攻略対象の彼と悪役令嬢な彼女は結託する
「攻略対象の彼と悪役令嬢な彼女は仲が良い」の日常のお話です。
短めですので、ご了承ください。
また、ケインの素の口調で、前作は「お前」としていたのを「あんた」に変えております。
「空は青く、太陽はさんさんでぽかぽか、こんな日はお茶に限りますなあ、ケイチーさんや」
「そうだねえ、マリュンさんや」
学園の中庭に、豪華な白く丸いテーブルとイスを設置し、そこでちょっとしたお茶会をしているケインとマリアンナは、非常に穏やかな時間を過ごしていた。
この昼休みという時間帯、いつもなら中庭には誰かしらいるが、ケインとマリアンナという婚約者組に気を使ったのか、今は誰もいない。おかげでケインもマリアンナも、素で会話をしている。
マリアンナの好みだという紅茶を取り寄せたので、それを堪能しつつ、ケインとマリアンナは談笑していた。
「それにしても、ヒロインちゃん可愛いよなあ」
「あんたいきなりどうした」
「だってさー、近くにいるとすっげえいい匂いすんだぜー」
「こ、この変態...!というかアリスはあんたの破滅の原因でもあると思うんだけど」
「分かってねえなあ、ケイチー。確かにヒロインちゃんは俺の天敵みたいなもんだが、それでもヒロインちゃんが可愛いということは事実なんだぜ?まあ今まで見てきた女の中で一番可愛いのは俺だけど」
「その発言だけ見たら完璧ナルシストだよねぇ」
などとぽんぽんとやり取りをしていたが、不意にケインは口調と話題を変えた。
「そういえば、君の姉君の誕生日が近いそうだな。私も君の婚約者として、伺いたいのだが」
「えっ...え、ええ、そうですわね。それはお姉様も喜びますわ。是非、いらして下さいな」
マリアンナがそう言い終わった瞬間に、「あわわわわわ!」という叫びを上げながら、先程話題になった、主人公であるヒロイン―――アリスが、渡り廊下から中庭に突っ込んで来た。
見ると、アリスは「偶然にも」渡り廊下で足をもつらせ、体勢を崩し、その反動で中庭に侵入したらしい。
アリスはそのまま少し進み、やがて転んだ。中庭は芝生なので怪我はないだろう。
無表情のケイン、唖然としたマリアンナの視線に気付き、アリスは顔を赤らめた後、青ざめた。
婚約者同士の時間を邪魔してしまったと思ったのだろう。
それを見たケインはふう、と息を吐くと、立ち上がり、転んだ状態でこちらを見ているアリスの元へ向かった。
マリアンナはケインに物言いたげな顔をしたが、結局何も言うことはなかった。
「あ、あの、ごめんなさいっ。私、お邪魔するつもりは...!」
涙目で弁解するアリスを、ケインは無言で見つめた。
そして、手を差し伸べた。
「...えっ?」
「大丈夫か?君はよく転んでいるな。入学式の時もそうだった...。全く、目が離せなくなるじゃないか」
ケインは、乙女が見たら必ず歓声を上げるであろう程の微笑を浮かべた。
効果は抜群だ!
アリスは真っ赤になりつつ、遠慮がちにケインの手を取って立ち上がった。
「ありがとうございます、ケインさん...!」
「ケイチー?何をしているの?」
しかしアリスの幸せな時間はそう長くは続かない。
マリアンナはにっこりしながら、ケインと、再び青ざめたアリスににじり寄っていった。
「あら?良かったですわね、私の婚約者が優しい人で。もしここにいるのが別の方ならば、貴女、大変だったわよ?(今度こそ悪役令嬢の本領発揮だぜえ!)」
「そっ...そうですよね!本当に、すいません...!」
「そう言うな、マリュン。仕方がないだろう?」
ケインの言葉にぱっと顔を明るくさせたアリスだったのだが、
「彼女は社交辞令にも気付かないような田舎者なのだから」
息を飲み、目を見開いた。
「し...失礼、しました...」
震え声で言うと、一礼して背を向け、歩き始めたが、だんだんとスピードを上げ、走り去って行った。
アリスの姿が完全に見えなくなると、ケインは膝をついた。
「ごめん...性格悪くてごめん...でも楽しんでる自分がいるよ...」
「落ち着けよケイチー...ゲームだと俺はこんなの比にならないくらいの嫌がらせするんだろ?ヒロインちゃんのメンタル増強のためにも、頑張って嫌味言おうぜ...」
「...あれ?そんな目的だったっけ?」
「いや、どうだろ。まあ、何でもいいわ」
マリアンナは、悪役という文字がぴったりの笑いを浮かべた。
「楽しけりゃ何でもいいぜ!」
「こ、こいつ...!何て非道なっ...!」
「な、何だよ!いいじゃんか別に!せっかくの第二の人生だぞ!強くてニューゲーム状態だぞ!楽しまなきゃ損だろうが!」
「...それもそうだね。うん、じゃあこれからもアリスに度が過ぎないくらいに嫌味言おっか」
あっさりケインは言うと、マリアンナと共に、「おーっほっほっほっ!」「ぐっはっはっはっはあ!」という絶対に悪役な声色の高笑いをした。
「ご存知ですか、マリアンナ様。この間中庭で不気味な笑い声がしたそうですわよ。もしかして学園に侵入した不審者かもしれないと、騒ぎになっているのです。不気味な笑い声なんて、私達貴族が上げる筈ありませんものね」
「まあ、怖い。早く正体が分かるといいですわね(ごめん、それ俺達だわ...)」




