13 召喚獣 ゲットだぜ!!
おそるおそる魔方陣に、手を伸ばす。
心を込めて、魔方陣に魔力を注ぐ。
魔方陣が少しづつ輝いていく。
魔方陣の真ん中にもやがかかり、何かを形作ってゆく。
手のひらに乗るくらいの、小さな小さな黒い獣。
琥珀色の瞳、チョコンとした前脚、ピーンと伸びた小さなしっぽ。
胸に白い毛並みが、スカーフを巻いたようだ。
ふうんと、値踏みするような視線で、私を見る。
( よんだのは、きみ? )
頭の中で声が聞こえる。
「ケット・シーだ」レイアス先生が、つぶやく。
ケット・シー (Cait Sith)。
アイルランドの伝説、猫の妖精。 気配を消すことが得意で、姿を消して闇から闇へと移動可能。
普段は普通の猫のふりをしている。
二足歩行でき、言語と魔法を操る種族とされる。
どうみても、かわいい子猫にしか見えない。
いや~ん、かわいいっ!!!
( 僕と契約したいの? )
「したいです!!」
もちろんですと、うんうんとうなづく。
( どうしようかな~? )
ケット・シーが、面白そうに目を細める。
「三食昼寝つきで、どうでしょうか?」
雇用条件を詰める。なんなら、ボーナスも……
( 僕の下僕になるなら、契約していいよ。 )
「下僕に、なります!」 即断即決だ。
( ふふん、じゃあ、僕の名前教えてあげるね。 )
( 『ノワール』 )
( 真名だから、違う名前で呼んでね )
「瞳のいろで、琥珀はどう?」
その瞬間、ケット・シーが輝いた。契約成立だ。
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そのあと、レイアス先生に「そうじゃないだろう!」と怒られた。
あんなかわいい猫と暮らせるなんて、我が人生、一片の悔いなし!
ケット・シー ゲットだぜ!?
ん? ケット・シー にゲットされたぜ?