20 つえを作りましょう3
『
2 材料をそろえたら、木の精霊を呼び出すための魔方陣を地面に書きましょう。
3 満月の夜に、魔方陣の真ん中に枝を突き刺し、その前に芯となる魔法素材を置きます。
4 魔方陣を起動させ、木の精霊につえを作ってもらいましょう。
』
ええと、満月の日はあさってだ。
なんせこの世界、月が3つある。しょっちゅう満月が来るw
レイアス先生に、つえの材料がそろった報告と、召喚場所の相談へ行く。
魔方陣を書くために、広い地面が必要だ。
レイアス先生は、「材料そろってよかったね。」と微笑んだ。
今日も先生は、イケメンです。あざーす。
「グランドはどう? 夜中なら使用者もいないし。」
「人が来ると、恥ずかしいので、目立たないところが良いんですけど。」
う~んと、頭をかく。
「じゃあ、演習場の裏はどう? あそこなら、目立たないし、夜なら人も通らないよ。
それから、僕も立ち会わせてね。」と、ウィンクした。
ずきゅーん、です。
**
夜中に魔方陣なんて、サバトのようだ。
魔方陣を書く人 私。
指導、レイアス先生、観客、カインと琥珀だ。
夜中に、男と二人なんて危ないと、カインが加わったのだ。
何が危ないんだ?と、思ったが、そういえば、レイアス先生、ゲームでは生徒に手を出したPTAの敵だったと、カインの参加を認めた。
地面に、中心を決めて、杭をうつ。杭にひもをかけて、円を描く。
円の大きさにも意味があるので、慎重にひもを計る。
次に、手のひら分、内側に、もう一つ円を描く。
東西南北を正確に測り、四方に季節の神の御名を書く。
東は春、西は秋、南は夏、北は冬の神だ。
円の中に、二つの正三角形を逆に重ねた六芒星を描く。
星のそれぞれの頂点に、六精霊の印を描く。
円と六芒星の間に、木の精霊を呼び出す呪文を書く。
最後に、魔方陣の中心につえにする枝を突き刺し、枝の前に魔法素材を置く。
魔方陣を消さないように、呪文をかいたり、精霊の印を書くのが難しかった。
枝の前の魔法素材は、虫の抜け殻や、動物の毛、鳥の羽、葉っぱとか、なんか小学生男子の宝物のようで、クスッと笑った。
夏休みに集めて、お母さんに捨てなさいって怒られちゃうヤツだ。
レイアス先生が、魔方陣のチェックをする。
3カ所ほど、綴りが間違ってた。間違いを直す。
「よろしい、魔力を注ぎなさい。」
先生のOKがでたので、魔方陣に魔力を注ぐ。
協力してくれたクラスメイト、ひげをくれた琥珀、枝探しにつきあってくれたカイン、指導してくれた先生。
感謝の気持ちと、なんだか嬉しい気持ちも込める。
魔方陣に、深い緑の香りがする霧が立ちこめる。
霧の中に、赤い着物を着た少女が浮かぶ。肩までで切りそろえた黒髪、紅の唇。
人外の美しさ、椿の精霊だ。
( わらわを、呼び出したのは、そなたか? )
「はい。」
( して、なんの用ぞ。 )
「椿の枝のつえを授けて頂きたいのです。」
( ただでは嫌じゃ。わらわを楽しませよ。満足すれば、作ってしんぜよう。 )
**
それから3時間。3人で演芸大会だった。
3人で順番に芸を披露した。
人が来ない演習場の裏にしたことを、心の底から感謝した。
ぐっじょぶ! わたし。
こんなこともあると知っていたのか、レイアス先生は、竪琴を持参していた。
月夜に竪琴をかき鳴らし歌うイケメンはとても美しかった。
カインは、しょうが無いので、バク転をやり、剣の型を披露し、ネタが切れ、最後は素振りをしていた。
私は、前世の歌を歌ったが、椿の精霊から、「へたくそー!」とヤジが飛んだ。
しょうがないので、前世の昔話を披露し、「つまらん!」というので、盆踊りを踊った。
盆踊りはお気に召したので、花笠音頭から、炭坑節まで頑張った。
横でカインが腹を抱えて笑っているのが、むかついた。
レイアス先生も、肩が震えていた。
椿の精霊も笑っていた。
( 面白かった。わらわは、満足じゃ。 )
椿の精霊が、枝に手をかざすと、枝が光りだし、芽ぶき、葉が繁り、枝が伸びはじめた。
シュルシュルと椿の若木になった。
つぼみがついて膨らみ、ポンポンと、真っ赤な椿の花が花開く。
椿の葉の陰に、委員長の怪しい虫が止まる、別の枝では、カラフルな鳥が椿の蜜を吸う。
椿の足元に、くねくねした草が繁る。葉の間に、真っ赤なトカゲのしっぽが覗く。
椿の枝を、変な動物が飛び移る。別の枝には、かわいい琥珀が眠る。
暗い中に、椿の花が輝いて灯が灯ってるようだ。
その中を遊ぶかわいい召喚獣たち。
夢のようにきれい。
( 驚いとるようじゃのう、魔法素材たちの記憶じゃ。 )
さっと、椿の精霊が手をあげる。魔方陣から光の文字が浮かび、シュルシュルと椿の木に絡みついた。
( さ、どのようなつえにするのじゃ? )
椿の精霊が、私の額に触れる。
( めずらしき記憶を宿しているのじゃな。 )
椿の木がしゅっと縮んで、1本のつえに成った。
( そなたの杖じゃ。受け取れ。 )
( また、あそぼうぞ。さらばじゃ。 )
お茶目な精霊は、帰っていった。
シンプルなつえを想像したつもりなのに、ついチラッと、娘が大好きだった美少女魔法戦士を連想したのが、悪かったのか、
魔方陣に残されたのは、先端に椿がついたハートがかわいい魔法少女が使うような杖だったorz