家出系ヒロイン
実家から家出をして早5日。現在超ピンチに襲われています。
家はそこそこ名のある貴族ですが常にお姉様と比べられて嫌になったのですよ。
どうせ将来は政略結婚させられるだけ、それならば一人で冒険に出ようと貯めたお金と服、無いよりはマシなレイピアにテント、地図にコンパス、水に食料という物語の勇者様達が手にしていた物資をアイテムボックスに入れて夜中に逃げ出しました。
普通に街道を通れば家が出す追っ手に追いつかれますわ。だから私は危険を承知で山の方に行きましたの。
事前にシュミレーション(脳内)で繰り返したおかげで無事、目的の街道へと出る事が出来ましたの。後は痛む足と戦いながら近くの街に行くだけですわ。
そう思っていた時期が私にもありましたの。ここまでたまたま魔物に襲われていなかった為、油断していましたの。鼻歌を歌いながら歩いていたらいつの間にか狼、ブラッドウルフという血気盛んな狼に囲まれてしまいましたの。私の傲慢さが元で身を滅ぼしてしまうようですわ。
「助けてッ!!」
気づいたらそう叫んでいましたの。すると奇跡が起きました。誰かが走ってくる音が聞こえたのです。遠めですが白い珍妙な鎧を着た男の人が。
「助けてッ!!」
そう前から声が聞こえたがその前に俺が助けて欲しいわッ!!狼さんがオマエマルカジリって言いそうな目をしながら走ってきてるんですわ。こりゃキツイっす。超平和なニッポン男児は争い事には向いていないんです〜。
そう、思いながら声のする方へ向くと金髪の美少女がレイピアを手にへっぴり腰で地面に座っている。俺と同じ狼さんに囲まれながら。
美少女は俺の姿を見るとパッと笑顔になるがすぐに後ろを見て絶望した顔になる。そっすよね〜
日本男児たる者美少女は何が何でも救わないといけない。怖いが狼さん包囲網に突っ込み、お嬢様の襟を掴んで前に放り投げる。スマン。
「キャァァァッ!!」
「どけっ!!」
進路上の狼さんにまっすぐ突っ込むと狼さんはビビって横に避ける。俺は美少女をキャッチし、お米さま抱っこスタイル、つまり肩に担いで走る。
なんか出来そうと思ったが本当にできてびっくりした。ありがとう謎の幼女(神)ありがとう謎のメガネ少女(神)、ありがとう謎のパワードスーツ(着用中)。
「何ですの!!なんなんですの!!」
「絶賛狼さんから逃走中じゃボケェ!!
死にたく無けりゃ暴れるな!!舌を噛みたく無けりゃ静かにしとけ!!
俺は榊 大和!!よぉろしくぅ!!」
パワードスーツと異世界転生ボディのおかげか美少女を担いでも重いと思わない上、速度も落ちない。というか狼さんと同じぐらいの速度で走れる俺は今ならオリンピックで金メダル狙えそうだ。まぁドーピングで速攻タイーホだが。
「フランソワですわ!!フランソワ=マールですわ!!」
律儀に自己紹介してくれるフランソワ。けどそれに返す余裕はあまり無い。初戦闘に狼さん×20とかキツすぎません??
「ちょっと歯食い縛れよ!!」
「はっはい」
フランソワの柔らかい感触を楽しみつつも頭のバイザーみたいなのを下ろし、銃を構える。足がもつれそうになるが後ろに向くとバイザーに様々な情報が表示される。焦っている為情報はうまいこと読めないが頭の上に前を走る三匹の頭上に大きく1、2、3と書いているのはオススメ排除順という所だろうか。
なんつーかスロットのART中の押し順みたいだわ。
そんなしょうもない事を考えつつ銃弾を三発撃つ。ミス、ミス、ミス。
当然だよなぁ??(白目)
「どっこいしょ!!」
体を前に戻し、銃をホルスターに戻す。
「一匹も減ってないですわ!!」
「知ってるわボケ!!こちとら銃を扱うの生まれて今日が初めてだぞ!!」
「なら何故持っているのですか!!」
「知るか!!」
空いてる左手で刀を抜こうとするがなかなか上手いこと抜けない。どうしても引っかかってしまうからだ。走っている故の振動も原因だがやはり日本刀は意外と抜きにくい。いや、俺が不器用なだけだわ。
「よっしゃやったるでー!!」
そう気合を入れるとバイザーがカシャっと音を立てて切り替わる。それと同時に刀も抜ける。よし、なんか出来そうな気がする。
「フランソワ!!ごめん!!歯食いしばってくれよ!!」
全力で頭を上下に振るフランソワ、いやぁ自分の発想力の無さが辛いわ〜。
まず、フランソワを真上に投げます。空中で滞空している間に周りの狼さんを斬ります。キャッチします。
「おおおおお、三匹減ったぞ!!」
「もうちょい方法あったと思いますわ!!」
今度は片手でお姫様だっこをする。こっちの方がしっかり保持できる上、フランソワがしがみついてくれるから動きやすい。
「これしか方法思いつかなかったのですわ!!」
「真似しないで欲しいですわ!!」
後ろに回られない様気をつけて狼さんを斬っていく。うーん、刀の斬れ味は素晴らしいなぁ。
「あなた、ど素人ですわね??」
「うっせ!!自覚しとるわ!!」
当たれば素晴らしい斬れ味を見せてくれるが銃と同様刀も初めて振るせいで全然当たらない当てれない。
だが、バイザーがさっきみたいに数字を表示してくれるおかげである程度以上近づかれていない。
「GRRRR」
そう唸りながら狼さん達は少し距離をおき始める。だが、あの目は絶対諦めていない。
俺はまずフランソワを地面に置き、刀を手渡す。フランソワは未だに腰が抜けているのかぺたんと座り込む。
落ち着け、まずは深呼吸。吸って〜、吐いて〜、吸って〜、吐いて〜。
「めんどくせえんじゃボケェ!!」
地面を蹴り、狼さん達に向かってダッシュ、驚いた狼さん達の内先頭二匹の顔面をキャッチ、力任せに地面に叩きつけてクラッシュ!!
メキョッと頭蓋骨顔面割れる感覚がモロに伝わる。生きる為だ、許せ!!
そっからはさっきと同様にダッシュ、キャッチ、クラッシュ!!を繰り返していく。技術とか関係ない、完全に力任せである。
「オラァ!!もっとかかってこいよボケェ!!」
さすがに分が悪いのか10匹ほど地面に叩きつけると狼さん達は帰っていった。落ち着いて辺りを見渡す。
うん、いくらなんでもこれは酷い。動物愛護団体が見たら俺に対して問答無用でロケランぶっ放してくるだろうな....