと魔法科のエンバー様、騎士科のアルベルト様、が担当となった。
エンバー様は初対面だが、アルベルト様は知ってる先輩で、ちょっと嬉しい。
『森の救世主さまは、騎士科だったのね。どうりで、華麗な剣さばきでスライムを倒してたわ。』
などと、考えてたら、アルベルト様が班に紹介されるなり、イザベラ様が、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を曲げて挨拶をした。
慌てて平民も、跪いて礼をした。
「ここは、学園だから、身分は関係ない。普通に接してくれ。」
と、アルベルト様は苦笑いされた。
アルベルト様、何者なんだろう?
ともかく、イザベラ様が頭を下げるほど、偉い人に、2回も道案内させちゃったよ……
出発する前に、
「ゴールに早く着くのが目的ではない。全員ぶじに、ゴールすること。無理はしないこと、必要ならば、救命弾をあげて助けを呼ぶこと。ペース配分を間違えないこと。」
と、教頭先生からの「帰るまでが遠足です」的なありがたいお話があった。
出発前に、各班でミーティングをする。
各自、特に魔法科、使える能力と、召喚獣を申告し、1年生を、A、B2つのチームに分けた。
この森で出るモンスターと戦うなら、5、6人のチームが適当だとのこと。
イザベラ様はA班、カインと私はB班だ。
ちなみに、使える魔法を、火、白、水、風魔法の初歩です。と言ったら、アルベルト様の目が笑っていた。
森で、ヒョロヒョロ、ファイヤーボール見られちゃったもんなあ。
戦闘は、上級生の指示に従うこと。
戦闘は、基本、騎士を前衛に、詠唱時間のかかる魔法使いは後衛に回ること。
戦闘となっても、火の魔術は使わないこと。森に燃え移れば、自分たちが火に巻かれる。
命の危険性があるなど、どうしても使うときは、モンスターに必ず当てること。
木に燃え移った場合は、水の魔術で速やかに消火すること。
などの注意がなされた。
せっかく、頑張ってファイヤーボールの連打が出来るようになったのに、使えない。
そうだよね、ゲームならまだしも、現実の森で、火で攻撃したら、森林火災よね……
アホだった私。
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ミーティングが終わって、班ごと森の中へとに出発した。
1年生の初めての演習と言うことで、ハイキングコース並み。
森林浴ウォーキングって感じだ。
初夏ということもあり、青葉若葉が美しい。
渡る風も爽やかだ。
モンスターに遭遇することもなく、最初のチェックポイントを通過した。
――平和だった。あれは、ただの夢だったのかも?と、思うくらいに。