表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/61

16 救世主side


俺は空いた時間は森にいる。

俺の生まれた立ち位置のせいで、いろいろ周りの対応が面倒なのだ。

一人は気が楽だ。


お気に入りの木の上で、本を読んでいたら、何やら人の声がする。


「琥珀、寮どっちかわかる?」

(わかんない。)

「そうだよねえ。バッタ追って、ねこまっしぐら!だったもんね。」


この前の助けた新入生の女の子だ。また、道に迷っているようだ。


「右から来たと思うから、右へ戻ろうか? いや、カインが方向に関しては、自分を信じるな!と、言うから、左に行くべきか……」

自分を信じなかったようだ、左の方に歩き出す。



だいぶ日が傾いてきた。

――日が沈むと危険だから、しょうが無い助けてやるか。


そのとき、彼女の目の前にヌルッとした何かが、落ちてきた。

スライムだ。

スライムは、モンスターの中で最弱だ。新入生でも簡単に倒せるだろう。


スライムに体当たりされている。

逃げることにしたようだ。


右に逃げようとするが、スライムがぽよんと跳ねて回り込む。

左へ逃げる。

スライムがぽよんと左へ跳ぶ。

右へ逃げる。スライムが先回りする。

とろい!とろい!とろすぎる!


諦めて、攻撃するようだ。

ひょろひょろファイヤーボールが、スライムに飛ぶ。

スライム、ぷるっと、身を震わせただけで、『で?』ってドヤ顔してる。


「くっ! 魔法の効かないタイプか!」

いやいやいや、君の魔法がちょろ過ぎるだけだ。

スライムに魔法は効果抜群だからね。


魔法は諦めたようだ。

地面に落ちている枯れ枝を拾って、

スライムを打つ。

ぼよよん。揺れるだけで、なんの効果もなさそうだ……


「魔法も、物理も効かないなんて。森の主かも……」


いやいや、ごく普通のスライムだって。

ああ、もう腹筋が痛くなってきた。こんなに笑ったのは久しぶりだ。


――しょうがないな。加勢しよう。


ぽんと剣でスライムを叩くと、「きゅ?」と音がして、スライムが消滅する。

スライムが消えたあとに、爪の先ほどの魔石がコロンと転がった。


なんか、ものすごく賞賛された目で見られる。

最弱のスライム倒しただけだからね。


「さすが、救世主さま! わたくし、魔法科1年エリカと申します。

 入学式の時も、今回も助けていただいき、恐悦至極に存じます。」


「救世主? なんだそれは? 俺の名前はアルベルトだ。

お前、また、迷ったのか? 寮まで送ってやろう。」


寮まで送ってやった。


帰り際に、一応、注意しとく。「あれ、普通のスライムだからね。」

彼女の耳が真っ赤になった。


スライムの爪の先ほどの魔石をもらって良いかと聞くので、いいぞというと、

米つきバッタのように、ペコペコ頭を下げて感謝された。


面白いヤツと、知り合いになった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ