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第1章 第2話 悲願の牛鬼 ⓪
相手に自分の言うことを聞かせたいとき、一体どうするのが正解なのだろうか。
この問いに対してあの三姉弟は間違いなく「力ずく」という選択をするだろう。しかし、仮にそんな方法で命令に従わせたとしても得られる成果は芳しくはない。飴と鞭を使い分けるよりかは定期的に飴を上げる方がいいというわけだ。
要は、裏切った場合損をするのは自分だと相手に分からせればいい。
しかし相手にとっての飴とは何なのかその辺の見極めは実はかなり難しい。
良かれと思って、助けようと思ってやったことが逆に相手を困らせてしまうことはある。また、嫌がらせのつもりで、悪意を持ってやったことが功を奏して相手を助けることになることもある。しかもそれ以前に、相手が何も求めてこなければこの方法はたちどころに効果を失ってしまうというのも事実だ。
欲しがらないことは確かに美徳かもしれないが、そう考えるとそれが美徳だと最初に言った人は与えられる側の人間ではなく与える側の人間で、物凄くケチだったんだろうなと。僕は考えずにはいられないのだった。