17 モンスター殲滅できませんっ!
森の救世主さま、アルベルトっていう人だった。
どこかで聞いたような名前だけど、
あ、前世の自転車みたいな名前だw
寮まで送ってもらった。
帰り際に、「あれ、普通のスライムだからね。」と言われた。
「森の主かも?」ってつぶやきが聞こえてたらしい。
恥ずかしい。
スライムの魔石ももらった。売って小遣いにしよう。
いいひとだ。アルベルト先輩。
**
今日のホームルームで、先生から、来月 森に演習に行くことが、発表された。
わーい。
それって、歓迎遠足的なやつですか?
バナナは、おやつに入りますか?
ルンルンで、寮に帰る。
いろいろ用意しなくっちゃね。
いつもの通り、夕飯を食べ、宿題と予習をする。
すでに基礎知識のある貴族の方々に、合わせて進むので、予習しないとついていけない。
明日の準備をして床につく。
なんか、重大なことを忘れてるような気がするけど、気のせいよね。
今世は、ピチピチ15歳。物忘れは、早いよね?
まあ、気にしないで寝よう!っと。寝不足は美容の敵よ。
***
夢の中で、いとしい娘が茶の間でゲームをしている。
モンスターとバトル中だ。
「乙女ゲームなのに、モンスター倒すの?」
「うん。森に演習に行く途中で、モンスターに襲われるんだよ。
まあ、主人公ハイスペックだから、魔法でガンガン倒しちゃうんだけどね。」
***
ハッと目が覚める。朝日がまぶしい。
ダメじゃん!!!!!
私、しょぼ魔法しか使えない。スライムにも負けた!
モンスター殲滅できませんっ!
このままでは、モンスターにやられる未来しか見えない。
なんで、しょぼい魔法しか発動しないんだろう。
今日、先生に相談に行こう。
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昼休みに、担任のレイアス先生に相談に行った。
この学園の教師は、教科ごとに、部屋が与えられてる。
レイアス先生の部屋は、壁が全部、本棚になっていた。たくさんの本と資料が並んでいる。
所々に、怪しげな魔法道具も見える。
先生の性格か、物がある割りにきちんと片付けられている。
「どうしたら、魔法の威力を上げられますか?」
レイアス先生は、う~んと頭をかきながらこう答えた。
「う~ん。問題は2つあると思う。
ひとつは、君の場合、魔力は十分あるから、魔力のコントロールに問題があると考えれる。
もうひとつは、魔力を発揮するのが、こわいんじゃないか?
君の場合、魔力の発見が、魔力の暴走だったね。
だから、魔力の暴走がこわくて、無意識に魔力を込めるのを押さえてるんじゃないか?」
「ひとつ目の問題は、杖を使ったらどうだろう?
杖がある方が、魔法の威力も上がるし、コントロールもつけやすい。
今まで、杖を使ってないのは、なぜなんだ?」
「お金が無くて、杖が買えないからです。
もちろん、入学が決まって、ルンルンで杖を買いに行きましたけどね、
杖って、10万ギル以上するんです。
我が家の生活費1ヶ月分です。買えません。」
「そうか……。」
頭をかきながらながら、レイアス先生は、困ったように微笑んだ。
いやあ、イケメン。困った顔も素敵です!
先生は、本棚をゴソゴソと探すと、
「あった! あった!」と、ほこりをかぶった古い本を差し出した。
「杖の作り方の本だ。杖を買えないなら、作ってみたらどうだ?」
先生、本を貸して下さいました。
ちなみに、ふたつ目の『魔力を発揮するのが、こわい』については、練習あるのみ!だそうです。
とほほ……